日本産水産物の輸入禁止だって!?『ありがとう中国』

中国政府が「消費者の健康守る」ってほんと?

中国政府が中国国民の健康に気を遣い、食品の安全に心を砕いているとは、正直に言って、これまで知らなかった。

中国の農地はどこも農薬に汚染されているため、党の指導者や官僚らは彼ら専用の農場で作られた安全な有機野菜しか食べず、金持ちの富裕層は日本など海外から輸入された食材しか買わないと言われる。金のない庶民は、農薬まみれの野菜でも、長時間水につけたり、野菜専用の洗剤で洗ったりして食べるしかなく、中国政府がそれに対して何か対策を取ったという話は聞いたことがない。

漁業に関しても、中国東部の海は、乱獲や海の汚染のために漁業資源が枯渇し、稚魚を育てるという名目で5月から8月まで最大4か月に渉って禁漁期間が設定されている。中国の原発からは日本の6倍から10倍のトリチウムが垂れ流されているが、それらも含め、中国沿岸の海洋汚染について魚への影響など生態環境調査を実施したことはあるのだろうか。

ウナギやエビなど養殖漁業に関していえば、成長促進や病気予防のために大量のホルモン剤や抗生物質などが投与されていて、養殖池はどこもドロドロに濁った水で、こんなところで育ったウナギやエビは恐くて食べられないと思わずにはいられない。養殖業者自身だって絶対に口にしないものを、金儲けのためなら平気で売りさばく。

そういえば、毒ギョウザ事件や「段ボール饅頭」、調理場の排水溝から汚泥を回収し食用油に精製した「地溝油」(下水油)もニュースになったことがあった。金儲けのためなら、実際にそれらを買って食べる人の健康のことなど気にしないというのが中国人の商売のやり方だった。そんな大雑把な国が、「消費者の健康の保護」を理由にあげて、福島第一原発から出る処理水の海洋放出に反対している。何とも不思議な光景である。、

外交手段として貿易品も「弾丸」として使う中国

福島第一原発に貯まり続ける処理水の海洋放出が始まった。今後30年以上にわたって続くことになる長期オペレーションだが、福島第一原発の廃炉処理と福島の再生復興のためには、避けては通れない。

海洋放出が開始されたのは、8月24日午後1時過ぎ。その直後に中国の税関当局は日本を原産とする水産品の輸入を24日から全面的に禁止すると発表した。全面禁止の理由について「福島の“核汚染水”の海洋放出が食品安全にもたらす放射性汚染リスクを防ぎ、中国の消費者の健康を保護し、輸入食品の安全を確保するため」だとしている。

申し訳ないけど、福島沖で採れる魚は、中国沿岸で採れる雑魚に比べれば、ヒラメも鯛もはるかに立派に大きく育っている。日本では福島の魚が安全であることを疑う人はおらず、どれも新鮮で美味しいと評判が高い。

中国税関当局が、日本産の水産品の輸入禁止を発表した「公告」では、こうした措置を実施する根拠として中国の「食品安全法」や「輸入食品安全規則」、それにWTOの食品衛生に関連する協定などを上げている。中国の食品安全法にはトリチウムに関する規定でもあるのだろうか。

中国という国は、外交手段として、貿易品も「弾丸」や「武器」として使う国である。日本に対しては2010年、尖閣沖での漁船衝突事件の報復として日本向けレアアースを禁輸(embargo)したほか、2019年、中国発の新型コロナ発生でオーストラリアが原因調査を要求すると、豪州産のワインの輸入を禁止した。フィリピンのバナナや台湾のパイナップル、最近も頼清徳副総統の訪米をきっかけに台湾産のマンゴーの輸入を禁止した。

こんな国がWTOに加盟し、さらにTPPにも加入しようというのだから、その厚顔無恥ぶりには驚く。

ネットニュースのコメントが至極真っ当

ところで、新華社がこの税関(海関)総署の公告「海関総署関于全面暫停進口日本水産品的公告」を報じたのは午後1時39分。日本の新聞テレビ各社は午後3時前後に、これを速報として一斉に伝えた。

面白いと思ったのは、このニュース速報に対するYahoo Newsコメント欄で見せた日本人たちの反応、突っ込みである。

「よし、じゃあ中国の漁船は日本近海で魚介類を一切穫るなよ? 「中国の消費者の健康を守り、食品の安全を確保するため」と言うならそうしないとおかしいよな?」

というコメント投稿には、わずか1時間弱で4万5000人が「いいね」をクリックした。同じようなコメントは他にも・・・

「全国なら沖縄も禁止なんですね。 そんな危険な海だと尖閣諸島にパトロールもできなくなるし、うかつに中間線も超えられないですね。」

そうだ、沖縄にも小笠原近海にも来るな、軍艦や潜水艦も通過させるな。

「日本の水産物を輸入禁止にするなら、尖閣諸島付近の漁も、北海道沖のEEZ海域のサンマ漁もやめてもらおう。漁獲量が増えて、水産物の価格高騰が少しでも収まれば家計も助かる。」

「秋刀魚が安く食べられるようになるかなぁ 『中国や台湾の漁業者は、日本の一般的な漁船の10倍以上の規模を持つ大型漁船で公海まで出漁し、サンマを巨大な網で根こそぎかっさらうようになった。中国の漁獲量は2012年には2000トンにすぎなかったが、2018年には9万トンに急拡大させた。」

中国による乱獲で太平洋のサンマが姿を消し、今までのように秋の味覚として気軽に食べられなくなったことへの、日本人の恨みは深い。

「中国の漁船団は日本近海で操業した場合しっかり検査する必要がある。 中国漁船団が捕った魚を中国国内で流通させれば「ダブルスタンダード」として報道する必要が在る。」

日本産の魚を問題にして、中国の遠洋漁業船が捕った太平洋の魚を問題にしないのもダブスタであり、中国国内で流通する沿岸モノや養殖魚は問題にしないのも「ダブスタ」です。消費者の健康保護を謳うのであれば、中国で流通する全ての食料品、食材の安全性にも目を向けなければ、中国消費者の信頼は得られないでしょう。

「これで日本に大勢で旅行来て海産物食いまくってたら笑う」

確かに、築地や豊洲市場周辺の食堂には、刺身や寿司目当ての中国人旅行者が押しかけている。彼らの健康を気に掛けるならば、帰国後、綿密な身体検査をして放射性物質の有無を調べるべきだし、そもそも日本に行って海鮮料理は食べるなと注意を呼びかけるべきだろう。

因みに、キロあたり1500ベクレルのトリチウムを含んだ魚を毎日1キロ食べたとしても、年間の被ばく量は0.01ミリシーベルトにしかなく、仮に「沖合の放出口から数キロ離れた場所で獲れる魚介類を一生分食べ続けても、摂取するトリチウムの放射線量はバナナ一口分程度だ」そうです。

<Newsweek 8/23「福島の魚を一生食べ続けてもトリチウム摂取量はバナナひと口分」──処理水放出、海外専門家の見方>

中国のことだから、科学的なデータをもとに処理水がいくら安全だと説明しても、面子を考えれば、振り上げたこぶしはこのままずっと下ろそうとしないだろう。日本の漁業関係者や貿易事業者たちにとっては、経済的な影響は深刻で、たいへんなご苦労を掛けることになるが、われわれ消費者は新鮮なうちに美味しく食べて日本で水揚げされた魚を買い支え、貿易事業者は中国、香港マカオ以外の新たな販路を開拓し、日本の魚介類の魅力を世界に向けて発信していってほしい。

それにしても、中国による今回の措置は、正直言って以下のコメントに代表されているように思う。

「日本産水産物の輸入禁止だって!? 声を大にして言いたい。『ありがとう中国』」

美味しい日本の魚を中国人に食べてもらわなくても結構。今まで中国に持って行かれた魚を日本人の口に取り戻し、日本の豊かな海の幸に感謝し、日本に生まれた喜びを改めてかみしめる契機としていけばいい。

富士の高嶺から見渡せば

大学で中国語を専攻して以来、半世紀にわたって中国・香港・台湾を見続け、朝鮮半島にも関心を持ち続けてきました。これらの国との関係は過去の歴史を含め、さまざまな虚構と誤解が含まれています。富士の高嶺から、雲海の下、わが日本と周辺の国々を見渡せば、その来し方・行く末は一目瞭然。霊峰富士のごとく毅然、敢然、超然として立てば、視界も全開、隣国を含めて同時代の諸相に深く熱く切り込めるかもしれません。

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