MBCテレビといえば、東京オリンピック開会式の中継で、選手団の入場で各国を紹介する際、その国を見下し、嘲るマイナスイメージの写真ばかりを使って紹介したことで、各国から猛反発を受けた韓国のテレビ局である。
そればかりではない。サッカー男子1次リーグ予選、韓国対ルーマニアの試合で、韓国がルーマニアの選手のオウンゴールで先制点を取ると、「ありがとう、マリン(ルーマニア選手名)」という字幕を付けた。相手チームへのリスペクトも何もない、スポーツ中継ではあり得ないような出来事だった。柔道73キロ級で在日韓国人選手の安昌林が銅メダルを取ると、MBCのアナウンサーは「私たちが望んだ色のメダルではなかった」と叫び、メダル授賞式の中継では、安選手が銅メダルを手にしたとたん中継画面を切り替え、「放射能花束」と揶揄したビクトリーブーケの受け取りとその後の日本国旗掲揚のシーンをすべてカットした。男子マラソンでは、ケニア出身で韓国に帰化して代表となった呉走韓(オ・ジュハン)選手が、レースを途中棄権するとMBCの中継を担当していた解説者は、「レースを台無しにした」とコメントし、韓国の視聴者からも「本当に耳を疑った」という非難が寄せられるほどだった。
<J-castニュース8/8 韓国MBC、五輪マラソンでも「不適切放送」 途中棄権めぐり失言>
こうした放送の実態をみると、MBCというテレビ局にスポーツ中継番組を制作し放送できる資格があるのか疑問に思う。フェアプレーの精神とか、選手たちの努力に対する敬意、といったものは少しも感じられず、スポーツの喜びや感動を本当に視聴者に届けたいと思っているのか疑わしい。
MBCだけに留まる話ではないが、大韓体育会をはじめ韓国メディアにとって、オリンピックとは国威発揚の場でしかなく、メダル、しかも金メダルを取ることにしか価値を与えない国なのだ。姜尚中氏はTBSのサンデーモーニングで、「選手は国籍を捨ててみな難民選手として参加せよ」という妄言をぶちまけていたが、自分の祖国の韓国にまずそれを言えといいたい。韓国選手団から太極旗をとったら韓国国民は誰も応援せず、関心を示さないのは明らかだからだ。
ところで、MBCテレビの看板番組に「調査報道」を売り物にした「PD手帳」という番組がある。その番組が8月10日に放送したのは、「不当取引-国情院と日本の極右」と題し、韓国のスパイ機関「国家情報院」が、日本の民間のシンクタンク「国家基本問題研究所」(国基研)に情報提供と資金援助を行い、韓国の慰安婦支援団体など左派市民団体を不当に弾圧した、という内容だった。
情報提供と資金援助の具体的な証拠や客観的な根拠を示しているわけではなく、国情院の海外工作員だったという匿名の人物の証言だけで番組を構成していた。国基研の櫻井よしこ氏や西岡力氏に取材し確認を取ったわけでもなく、現金授受の現場を押さえた訳でもない。極めていいかげんで、こんな推論、憶測だけに基づいた作文が「調査報道」だといえるなら、小学生の紙新聞の類いでも立派な調査報道だ。
なかでも笑止千万なのは、櫻井よしこ氏と西岡力氏、それに国家基本問題研究所は、「国情院のおかげで日本社会のなかで格の異なる右翼団体に急浮上することができた」「国基研は国情院が支援した者たちが設立した団体で、日本での言論記事掲載やテレビに出演するためにはネタが必要だがそれらは国情院が支援した」と断定する。どれだけ傲慢ならこんな勝手なことが言えるのか。そもそも櫻井氏や西岡氏は極右や右翼団体でもない。MBCの無能なPD(プロデューサー・ディレクター)ごときが、何の客観的な証拠も提示せず、こんな断定をできる権限がどこにあるのか。
国家基本問題研究所はただちに抗議声明を発表し、「国基研は国情院を含むいかなる外国政府機関から支援を受けたことはない」と反論した。さらに「MBCの一連の報道は名誉毀損行為であり許されない」とした上で、MBCが櫻井よしこ氏のネット番組「言論テレビ」から多くの映像を許可なく使用したことについても謝罪と訂正放送を求めている。
<国基研8/11「韓国MBCテレビによる名誉毀損行為に抗議する」>
MBCの番組では、国情院が日本の「極右」と結託することによって、被害を被ったのは慰安婦支援団体の挺対協(現・正義記憶連帯)尹美香代表だと主張する。その尹女史によると、日本入国の日程が事前に日本側に漏れていて、空港の入国手続きの際に別室で「なぜ来たのか。どこへ行くのか。だれに会うのか」としつこく聞かれ、まるで犯罪者扱いだったほか、国情院からは「下着を脱がせてまで取調べしろという指示が出ていた」と証言する。
<中央日報8/15・尹美香議員「日本の空港で下着まで脱がせと指示、犯罪者扱いされた>
こんなセクハラ言動を平気でするのは韓国でしかあり得ない。それをあたかも日本で実際にあった事実のように報道するのが韓国メディア・中央日報なのである。尹氏の訪日日程が事前に日本側に漏れていたというが、訪日前に韓国メディアでは盛んに訪日予定が報じられ、すでに公開情報だった。
西岡力氏は、MBCが客観的な証拠を示すことなく「伝聞情報」だけに基づいてこうした欺瞞報道をした背景について、F35Aの韓国導入に反対するため謀略活動を行なったとして最近国情院が摘発した北朝鮮スパイ事件があると見る。
<国基研8/16 [韓国情勢】韓国ネットメディアもMBC報道を批判 西岡力(モラロジー道徳教育財団教授・国基研企画委員)>
この事件に絡み逮捕された3人は文在寅を支援して選挙運動をした団体のメンバーだった。文在寅政権べったりのMBCは、今回の番組を通じて、国情院によるスパイ捜査を妨害し、国情院つぶしを狙っていた、「PD手帳」がこのタイミングで放送したのは、取材途中で確証も得られないまま、見切り発車でこんないい加減な番組を制作したせいではないか、とみられている。
日本の極右といえば韓国にとっては敵であり、その敵に対してなぜ国家情報院が協力するのか「日本叩きを口実に韓国情報院叩きが狙い」ではないかと西岡氏は見る。
MBCは、「PD手帳」放送のすぐあと、8月15日に「線を越える奴ら:マスターX」という番組で、1936年ベルリン五輪の男子マラソンで金メダルをとった孫基禎(ソン・キジョン)を特集した。番組には、かねてから旭日旗を「戦犯旗」だと決めつけ、放射状デザインを見ると脊髄反射的に「旭日旗」だと反応し、反日工作活動に余念のない誠心女子大学のソ・ギョンドク教授が出演した。彼は孫基禎について、日本が日本国籍の金メダリストとして扱っていることに抗議を繰り返してきた人物である。しかし、当時、韓国という国は存在せず、それこそ、難民選手団があるはずもなく、オリンピックに出場するためには日本代表選手を名乗るしか、出場自体が不可能だった。
当時のJOC日本オリンピック委員会が孫基禎をマラソン日本代表に選んだことこそ、感謝すべきなのに、MBCの番組では彼の五輪出場に際し、「日本からの想像もできないような妨害や不公平な判定、危険な関門を孫基禎選手はくぐり抜けてきた」と日本側によるさまざまな妨害工作があったと糾弾した。番組では、国内外のマラソンレースで孫基禎が走る姿を白黒フィルムの映像で綿密に追っていたが、そうした貴重な映像が残るのは何よりも日本が撮影し保存していたからだということを、MBCは知らないはずはない。それを隠して、「孫基禎の真実」は語ることなどできないはずだ。
韓国MBC放送と言えば、「公営放送」あるいは「公共放送」を自称する。会社概要でも「公益財団である放送文化振興会を筆頭株主とし、広告収入で経営を行う株式会社形態の公共放送局です」と説明し、国営・公共放送の集まりであるABUアジア放送連盟の正会員として韓国KBSとともに加盟している。
会社概要には「MBCは、グローバルメディアグループとして、韓国内にとどまらず、海外50ヶ国に高品質の優れたコンテンツを輸出し、海外の視聴者からも好評を得ています。また、世界有数の放送局との提携により、様々な分野における交流・協力を進めています」ともいう。確かに日本でも好評を博した『チャングムの誓い』はMBCの制作ドラマだった。
MBCの発足は、1959年釜山で誕生した韓国初の商業ラジオ放送「文化放送」まで溯る。1961年にはソウルに民間のラジオ放送局として開局、その後、全国にネットワークを広げた。地上波テレビ放送の開始はKBSより8年遅い1969年だった。その後1980年、全斗煥政権による言論統廃合政策より、株式の70%がKBSに買収され、事実上、国有化された。1988年に公益財団である放送文化振興会が設立され、MBCの筆頭株主となり、それ以来、「公営放送」を名乗っている。しかし、運営費は広告料収入だけだ。それなのに公営放送だというのは、政府が出資する放送文化振興会が社長以下、幹部人事をすべて握っているからだ。それによって時の政権の意向を反映する傾向が強く、いまは文在寅左派政権のいいなりの御用放送局と化している。同じことはKBSにも言えて、政権が変わるとKBS社内は社長から課長クラスまで一斉に交代すると言われる。
2008年、米国でBSE狂牛病が発生し、韓国人は遺伝的に狂牛病にかかりやすいという完全なるデマをでっち上げ、それによって大規模な李明博政権批判デモを巻き起こしたのもMBCの番組「PD手帳」だった。
朴槿恵前大統領が友人の崔順実と癒着し、国家機密を私人に漏らしていたという話を取り上げ、大々的に報道することによってロウソク革命と呼ばれる国民の怒りを巻き起こしたのもMBCの「PD手帳」だった。しかし、このときMBCが報道した内容は、その後の法廷では事実ではなかったとすべて否定されている。
こうして見てくると、MBCは、公正中立であるべき放送局ではなく、ストーリーを勝手にでっち上げ、謀略情報を振りまく、謀略工作機関と変わりはないように見える。
MBCは、李明博政権当時、筆頭株主の「放送文化振興会」(MBC株式の70%保有)の理事長に大統領の側近を送り込むなど、露骨な政治介入を行なっているとして労働組合が反発し、長期ストライキの結果、社長を追い出しに成功している。文在寅政権になった2017年12月、ストライキを指導した労組幹部が新しい社長に就任し、それ以来、MBCは文在寅左派政権とべったりの関係になり「御用達」放送機関に変わったといわれる。
<KBS日本語ニュース2017/12/8「MBCの新社長に元社員のチェ・スンホ氏」
同じようにKBSも労組の突き上げで社長が交代させられ、完全に左派テレビになった。聯合ニュースも同じ。そればかりではなく、韓国ではメディア改革の名のもとで、いま保守系の大手新聞社3社や独立系のケーブルTV総合編成局を標的にした露骨なメディア規制の法律改正が進められている。
現在のメディア関連法は、発行部数上位3社の新聞社の発行部数が全体の60%を超えたら制裁を加え、購読者が少ない新聞には国が補助金を出すという、明らかに朝鮮日報、中央日報、東亜日報の保守系有力紙3社を露骨に狙い撃ちし、左派系の弱小新聞を保護しようとしている。これをさらに誤報を出したときの訂正記事や名誉毀損があったときの罰金について、さらに規制を強化しようというのが、現在韓国国会で審議され与野党が激しく対立している「言論仲裁および被害救済に関する法律」、またの名を「懲罰的言論改正法」という法案である。
たとえば報道が事実でないと認定された場合は、訂正記事を出す必要があるが、その訂正記事は、もとの記事と同じ大きさ、たとえば一面のトップの3段記事だったら、訂正記事も同じ場所に同じ3段の大きさで掲載しなければならない。放送も同じで、同じ時間帯、同じ長さで訂正放送をしなければならないと定める。また、名誉毀損があった場合の損害賠償額は従来の5倍に引き上げ、賠償額はそのメディア企業の前年の売上げに対して最低でも1万分の1、上限最高額は1000分の1としている。ケーブルTV向けの総合編成テレビ局は放送通信審議委員会が点数をつけ、その点数によっていつでも放送停止処分にすることができる。
誤報や名誉毀損の認定は言論仲裁委員会や放送通信審議委員会が行なうが、これらの委員会はこれまで完全な独立機関だったものが、今後は文化体育観光部の傘下に置かれ、つまり大統領が任命した文化体育観光部長官が委員の任命などすべてを牛耳ることになるという。
なぜ今、こんな改正をする必要があるかというと、龍谷大学の李相哲教授は、これから大統領選挙があるため、保守系のメディアの手足を縛って動けなくするためだと断言する。
<李相哲テレビ8/1「韓国の呆れる五輪報道、メディア法改正は選挙のため」>
民主主義国家にとってもっとも重要な言論・報道の自由に対し、時の政権がこれほど露骨なメディア規制をしようとしていて、韓国は本当に自由・民主主義国家を名乗り、「先進国」入りしたなどと豪語することができるのか。
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