中国支配体制を変えるか?パナマ文書


中国経済が今後どうなっていくのか、世界の注目が集まるなかで、中国の現政権、共産党支配体制が今後どうなるのかにも熱い視線が注がれている。中国の指導部体制、あるいはその統治機構が今後、変化を遂げるとしたら、そのターニングポイントとなるのは、2016年4月、世界中に激震が走った「パナマ文書」がきっかけとなるかもしれない。

この「パナマ文書」について、中国政府は黙殺、封殺を決め込んでいるため、いまはアイスランド首相の辞任やイギリス首相への批判など西側諸国での動向に注目が集まっているが、この文書の流出元となったパナマの法律事務所モサック・フォンセカ Mossack Fonseca(中国名:莫萨克冯赛卡)は、もともと中国との関係が深く、ほとんど中国の富裕層のために業務を行っているような会社だった。

モサック・フォンセカのホームページによると、この法律事務所は全世界に42の事務所を持っているが、そのうちの9つは中国大陸にある。上海、深セン、大連、青島、南京、寧波、杭州、済南、それに香港だ。そのほかは、イギリス、スイス、ルクセンブルク、オランダ、UAE、シンガポール、タイ、それに中南米やカリブ海の小国にあるが、ひとつの国に9箇所も事務所をもつのは中国だけだ。上海や香港は分かるとして、寧波や杭州、済南など地方都市にも事務所を置く理由は何か。企業経営者や役人などタックスヘイブンに資金を秘かに移したいと望む人々の需要がそれだけあるという証拠だろう。ちなみにこのホームページの使用言語は、英語とスペイン語のほかは、中国語だけ。

http://www.mossfon.com/contact-our-offices/

BBCの報道によると、モサック・フォンセカが資産管理をしている中国企業は1万6000社にのぼり、中国こそ彼らの最大の顧客だという。モサック・フォンセカが最初に香港にオフィスを構えたのは1987年。その香港オフィスが獲得した顧客数は、イギリス、スイスをはるかに上回る。2000年には中国大陸に進出。そのころ中国指導部は「江家幇」と呼ばれた江沢民派が権勢を振るっていた時代で、この法律事務所は、江沢民一派の権力支配層が海外に会社を設立するのを助けたものと見られる。表面上はパナマの会社だが、主要な業務は中国大陸にあり、実質は中国の富豪、政客のために資金を運び出す手助けをしていたのだ。

国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が公開した「パナマ文書」、つまりパナマの法律事務所モサック・フォンセカから流出した文書には、英バージン諸島などオフショア金融センターを利用する21万4000企業の取締役、株主らの顧客リスト、メールのやり取りなど1150万件に及ぶ詳細な情報が、容量にしておよそ2.6テラバイトのデータとして含まれていた。分析と裏づけ作業にあたったICIJによれば、文書に記載されていた著名な政治家、公人およびその親族の名前は12カ国140人以上。その中には習近平国家主席の姉の夫(「姐夫」鄧家貴)や政治局常務委員で序列5位の劉雲山の息子の嫁で公安相や最高検察院長官を務めた賈春旺の娘(賈麗青)、同じく序列7位の張高麗の娘の配偶者(李聖潑)が含まれていたほか、歴代の中国最高指導層の親族、たとえば毛沢東の孫娘の夫(陳東昇)、李鵬・元首相の娘(李小琳)、賈慶林・元中国人民政治協商会議主席の孫娘(李紫丹)、曽慶紅・元国家副主席の弟(曽慶輝)、胡耀邦・元総書記の息子(胡徳華)の名前が挙がっていた。いずれも「紅二代、紅三代」などと呼ばれる「太子党」、権力と財力を備えたエリート貴族階層である。

ところで、習近平一族をはじめとする中国中央指導部の親族がタックスヘイブンにオフショア会社を持って資金を集めているという情報は、今回が初めてではなく、香港や米国のメディアでは過去にも何度も報じられてきた。香港、台湾、米国などの中華系の人々の間では、いわば既知・周知の事実でもあったのである。

今回「パナマ文書」の裏づけ調査を行ったICIJ国際調査報道ジャーナリスト連合は、すでに2014年1月に、タックスヘイブンに設立されたオフショア金融会社に関する独自の調査報告を発表している。それは、中国の政権担当者や香港、台湾の市民に衝撃をあたえるものだった。そのなかの15の企業は、中国トップクラスの富豪、国営企業幹部、現職および退職した国家指導者の親族が秘密裏に設立したものだった。それらの会社の株主として、習近平の姉の夫・鄧家貴、温家宝の息子・温雲松、娘の温如春、娘婿の劉春航、李鵬の娘・李小琳、胡錦祷の姪・胡翼時、鄧小平の娘婿・呉建常など具体的な名前も報じられた。

2012年彭博通信社の報道によると、習近平の党内での地位が上昇するのに伴い、習近平一族の財産も巨大になり、経営する会社の業務内容も鉱物資源、不動産、移動電話通信設備など業態も拡大していった。この段階で、習近平一族、主に姉夫婦とその娘張燕南の名義で抱える資産は、中国・香港であわせて3億7600万ドルにのぼった。(陶誠辛著『阿里爸爸和太子大盗』香港財大出版社p166)

そもそも習近平一族のうち、長姉の齊橋橋と夫の鄧家貴はカナダ国籍を持ち、次姉の齊安安とその夫の呉龍為は豪州の永住市民権を持っている。また弟の習遠平はすでに豪州に移民し、習近平の前妻柯小明も英国に移民している。現在の妻彭麗媛との間に生まれた娘・習明澤はハーバード大学に留学し、米国居住権グリーンカードを保有しているという噂もある。つまり、習近平は中国最大の「裸官」だとも言われる。(『習近平傳記』明鏡出版社P447)

「裸官」とは、妻子を留学名目などで外国に居住させて外国の国籍や市民権を取得させたうえで、汚職や不正蓄財で稼いだ財産を妻子のもとに送金し、本人は単身で中国国内にとどまっている腐敗官僚を指す言葉だ。いわば逆単身赴任の形だが、不祥事が発覚したら、本人は家族が待っている外国へすばやく逃亡し、不正蓄財も差し押さえられないような状況にしているのである。

(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A3%B8%E5%AE%98)

習近平自身は、たとえ政権運営に失敗し失脚したとしても、外国に逃亡し生き残る道をすでに確保しているということなのか。国家と人民を裏切る叛徒が、命を賭けて国を守り人民の暮らしを守るとは考えられない。こんな人物を国家の最高指導者として仰ぐ中国人民のなんと哀れで、浮かばれないことか。

結局、中国という国柄は、権力や地位を得た者は、その権力と地位を恣に利用して財力を蓄え、ますます豊かになる一方で、権力や地位から見放されたその他大勢の一般庶民は貧しいまま取り残され、その格差は無限大に拡大する社会なのだ。

ところで、米国を拠点とする中文ネット阿波羅(アポロ)新聞網によると、この資料を持ち出し、最初にドイツの新聞に提供を申し出た人物は、明らかに中国共産党上層部に打撃を与えようと図った人物であり、その標的は明らかに習近平ではないかという。http://www.aboluowang.com/2016/0406/719316.html

当の中国人自身がどう思っているかは知らないが、中国以外の世界中の人々の中国を見る目は、人権を抑圧し、言論の自由もない一党独裁国家で、腐敗と汚職にまみれた党幹部を国家指導者に担ぐ異形の国だということだ。そのような指導者が牛耳る中国という国家それ自体が信用できないし、そんな政権に率いられた中国経済の将来もじゅうぶんに怪しいと見ている。習近平がいくら腐敗の撲滅や贅沢禁止を叫んでも、まやかし以外の何ものでもない。自らの一族が絶対権力を元手に腐敗に手を染め、不正に金儲けし、海外に資産を移し、海外移民の準備を着々を進めているというその裏切り行為はいつか必ず、中国人民の目にも白日の下に晒される日が来るはずだ。習近平ら支配層は彼ら自身の裏切り行為を人民の目から必死に隠そうとしているが、そうした真相を知ったわれわれ外国の人間こそがむしろ、中国の権力支配層の腐敗した実態を、中国の民衆に向けて発信し続けていかなければならない。

「あなたたちの国の最高指導者は、国家や人民のことを考えて行動する存在ではなく、自分たち一族の私利私欲のためだけに働き、いずれは中国を捨てて海外に脱出しようと考えている連中だが、それでいいのですか?」 

「彼ら権力者たちは、一般庶民からは税金を取り立て、各種の課徴金を課し、貴方たちにいっこうに楽にならない貧しい生活を強いながら、自分たちは権力を嵩に不正な金を集めて私腹を肥やし、国家の財産を掠め取り、それを海外に持ち出し、海外に逃亡したあとの将来の資金として蓄えておこうと図る輩どもだ。そんなゲスな連中に、国の舵取りを任せておいて本当にいいのですか?」と、あらゆるチャンネル、あらゆるルートを使って中国の人々に問いかけていかなければならない。

しかし、北朝鮮のように、あれほどの矛盾とほころびを抱え、正統性を失った権力体制が今も存続していることを考えると、主体性を失ない自分の頭で考え行動することを忘れた国民、過去の記憶に囚われ恐怖に支配された奴隷的な精神構造、既得権が失われることを怖れる利益分配構造や安定を優先する社会構造など、中国にもさまざまな制約があるのは事実だ。なにより現在の体制を変えたいと望む人々がどれほどいて、政権を転覆させるだけのエネルギーを中国の人々がどれだけ持っているかは、はなはだ心もとない。だからといって諦めるわけにはいかない。人類の歴史にとって、現政権の中国のような反人類的、反文明的な国家の存続を許すことは、地球人としてできない。これからも中国という国家の不当性、不合理性を声高に発信し続けなければならない。

富士の高嶺から見渡せば

大学で中国語を専攻して以来、半世紀にわたって中国・香港・台湾を見続け、朝鮮半島にも関心を持ち続けてきました。これらの国との関係は過去の歴史を含め、さまざまな虚構と誤解が含まれています。富士の高嶺から、雲海の下、わが日本と周辺の国々を見渡せば、その来し方・行く末は一目瞭然。霊峰富士のごとく毅然、敢然、超然として立てば、視界も全開、隣国を含めて同時代の諸相に深く熱く切り込めるかもしれません。

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