「怪談(デマ)」を発信する韓国メディアには徹底的に反論すべき

「IAEAはALPSの性能検証を実施せず」というデマ

IAEAが福島第一原発から出る処理水の海洋放出について最終報告書を発表して一週間後の7月12日、ハンギョレ新聞は一面で「IAEA、汚染水をろ過するALPSの性能検証を一度もしていなかった」というタイトルの「とくダネ」記事を掲載した。ハンギョレ新聞がこの記事で言いたかったのは、IAEA国際原子力機関は自分たちの手でALPSの性能を独自に検証したことはなく、「そもそもALPSの性能検証は、IAEAが日本の経済産業省の要請で構成した検討チームのレビューミッション(任務範囲)にも入っていなかった」ということらしい。

しかしIAEAは7月4日の最終(包括)報告書の発表を前に、ことし5月31日、「ALPS処理水の放射性核種分析における第1回目の分析機関間比較結果」(First Interlaboratory Comparison on the Determination of Radionuclides in ALPS Treated Water)に関する報告書を公表し、IAEA立ち会いの下で採取されたALPS処理水のサンプルについて、IAEA傘下の研究所と第三国の分析機関がデータ分析を実施し、各分析機関の分析結果の比較及びデータを示している。

IAEAの分析には韓国も参加し検証していた

分析に参加したのは、IAEAの研究所として「海洋環境研究所」(モナコ所在)、「陸域環境放射化学研究所」(オーストリア サイバーズドルフ所在)、「アイソトープ・ハイドロジー研究所」(オーストリア ウィーン所在)の3か所。

さらにIAEAにより選定された第三国の分析機関として、「シュピーツ研究所」(スイス)、「放射線防護・原子力安全研究所」(フランス)、「ロスアラモス国立研究所」(米国)、そして「韓国原子力安全技術院」(韓国)が名前を連ねている。これらの分析機関の分析結果として、以下のような評価を下している。

1. 東京電力は高水準の測定の正確性と技術的能力を持つことが証明されている。

2. 東京電力のサンプル採取手続は、代表的なサンプルを得るために必要な適切な基準に従っている。

3. 東京電力が使用している核種分析のために選定された分析方法は、適切で目的にかなったものであること。

4. IAEA及び参加した第三者分析機関のいずれも、有意に存在する追加の放射性核種(すなわち、ソース・タームに含まれている放射性核種を超えるもの)を検出しなかった。

経済産業省6月1日発表ニュースリリースより

こうしてALPS処理水に関する分析結果とALPS設備に対する評価の結論が出ているにもかかわらず、ハンギョレ新聞はどうして「IAEAはALPSの性能検証を一度もしていなかった」などと主張できるのか。しかも「韓国原子力安全技術院」という韓国の分析機関も参加しているのである。そこに確認すれば、すべてが分かることだが、それにも関わらず、ハンギョレ新聞はIAEAが福島のALPS処理水に関して“過去に出した報告書のすべての文書”をくまなく調べた結果だとして、どこにも「ALPSの性能と信頼性を検証した」とする言葉はなかったと主張する。どれほどの専門的な科学知識と理解力のある記者が、IAEAの“すべての関連文書”に当り、その内容を読解したかは知らないが、ことし5月31日発表のIAEA報告書、つまり前述の「分析機関間比較結果」を見ていないことでも分かるとおり、偏った独断的な見方というしかない。

ALPSの処理性能に疑いを抱かせるための記事

ハンギョレは同じ記事のなかで次のように指摘し、ALPSの性能に疑いの目を向けている。(以下引用)

<日本はこれまで、ALPSによって汚染水に含まれた64種の放射性核種のうち、トリチウムと炭素14を除いた62種の核種を基準値以下まで除去することができ、海洋放出をしても安全だと強調してきた。しかし、ALPSで処理した汚染水の70%が排出基準値を満たしていない状態であるうえ、腐食やフィルター損傷などによる頻繁な故障で、信頼性に対する疑問を解消できずにいる。

5月に韓国政府の現場視察団が東京電力から受け取った資料「ALPSの主要故障事例」によれば、ALPSでは設備が安定化したといわれる2019年以降も、毎年重大な故障が発生している。もっとも最近の事例である昨年には、吸着塔に問題が生じたため設備を通過した汚染水に含まれたストロンチウム90の濃度が上昇する現象が確認された。>(引用終わり)

この一つ一つに反論したい。

「処理途上水」があることは公開している

1)まず「ALPSで処理した汚染水の70%が排出基準値を満たしていない状態」だという記述について。

貯蔵タンクの70%の水は、排水処理の初期に、敷地内の放射線量を下げる目的で放射性物質の早期除去を目指して行った処理であり、ストロンチウム90が基準を大幅に上回る濃度で保管されていることは、当初から東電自身が運営する「処理水ポータルサイト」で情報が公開されていた。https://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watertreatment/

ストロンチウム90が基準より高い濃度だったのはALPSの運用開始当初の性能が不十分だったことと、敷地境界線における線量が高く、ALPS運用開始からしばらくは、処理の質よりも処理する量や速さを優先したためだった。現在、一般の保管タンクに貯蔵されている排水処理水は「ストロンチウム処理水」あるいは「処理途上水」と呼ばれてALPS処理水とは区別されている。「処理途上水」は、このあとALPSで何度も2次処理のプロセスを繰り返し、基準値以下に下がったことを測定・確認するためのタンクに移したあと、確認が済んだ処理水しか海洋放出に回さないシステムになっている。ハンギョレの記事は、そうした2次処理のことにはひと言も触れない悪意ある作為的なフェーク報道だということができる。

フィルターの損傷とは「排気フィルター」のことなのに

2)つぎに「腐食やフィルター損傷などによる頻繁な故障で、信頼性に対する疑問を解消できずにいる」としている点について。

ここでは、ただ「フィルター損傷」とだけ言っているが、そもそもこの「フィルター」とはALPS建屋内の「排気フィルター」のことであり、そのことは「処理水ポータルサイト」でも故障が判明した直後に情報が公表されている。「フィルターの損傷」と言えば、誰でも処理する水が通るALPS本体のフィルターのことと誤解するのが普通だが、ALPS設備がある建屋内の排気フィルターのことなので、放射性物質を除去する性能にはまったく影響を及ぼすことはない。東電の「処理水ポータルサイト」では、明確に「排気フィルターの損傷」と記述しているのに、ハンギョレ新聞は意図的としか思えないが、ただ単に「フィルター」としか書かず、正確に書かないことで、極めて悪質な印象操作を行っているとしか思えない。

「除去できない」ではなく「除去しない」と決めた炭素14

3)「炭素14」について。記事ではALPSによって64種の放射性核種のうち、トリチウムと炭素14は基準値以下まで除去することができない」としているが、実際は「除去できない」のではなく、量・濃度の問題で、影響を及ぼすとは考えられない程度(殆どが基準の数%程度、高くても10%程度)であることが分かり、敢えて除去はしないことにしたというのが真実だ。ハンギョレ新聞は、あくまでALPSの処理能力を低く見せるようにしたいし、東電が真実を何か隠蔽し、ごまかそうとしているように持っていきたいのだろう。しかし、炭素14も、前述のストロンチウム90についても、すべて処理水ポータルサイトには具体的なデータが載っていて、検出される出口やその濃度が時間の経過とともに記載されている。東電が処理水ポータルサイトで情報をすべて公開しているにもかかわらず、ポータルサイトの存在が一般に知られていないことをいいことに、東電が何か隠蔽していて、それを“初めて曝露した”かのような書き方をするのは、自分たちの悪意ある偏見や先入観を読者に押しつけようと謀る、チンピラ・メディアの常套手段でもある。

ハンギョレ新聞は「怪談」(デマ)の製造・発信源

ハンギョレ新聞が、左派革新系の野党「共に民主党」を支持し、保守政権である尹錫悦大統領と与党「国民の力」に対しては、一貫して批判的な言論活動をしているため、その報道姿勢が中立でも公正でもないのは、韓国国民なら誰もが分かっている。そして福島処理水に関しても、海洋放出に反対するため、その不安を煽る方向での報道に終始している。そのため、与党「国民の力」や保守系の団体からは、冒頭に紹介した7月12日付の1面掲載の「IAEA、汚染水をろ過するALPSの性能検証を一度もしていなかった」という記事を引き合いに出し、「民主党が(福島処理水に関する怪談を)提起し、それと軌を一にして、ハンギョレ新聞が怪談を拡大再生産し、スピーカー役まで果たしている」と、ハンギョレ新聞を「怪談」(デマ)やフェークニュースの製造・発信元だと名指しで批判している程だ。

ハンギョレ新聞7月21日「福島原発汚染水問題、ハンギョレが『怪談スピーカー』

?」

東京電力は取材拒否だけでなくしっかり反論せよ

ところで、東京電力は福島第一原発の現場を外国メディアにも見学してもらうため、7月21日の予定で、日本フォーリン・プレスセンター(FPCJ)を通じて、外国メディアの取材申請を受けつけた。

ハンギョレ新聞も取材を申請したそうだが、東京電力は韓国メディアのうちハンギョレ新聞とMBC(文化放送)の申請だけを受け付けなかった。

ハンギョレ新聞7月21日「特派員コラム・『汚染水取材』での東京電力の韓国メディア選別」

どちらも、この間、福島処理水のことだけでなく、東京オリンピックや安倍政権をめぐっては、とんでもないデマやフェークニュースを垂れ流し続けてきた。取材されても、どうせ真実をなど書いてはくれないメディアに取材の機会を与えても無駄なことは初めから分かっている。東京電力は、福島の漁業関係者が抱く風評被害への不安を解消するためにも、ハンギョレ新聞の取材を拒否するだけではなく、ハンギョレが書いた嘘やフェークニュースについて、どこがどう間違っているのかを科学的にしっかりと反論し説明すべきだと思う。

富士の高嶺から見渡せば

大学で中国語を専攻して以来、半世紀にわたって中国・香港・台湾を見続け、朝鮮半島にも関心を持ち続けてきました。これらの国との関係は過去の歴史を含め、さまざまな虚構と誤解が含まれています。富士の高嶺から、雲海の下、わが日本と周辺の国々を見渡せば、その来し方・行く末は一目瞭然。霊峰富士のごとく毅然、敢然、超然として立てば、視界も全開、隣国を含めて同時代の諸相に深く熱く切り込めるかもしれません。

0コメント

  • 1000 / 1000