乗り捨てシェア自転車、超監視社会が始まる

中国で急速に拡大が進むシェア自転車。スマホのアプリに登録すれば、どこでも乗り放題で乗り捨て自由。排気ガスも出さず、健康にもいいシェア自転車は、深刻な大気汚染を抱える中国にとって、ITを利用した環境にもやさしい優れたシステムのはず。しかし、実態はかなり違うようだ。

街の歩道は、黄色や青で統一されたシェア自転車で埋め尽くされ、駐輪自転車が歩道を占拠しているため、歩行者は自転車のすき間の狭い通路を縫って歩かなければならない。乗り捨て自由なので、街のいたるところに自転車が放置され、しかもサドルやハンドルをはずされるなどで使えなくなった自転車が打ち捨てられている。歩道の邪魔になって排除された自転車や、故障した自転車が山積みになっている風景も街のあちこちに見られる。Youtubeの映像では、シェア自転車を乱暴に扱って壊すシーン、意図的に川に自転車を投げこむシーンなどモラルを疑う信じられないような映像が流されている。またシェア自転車を自分専用に使おうと、自前の鍵やチェーンをかけて私物化する行為もあとを絶たない。

https://www.youtube.com/watch?v=_mekWUkgawA

https://www.youtube.com/watch?v=XxppEk4wfa8

https://www.youtube.com/watch?v=kdsb2wwn-7g

そもそも「公共心」とか、「公共財」といった概念、思考からはもっとも縁遠いのが、中国の人たちで、シェア自転車のような社会システムを動かすためには「みんなの役に立つ、みんなのための公共ツール」を守り、育てようという観念は不可欠だ。しかし、今の状態では、そうした公共心やマナーがないことを示すマイナス面だけが浮き彫りになり、街の雰囲気だけでなく、人の心も荒(すさ)ませる効果しかもたないのではないか。

TBS「ひるおび」(6月22日放送)によると、中国で急拡大するシェア自転車には業者20社が算入し全国30都市で展開されている。現在200万台の自転車の総数は今年中に10倍の2000万台まで増え、登録利用者も2016年の2800万人から今年は2億人を超えると見込まれているそうだ。激しい競争でいずれ失敗、撤退するケースも増えるのではないか。

ところでNewsweek日本語版6月20日号の記事「人民を信用格付け、超監視が始まる」によると、シェア自転車の利用者に予め100点の持ち点を与え、不適切な行動があれば、点数が引かれ、80点以下になるとレンタル料金が高くなるシステムが採用されているという。もともと自転車の位置はGPSでつねに把握されているため、誰がいつ、どこでシェア自転車を利用したか、すべての行動を監視することもできる。

さらに中国政府は、アリババやテンセントなど大手IT企業に対し、国民に関するあらゆるオンラインデータを開示するよう義務付けている。アリババの通販システム(支付宝)や微信(WeChat)の決裁システムなどの取引記録をもとに、ユーザー一人ひとりの信用度を格付けし、点数化するのだという。シェア自転車の点数制と利用者の行動監視も同じ考え方にそった、ITを活用した監視強化の一環といえる。

Newsweekの記事によると、中国政府は、債務返済に絡むトラブルで訴えられたものの、裁判所の命令に従わない673万人をブラックリストにして公開している。彼らは、航空券や列車の切符を購入しようとしてもできない。中国では、こうした個人の信用格付けや監視強化を、むしろ歓迎する声も多いのだという。社会全体に対する信頼度が低下し、個人情報を犠牲にしてもITによる監視社会を望むという、歪んだ社会こそ中国の現実なのかもしれない。

富士の高嶺から見渡せば

大学で中国語を専攻して以来、半世紀にわたって中国・香港・台湾を見続け、朝鮮半島にも関心を持ち続けてきました。これらの国との関係は過去の歴史を含め、さまざまな虚構と誤解が含まれています。富士の高嶺から、雲海の下、わが日本と周辺の国々を見渡せば、その来し方・行く末は一目瞭然。霊峰富士のごとく毅然、敢然、超然として立てば、視界も全開、隣国を含めて同時代の諸相に深く熱く切り込めるかもしれません。

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