処理水異聞 香港の海鮮レストランが消滅するかも!?

思考論理を別にする中国・韓国とはもはや共存できない

実証的な研究データや客観的な調査結果ということに関して、ここまで否定的な態度をとり、科学的な思考を投げ捨てても何も省みず、科学的な論理とはいっさい無縁な人々の姿を見て、改めてこういう人たちとは共に生活するのは無理だと思った 

個人独裁と強権専制の中国共産党政権下では、プロパガンダとマスメディアの統制・締め付けこそが政権の命綱であり、真実を教えないこと、不必要な学習を強いることを含めて“嘘と脅し”で人民を誘導し、思い通り世論を操作しようとするのは常套手段だ。

一方、南北だけでなく東と西の地域対立、左右の陣営対立、老若男女の意識のギャップなど、すべての面で多重分断国家である韓国は、自分たちの陣営に少しでも有利なら平気で噓をつき、でたらめのフェークニュースを作り、まき散らすことに何のためらいもない人々である。

そのことがよく分かったのは東京電力福島第一原子力発電所で発生する処理水の海洋放出について、IAEA国際原子力機関がこれまで2年に及ぶ審査を終えて発表した最終的な包括報告書に対する中国と韓国の政府、国民の反応だった。

中国外務省の汪文斌報道官は、記者会見で毎回のように処理水の海洋放出について取り上げ、「核汚染水は核汚染水だ。日本側が何を言おうと、正常な水に変えることはできない」「飲んだり泳いだりできるというのなら、日本国内の農業用水や工業用水に活用すべきだ」などと発言している。同じような発言は、韓国野党の李在明代表など反対派の間でこれまで何度も言われてきたような気がするが、中国は明らかに韓国の左派野党や北朝鮮などと共闘してこの問題で日本に圧力を加えようとしている。

海洋放出の閣議決定の時はどうしてたっけ?

そもそも日本政府は処理水の海洋放出を国の方針として決定したのは2021年4月13日、菅義偉首相時代の閣議決定によるものである。中国や韓国は、その当時は大きな問題として取り上げなかったのに対し、放出時期が近づきIAEAが最終報告書を発表する段階になって、大騒ぎし始めた。そして今さらながら、他の処分方法を検討すべきだとか、海洋放出すれば中国や韓国の沿岸に放射性物質がすぐにもたどり着き、漁業が壊滅する、塩が汚染されるなど、科学的な根拠もない作り話で、漁民や消費者の不安を煽るだけ煽っている。

中国や韓国は、処理水の処分方法は海洋放出以外の他の選択肢もあると主張しているが、当事者である日本が味わった深刻な経験と真剣勝負の議論を無視する無責任な態度というしかない。

そもそもALPS処理水やトリチウム水に関する処分方法については、それ以前に経済産業省の下に置かれた有識者による検討委員会「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」(第1回2016年11月11日~第17回2020年1月13日)が3年間で計17回にわたる会議で、ALPS処理水に関するさまざまな処分方法を検討した上で、海洋放出という結論に達した。また、それを実行する際の課題については「廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議」(第1回2013年9月10日~第5回2021年4月13日)や「ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚会議」(第1回2021年4月16日~第5回2023年1月13日)など合わせて10回に及ぶ閣僚会議を開き、

2016年から数えると6年間に及ぶ検討を重ね、安全性を確実に確保できる方法として海洋放出という手段に決めたものだった。

           (2021年4月24日 ソウル鐘路区の日本大使館前での抗議活動)

別の処分方法なら人類はモルモットになる?

仮にこれから海洋放出以外の新たな方法を探るとしたら、別な処分方法として委員会で検討された「水素放出」や「水蒸気放出」や「固化体地下埋設」、「地層注入」にしても、人類が今まで一度も試みたことのない方法であり、新たな実証的な試験を重ねてその有効性を確かめたり、実際にそれを実行する際に必要な新たな法的根拠、承認制度、住民の合意など複雑な手続きを最初から進めなければならず、いつになったら実行できるか、見通しも立たない。その間、廃炉作業を進めることは困難となり、福島の復興は永遠に遠ざけられることになる。

IAEAのグロッシ事務局長は「(陸上保存など)別のオプションはこれまで一度も試みられたことがなかった方法だ。今回の福島問題を解決する過程で、世界の人々を実験のためのモルモットにすることはできなかった」と言っている。

中央日報7月10日 IAEA事務局長「放出ではない他の方法? 世界の人々を『実験室のラット』にするのか」

中国や韓国など「科学的な真実などどうでもいい」という人々も巻き込んで、新たな処分方法の模索は、人類全体に新たな放射性物質拡散の危険や予見不可能という新たな不安を生じさせることでもある。それでもいいのか?と言ってみても、中国政府や韓国野党はそんな事実は、国民や支援者に知らせようとは決してしないだろう。

自分たちの足元の核汚染のほうが深刻では?

中国や韓国は自分たちの原発からは日本の排出量の5倍から数10倍の量のトリチウムを毎年、海に排出していながら、それについては何の説明もしない。とりわけ問題なのは、韓国の月城(ウォルソン)原発からは福島処理水の2,3倍のトリチウムを毎年、海洋に放出しているが、こちらのほうがもっと深刻な問題を引き起こしている。ハンギョレ新聞によると「原発の周辺地域の住民の甲状腺がん発症率は他の地域の数倍にもなり、韓国水力原子力を相手取って集団訴訟が行われている」という。

<ハンギョレ新聞6月13日[寄稿]福島第一原発の汚染水問題でメディアがなすべきこと

実際に深刻な健康被害が出ている問題には目を向けず、科学的には微々たる影響も与えないと国際機関が保証した福島処理水の、ありもしない幻の影に怯えるというのは、いかにも前近代のシャーマニズム世界に生きている人々らしい。

深刻な健康被害といえば、はるかに深刻なのは、北朝鮮の豊渓里(プンゲリ)核実験場の問題だ。実験場の科学者や周辺の住民らは重篤な放射線被曝で死者や癌患者が多発しているという告発は報告書になっている。また最近、韓国の民間団体が入手した国会報告資料によると実験場周辺からの脱北者を対象に行った検査では明らかな染色体異常が見られたという。

産経新聞によると「韓国政府は2017年の6回目の核実験を受けて17年と18年の2回にわたり、豊渓里周辺出身で韓国に住む脱北者40人に被曝(ひばく)検査を実施。うち22・5%に当たる9人から多数の染色体の異常や279~1386ミリシーベルトという高い放射線量が検出された。18年に限ると、検査した10人の50%に当たる5人から異常が見つかった」という

産経新聞2023/2/21「北核実験場の周辺数十万人に危険性 初の報告書、日本に影響も」

また韓国政府は実験場周辺に居住した脱北者89人を対象に新たな被曝調査を実施し、ことし11月までに結果を公表するとしている。<聯合ニュース23/5/16「韓国政府が脱北者の被ばく調査開始 対象は核実験場周辺出身=年内に結果公表」>

豊渓里核実験場で放射能汚染された水は、ALPSのような処理設備もなく、河川や地下水を通じてそのまま日本海に流れ込んでいる。その北朝鮮近海では中国が北朝鮮から漁業権を買い取り操業しているわけだが、中国はそこで水揚げされた魚の放射能検査はやっているのだろうか?人民の食の安全を確保するというなら、原発が集中立地している中国沿岸や北朝鮮周辺海域での魚をまず点検するほうが先だろう。あわせて日本政府も中国産シジミなど中国からの輸入魚介類については検査を厳重にしてほしい。

香港の海鮮料理が消滅する事態にも

そうした水産物をめぐって日本の漁業関係者にとっては深刻な影響が懸念される事態も起きている。

香港政府のトップは、日本が福島処理水の海洋放出を始めれば直ちに日本の水産物の輸入を禁止すると宣言し、日本に直接圧力をかけてきている。中国政府の操り人形に過ぎない香港の李家超行政長官は、どうせ中国政府の指示に従って日本から輸入禁止をさも当然のごとく口にしたのだろうと思うが、それが本当に実行されるとしたら、その影響たるや香港人の食卓や飲食業にも直接深刻な影響を与えるレベルとなるだろう。農水省の水産庁の「農林水産物輸出入概況」によれば、2022年度の日本からの水産物輸出先のトップは、中国で22.5%、次は香港で19.5%、以下、米国(13.9%)、台湾(8.9%)、韓国(6.3%)となっている。前年の2021年の輸入先別では香港がトップ(22.6%)で次が中国(19.6%)だった。

品目別の輸出額を見ると、その金額が多いのはホタテ21.2%、ブリ(8.2%)サバ(7.3%)カツオ・マグロ類(6.8%)などとなっているが、このうちホタテ貝の51.3%は中国、5.3%は香港、加工調整されたホタテだと55.8%は香港向け、12.8%は中国向けだった。カツオ・マグロ類の22.6%は中国、13.2%は香港向け。さらに乾燥ナマコの46.3%は香港、43%は中国向けだった。このほかアサリなどの貝類、練り物などの加工品、フカヒレなどもその多くが日本から香港へ輸出されている。因みに生きたままの活魚の56.7%は韓国向け輸出である。<農水省国際局「農林水産物輸出入概況2022年」


要するに中華料理の高級食材であるフカヒレ(魚翅)もナマコ(海参)も食材が手に入らず、香港海鮮レストランの自慢料理であるフカヒレの姿煮やナマコの煮込みも食べられないことになる。それだけ中華料理の食材の多くを日本産が占めているのであり、これらの輸入を香港が全面的に規制したら、その代わりとなる食材の輸入元を求めて、香港の飲食業界は右往左往の大騒ぎになることは目に見えている。当然、香港経済を支える観光業にとっても大きな打撃になるだろう。行政長官はそうした深刻な影響も考えたうえで、日本の海産物の輸入禁止を打ち出したのだろうか?そうとは思えない。

IAEA「基準に従えば水産物汚染はあり得ない」

韓国政府もIAEAの最終報告書は「尊重する」といいながら、相変わらず福島周辺8県の農水産物の輸入禁止は継続するとし、IAEAの見解と日本の農水産物の輸入禁止はまったく別問題だとしている。

これについてIAEAのグロッシ事務局長は、中央日報のインタビューに対して次のように答えている。

「輸入禁止措置は全面的に韓国政府の決定であり責務だ。IAEAの権限外のことだと言っておきたい。ただし我々が言えることは、計画通り放出が行われるなら、どんな方法でも魚類など水産物が汚染されることは発生しないだろうという点だ。その誰も『日本の放出のせいで水産物が汚染された』と主張しても、これは科学的に全く合わないということを忘れてはいけない」<前掲中央日報7月10日記事

つまり、福島の処理水の海洋放出は国際基準に合致していて、この基準に則り、今後計画通り放出が行われるなら、水産物の汚染は全く起きない、ということを断言しているのだ。

科学を前にした現代国家vs前近代国家の分断

香港当局と韓国政府がとっている姿勢は、科学的な結論と矛盾し、科学を無視する非科学的な態度というしかない。

中国政府は福島処理水の問題をASEAN外相会議に持ち込んで会議の議題にしようとしているほか、太平洋諸島の国々まで巻き込んで、日本に対抗するためのブロックを作ろうとしている。これでは、科学的な検討とデータに基づいて政策を進める現代国家と、科学の結論よりも人々の不安心理を煽り立て自分たちに都合のよい論理を優先して振り回す前近代国家、という2つの国どうしに分断されることになりかねない。

国際的な基準値以下まで放射線レベルを下げて海洋放出するのは国際的に認められた方式であり、それを実行するかどうかは、その国の主権に関わる問題だ。地球環境にはまったく影響はないと判断し、日本の責任において実行する施策に対し、他国が中止を強要し、内政干渉できる権限はない。日本政府は、日本国内の総意を早くまとめるためにも、漁業関係者の同意を早急に取り付け、海洋放出に踏み出すべきだ。

(2021年4月24日 「放射能汚染水を日本は飲め」と書かれた旭日旗)

(2021年4月21日 頭を坊主にした学生たちによる日本大使館前での抗議の座込み 

看板には「日本は放射能汚染水の放流方針を取り消せ」と書かれている)

富士の高嶺から見渡せば

大学で中国語を専攻して以来、半世紀にわたって中国・香港・台湾を見続け、朝鮮半島にも関心を持ち続けてきました。これらの国との関係は過去の歴史を含め、さまざまな虚構と誤解が含まれています。富士の高嶺から、雲海の下、わが日本と周辺の国々を見渡せば、その来し方・行く末は一目瞭然。霊峰富士のごとく毅然、敢然、超然として立てば、視界も全開、隣国を含めて同時代の諸相に深く熱く切り込めるかもしれません。

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