韓国大統領選挙の七不思議 最終日の演説会場を覗いてみた

せっかく韓国にいて韓国大統領選挙の雰囲気を味わうことなく終わるのもいかがなものかと思い立ち、支持率で最後まで大接戦を演じている与野党2人の大統領候補の選挙戦最後の演説会場をのぞいてみた。

韓国大統領選挙は3月9日、投開票日を迎えるが、その前日8日の選挙戦最終日には、革新系与党「共に民主党」公認候補の李在明(イ・ジェミョン)氏はソウルとその周辺の首都圏9か所で遊説し、夜7時からはソウル市中心部の清渓川(チョンゲチョン)広場で最後の演説集会を開いた。一方、保守系最大野党「国民の力」公認候補の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏は、済州島から遊説を始め、釜山、大邱、大田と縦断し、最後はソウル市役所前のソウル広場で演説会を開いた。

清渓川広場とソウル広場はちょっと早足で歩けば5分程度の距離なので、両方の候補者の会場を行き来し、支持者の集まり具合や雰囲気を比較することができる。

まず会場の広さと集まった人の人数を比較すると、清渓川広場は広場と言うより清渓川という人工の川を挟んでその川沿いの道路に人が集まる形なので、人数には制約があるが、それでも、午前7時の集会の開始時間には、100メートルほどの川の両脇の道路が人でびっしりと埋まっていた。一方、ソウル広場は、市庁舎やホテルに囲まれた芝生の円形広場で、午後7時の段階では、広場はまだ半分ほどが埋まった程度で、候補者が到着した8時半くらいになってようやく広場が人でいっぱいになったが、それでも人と人の間はかなり余裕があった。

そして人々の熱気という点でいうと、李在明氏の清渓川広場のほうがはるかに熱度は高く、とにかく歓声の声が大きかった。というか、集会の進行方法というか盛り上げ方のアレンジは、こちらの方がはるかにプロフェッショナルで、大音声の音楽や鳴り物入りで、司会者がテンポ良く、候補者の名前やシュプレヒコールを叫び、それに大衆が歓声やスマホのライトを掲げて応じるという雰囲気だった。一方、尹錫悦氏のソウル広場のほうは、候補者が会場に到着するまでは、紹介された有名人や党の幹部らが壇上に立ち応援演説で繋いでいたのだが、司会者がプロではないこともあって、進行にも不手際が目立ち、観衆の反応もとにかく静かだった。そもそも集まった人々の年齢層を見ると、尹錫悦氏のほうは、5,60代以上のお年寄りばかりが目立ったが、李在明氏のほうはそれよりは年代は若く、騒がしい中年女性の姿も多かった。

しかし、それでも尹錫悦氏が会場に到着し、演説を始めると、ソウル広場全体が人々が掲げたスマホのライトで昼間以上に光で満たされ、幻想的な雰囲気となった。そして尹錫悦氏は、演説で30分以上にわたって熱弁を振るった。普段の記者会見では言い淀んだり、メモがないとしゃべれなかったりというシーンがしばしば見られたが、そんな雰囲気はまったくなく、彼が聴衆の同意を求めて「そう思わないか」と聞くと、観衆は「そうだ」と一斉に答えるなど、支持者の反応も良かった。それだけ、多くの人が政権交代に期待をかけ、尹錫悦氏にかける期待も大きいという証拠であり、そうした大衆の期待が尹錫悦氏の覚悟にもつながり、自信にもなっているように思えた。会場の雰囲気は、明日の投票日が、時代の転換点になるはずだという人々の明るい表情に溢れていた。

一方、李在明氏の集会は、確かに集まった人々の熱気は感じたが、その熱気が何に由来するものなのか、なおさら疑問が増した。というのも、李在明氏をめぐっては、選挙最終盤になっても、毎日、次々と新たな疑惑が生まれ、大統領としての資格にますます疑問点がつくばかりなのに、支持率にはほとんど変化がないという現実があるからだ。わけ知り顔の人に言わせれば、韓国人にとって、政治家の腐敗はある程度、おり込み済みなので、岩盤支持層にとっては、多少のスキャンダルは目をつぶって当たり前なのだという。しかし、それなら候補者個人の人格や能力などどうでもよく、結局、陣営の論理だけで、利害を共有し派閥を同じくする人間なら誰でもよく認めてしまするという考え方になる。つまり、李在明氏の集会に集まった人々は、現在の革新系政府から何らかの便宜や恩恵を受けている岩盤支持層の集まりであり、その熱気も自らを鼓舞する単なるカラ元気ということが言えるかも知れない。

<韓国大統領選挙の不思議① スキャンダルがあっても変わらない支持率>

どんなにスキャンダルや疑惑が浮上しても、李在明氏の支持率が35%かた38%でずっと変わらなかったというのも不思議だが、文在寅大統領の支持率が、政権末期の今の時点でも45%を維持しているというのも不思議でならない。なぜなら、文在寅政権の5年間で成果といえるものは何も思い浮かべない反面、マイナス面や失敗は数え上げればキリがないからだ。不動産対策にしても雇用対策にしても打ち出した政策がことごとく失敗し、北朝鮮政策も威勢のいい空約束をしたものの、何一つ実現せず、金正恩からもアメリカも相手にされなくなった。対日関係も慰安婦合意をぶち壊し、徴用工裁判で日韓基本条約さえ踏みにじり、もう後戻りできないほどに関係を悪化させただけで、自らは何の行動も起さなかった。そもそも年に1回しか記者会見せず、説明責任はひと言も果たしていない。先進国入りや経済大国入りを自慢するが、それとて民間の企業や財閥が頑張ったからで、文自身の成果ではない。それなのに、未だに45%の支持率を維持し、レイムダック化した歴代政権末期のなかでは、最高支持率だという。韓国国民とは一体いかなる思考回路の持ち主なのか、全く不思議でならない。

不思議と言えば、女性秘書からセクハラ被害を告発されて自殺した前ソウル市長の朴元淳の市民葬に長蛇の列ができていたのを見てびっくり仰天したことがある。生前はフェミストを気取り慰安婦問題など女性の人権擁護に立ち向かう人権活動家という顔を持った人間だった。こんな欺瞞の二面性をもち、これほど不埒極まりない人間にどうして敬意など示せるのか。そればかりか、前科4犯、実兄を精神病に仕立て病院に強制収容するような李在明氏でも大統領候補として認めるというのだから、韓国人の倫理観とはどうなっているのか真剣に疑わざるを得ない。

<韓国大統領選挙の不思議② 社会の分断を促す選挙>

韓国の大統領選挙と言えば、伝統的に左派系の強い全羅道と保守系に強い慶尚道という激しい地域対立で知られてきた。今回の支持率調査でも李在明氏への全羅道の人々の支持率が90%を超えるなど、極端な地域偏在は相変わらずだが、今回は、これに加えて、年代別の支持率の違いが顕著になったことと、男女間のジェンダーギャップも争点になっている。つまり、従来の地域対立だけでなく、年代別の意識や格差から来る対立や、ジェンダーをめぐる対立にまで社会の分断は広がっているのだ。

年代による対立といえば、20~30代と60代以上の年齢層は尹錫悦氏への支持率が高いのと対し、40代・50代の年齢層は李在明氏を支持する割合が高いという傾向がある。これは年代によってそれぞれが生きた時代の政治・経済の環境の違いから、それぞれの層が受けた経済的恩恵が違うからで、特に今の2~30代の若い世代は、文在寅政権の政策の失敗によって不動産価格が暴騰し、一生かかってもマンション1戸も買えなくなったり、最低賃金の急激な値上げでバイト先を追われるなど仕事を失った世代であり、彼らの投票行動は現政権への批判に直結するものと思われる。

そして今回の選挙戦では、若い世代の支持獲得を狙って各候補がそれぞれ公約を出しているが、それが男女間の対立にも繋がっている。李在明氏は、若い世代も薄毛に悩んでいるとして薄毛治療にも保険を適用する政策を打ち出し、話題を呼んだ。さらに徴兵制で若い男子は必ず就かなければいけない兵役だが、従来から低すぎると批判があった兵士の給料を200万ウォンに値上げし、青年層に基本所得として年間100万ウォン支給するなどと公約している。

一方の尹錫悦氏も、「青年層対象の低価格住宅を5年以内に30万戸供給」や「青年農業者3万人育成に向けて公共農地及び住宅の優先配分」を公約しているほか、「女性家族部の廃止」を打ち出している。女性家族部については、自分たちの税金が使われる割には男性のためには何の役にも立っていないと、若い男性を中心に批判が強く、関心も高いテーマだった。

女性家族部の廃止は、当然、女性からは不人気で、李在明氏側は反対の姿勢をとっている。つまり、若い男性の支持を獲得しようとして出された政策が、ジェンダー間の対立にまで発展し、分断を深めているのである。未来を選択する選挙ごとに社会の分断が深まり、混迷を深めるというのは皮肉な事実でもある。

<韓国大統領選挙の不思議③ 「非好感」を争う選挙>

今回の大統領選挙は、国の将来をどう切り開き、複雑な国際情勢のなかで、いかに国家運営を図るか、といった高邁な国家戦略をめぐる公論はいっさいなく、2大政党の公認候補が互いに互いをまるで「犯罪者」のように呼び、検察の捜査や選挙後の逮捕にも言及するなど、ネガティブキャンペーンどころか、不正腐敗追求キャンペーンに終始した。

李在明氏については、城南市長時代の大規模都市開発に絡み、不正な利得を得たのではないかという疑惑が当初からつきまとい、選挙期間中も新しい証拠や重要証言を録音した会話テープなどが次々に公開された。一方、李氏は、検察官時代に尹氏がこの事件の捜査に関係し、賄賂を受け取っていたと反論するなど、確かな証拠もないのに逆に尹氏を追求する材料に使うほどだった。この問題をめぐっては、テレビ討論会でも何度も取り上げられたが、互いに相手の発言は聞かずに、一方的な主張を繰り返すだけで、議論はまるでかみ合わなかった。

ネガティブキャンペーンといえば、後述の配偶者をめぐる問題もあったが、本人の政策能力や公約とはまったく関係のない人格攻撃も酷かった。李氏も尹氏も国会議員の経験はなく、中央政界での経験がないが、記者会見などでは李氏が巧みな弁舌を披露し、過去の発言を批判されると「そんなつもりで言ったつもりはなく、そう受けとった方が間違いだ」と奇妙なレトリックで批判をかわし、前言を翻すのに何の躊躇もなかったのに対して、尹氏は当初の記者会見では失言が多く、メモがないと答えられず、数分間も沈黙するなど、若い有権者の失望を買ったこともあった。

今回の選挙戦の候補者に対する評価で、もっとも的を得ていると思ったのは「熟していないりんご(尹候補)は熟せば食べられるが、腐ったりんご(李在明候補)は食べられない」だった。この発言をしたのは与党「共に民主党」の幹部で李洛淵(イ・ナギョン)元首相の秘書室長を務めた人物(チョン・ウンヒョン氏)で「私が尹候補を支援することにしたのは次悪の選択だ」とした上で、「予測不可能な『怪物大統領』よりもむしろ『植物大統領』を選択することにした」との考えも示した。

朝鮮日報2/22「与党選対委員長の側近が尹錫悦支持宣言「腐ったりんごは食べられない」

韓国の大統領選挙を「非好感、不人気」を争う選挙とし、「次悪」を選ばざるを得ない選挙にしたのは、候補者個人の問題ももちろんあるが、マスコミの責任や世論調査会社の責任、そしてその裏に存在する有権者の責任も大きいと思う。スキャンダルだけに関心を向け、国の将来を占う国策論議に導かなかったのは国民の責任でもある。

<韓国大統領選挙の不思議④ パンデミックのなかでの遊説集会>

それにしても、韓国はいま、新型コロナのオミクロン株の大蔓延で、この1週間あまりの間、連日20万人から26万人以上の新規感染者を発生している。そうした状況の中で、人々が密集する大集会が開かれるというのはどういうことか。つい1か月前までは、私的な会合は6人までと制限され、しかもワクチン接種の証明が必要だった。野外の集会も200人以上の集会は禁止され、去年4月の総選挙の際には、街頭集会もいっさい禁止されていたはずである。それが、大統領選挙の公式選挙期間がスタートした2月15日以降、なかば公然と選挙集会が開かれるようになり、大型トラックの荷台の上に巨大モニターと大音響スピーカーを設置し、選挙カーに演壇を設け、学生アルバイトのダンサーたちが歌や踊りのパフォーマンスを披露し、以前の大統領選挙と変わらない風景が繰り広げられている。候補者たちは群集の間を練り歩き、ハイタッチをしたり、頬がふれあうばかりに接近してスマホの写真に一緒に収まったりと、どこの遊説会場も、人々がギュウギュウ詰めの密状態となっていた。選挙戦のあとに感染の広がりがどういう状況になっているか、心配でもある。

政府も保健当局も、選挙戦にあわせて感染対策社会的距離の確保措置を緩和した雰囲気もある。飲食業など中小企業対策だとしてを営業時間を午後9時から10時に延長したのは選挙期間が始まったあとの2月19日、さらに11時までに延長したのは3月4日だった。しかし集会・イベントの人数制限は、ワクチン接種完了者300人未満という制限は生きていたと思うのだが、選挙集会に限ってはそんな規制はなし崩し的になくなっていた。

投票日前日の8日の感染者数は34万2446人と前日よりも14万人近くも急増し、過去最多を記録、累積の感染者総数も500万人を超えた。選挙期間の2月21日から3月8日までわずか16日間で300万人の感染者が新たに発生した計算になる。つまり、これらの人の多くが感染者としてあるいは隔離対象者として投票日を迎えることになる。韓国の選挙人総数は4419万人、感染者300万人はその6.8%に当たる。文字通り「パンデミックのなかの選挙」として歴史に刻まれることは間違いない。

<韓国大統領選挙の不思議⑤ 問われたのは中央選管の中立・透明性>

選挙期間中に新型コロナの感染者がこれだけ急増するということを、選挙管理委員会は想像もしていなかったと思われる?案の定というか、感染者の投票が集中することによって、民主主義社会では考えられないような大混乱が起きたのが、期日前投票の投票所だった。期日前投票は4日5日の二日間行われ、二日目の5日午後5時からは、感染者と隔離対象者の投票時間として周知されていた。ところが彼らが導かれていった場所は投票所の外にある物置のような場所や屋外に置かれたテーブルで、投票用紙を渡され、記入して封筒に入れても、直接、投票箱に投入できるわけではなく、投票所のスタッフに手渡したり、段ボール箱やプラスチックのかご、あるいはスーパーのレジ袋のような袋に投票用紙を入れさせられたりした。それを投票所のスタッフがある程度、数がまとまったところで、投票箱まで運び、投函するのだが、そのプロセスを監視する立会人もおらず、途中で投票用紙を抜いて差し替えることも可能な状態にあった。寒い屋外で何時間も待たされた上に、投票用紙のずさんな管理の様子を見て、投票の秘密が守られていないと憤慨し、投票を諦めて帰宅した人もいたという。

極めつけは、投票用紙を入れる封筒のなかに、なぜかもう一枚別の投票用紙が入っていてしかもすでに与党候補の欄に投票印が押されていた。そうした例が、複数の投票所で複数の有権者によって確認され、証拠の写真も撮られている。選挙管理委員会の説明によると、感染者による投票が予想より多かったことで、前に投票した人の封筒を使ったが、投票箱に入れたと思っていた投票用紙が封筒の中にまだ残っていたのを確認せず、渡したのが原因ということだった。

そればかりではない。郵便投票や事前投票の投票箱は24時間監視カメラが作動しているところに保管すると定められているが、ところが投票箱が置かれた選挙管理委員会の事務長室では、天井の監視カメラにわざわざ覆いをかけて投票箱が映らないようにしていたところもあった。

中央日報8/8「選管、今度は記票された5万枚のずさんな保管が議論に」

投票箱が本当に厳正に管理されているのか、投票したあとの投票用紙が覗かれ加工が施される可能性はないのか、疑問は晴れない。

そうしたなかで、中央選挙管理委員会の責任が問われているが、最高裁判事出身の委員長は事前投票日の当日に委員会に出勤していなかったことがわかった。彼女は、最高裁判事の時、李在明氏の裁判を担当して無罪判決を出したことがあり、左派系の判事として知られる。

中央選挙管理委員会の常任委員は空席となっているが、これは文大統領が推薦した人物が余りにも偏向しているとして選挙管理委員会の職員全員から拒否され、任期を延長できなかったためだ。中央選挙管理委員会のメンバー自身が選挙の公正や選挙管理の中立にもっとも関心がない人々であることが分かる。

しかし、こうした事前投票での投票用紙の管理ミスなどが重なったこいとで、仮に当選者が数万票の僅差で当選したなどの場合、対立候補が異議を申し立て、選挙管理委員会のミスを理由に、選挙無効を訴える可能性も指摘されている。さらに、うがった見方をする人は、投票を混乱させ選挙を無効にするために、あえて感染者の拡大を容認したという人までいて、ますます奇々怪々、不可思議な韓国大統領選挙ではある。

<韓国大統領選挙の不思議⑥ 候補者の名前に共通の呼び方がない>

以下は、韓国大統領選の不思議番外編か。

まずは、野党「国民の力」公認候補・尹錫悦氏の名前の呼び方が複数あるという不思議。「尹錫悦」のハングル表記は윤석열である。これを従来の方式のとおり、パッチムと呼ばれる語尾を次の文字の母音と繋げて(リエゾンして)発音すると「ユンソギョル」だが、本人は、幼いことから呼ばれていた呼び方で「ユン・ソンニョル」と呼んで欲しいと自らいい、陣営の集会などではこの呼び方で呼ばれている。しかし、野党や新聞・テレビは「ユン・ソギョル」と呼ぶことが多い。また外国メディアは「ユン・ソクヨル」氏とリエゾンせずにハングル一字一字の発音とおりに表記するところもある。

本人が希望しているという名前の呼び方がどこまで浸透しているかは分からないが、どうも尹氏の陣営は、本人の希望通りに発音し、反対陣営はあえて本人の希望どおりではない、発音の仕方にこだわっているように思えてならない。しかし、尹氏が大統領に当選した場合には、一国の指導者の名前の発音が複数あるということは、混乱の原因になり、外交的にも戸惑いの原因にならないか心配だ。

<韓国大統領選挙の不思議⑦ 消えた妻の姿>

李在明氏の場合、選挙戦初期には必ず妻を連れて遊説し、夫婦揃ってサンタクロースの衣裳で手を取り合ってダンスを踊る姿を見せるなど、妻との仲睦まじい姿を演出していた。それはライバル候補、尹錫悦氏への当てつけでもあった。というのは、尹氏は妻の学歴詐称事件などで謝罪に追い込まれ、選挙戦で妻を同席させたことは1回もなかったからだ。しかし、李在明氏の妻が公に出ることはある日を境にパタリと止まった。それは、李在明氏が京畿道知事時代、妻が京畿道庁の職員を使い走りのように使い、しかも道庁の公用カードを使って寿司や高級肉などを買わせ、公金横領をしていたことが道庁職員の告発で発覚したからだ。

もともと李在明氏には女優との不倫疑惑があり名誉毀損で裁判沙汰にもなっていることは有名な話で、そんな不倫をした疑いがある夫と何もなかったかのように仲の良い夫婦を演じる李氏の妻に対しては、一般女性からも白い目が注がれていた。

李在明氏は自分の息子が、ネット賭博や買春に手を出していることが発覚すると、「妻は公的な存在だが、息子は他人」だと言い訳し、息子の教育や躾という親としての責任を回避した。しかし、妻が公の存在なら、なおさら不祥事に対する責任は明確にしなければならない。

一方、尹錫悦氏の妻だが、学歴詐称の謝罪会見で、仮に旦那が当選し、ファーストレディーになったとしても表にでることはなく慎ましい生活を維持すると宣言した。現在の文在寅大統領の妻が目立ちたがり屋で旅行好きで、海外に外遊したときにはまるでファッションショーのように次々と衣裳を変えることで有名で、それらの服や靴、アクセサリーにかかるお金はどこから出ているのか、納税者団体が経費の開示を求めて告発しているほどである。文在寅大統領の妻と、次の大統領の妻がどういう対比を見せてくれるか、いまから楽しみである。



富士の高嶺から見渡せば

大学で中国語を専攻して以来、半世紀にわたって中国・香港・台湾を見続け、朝鮮半島にも関心を持ち続けてきました。これらの国との関係は過去の歴史を含め、さまざまな虚構と誤解が含まれています。富士の高嶺から、雲海の下、わが日本と周辺の国々を見渡せば、その来し方・行く末は一目瞭然。霊峰富士のごとく毅然、敢然、超然として立てば、視界も全開、隣国を含めて同時代の諸相に深く熱く切り込めるかもしれません。

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