「新型ウイルス製造輸出大国」の汚名を負った中国

「武漢肺炎」をめぐる人類史的考察①

中国武漢を発生源として世界に広がる新型コロナウイルスは、感染拡大のスピードを抑え、収束に向かうのは、いつになるのか、が今後の焦点になる。中国の感染症専門家(鐘南山氏)は2月中旬から下旬にピークを迎え、そのあと高止まりしたあと減少に転じるとみる。しかし、中国国内での感染拡大の勢いや、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス船内の感染拡大、感染ルートが判明しない患者が日本国内で次々に見つかっている事態を見る限り、いつピークを迎え、拡大のスピードが衰えるのがいつになるのかさえも予測がつかない。香港大学医学部の梁卓偉学部長は4~5月がピークだという。そうなったら習近平の国賓としての訪日はおそらく不可能だ。そして、収束がそれよりもさらに遅くなったら、東京オリンピック・パラリンピックの開催も危ぶまれる事態になる。そうでなくても、隣の韓国では、やれ放射能汚染だ、旭日旗だと騒ぎたて、開催を妨害したいと望んでいる国民が大勢いる。

ところで、今回の新型コロナウイルスの中国での蔓延は、中国指導部の決断一つで、ウイルスの拡散を武漢市内に留め、コントロールできたことは明らかだ。少なくとも武漢市中心医院に勤務していた眼科医師李文亮氏が12月30日に発した「入院患者7人からSARSと同じコロナウイルスに陽性反応が示され、ヒト-ヒト感染が起きている」という告発のメッセージに真剣に向き合い、その時点で対策をとっていれば武漢でのアウトブレークは防げた。李文亮氏はいま「吹哨人」(ホイッスルを吹く人)と呼ばれる。彼が吹き鳴らした警告のホイッスルを無視し、あまつさえデマ(流言蜚語)だとして「訓戒書」に署名させ、口封じまでしていた。

【武漢肺炎】敢言醫生李文亮病逝 曾被喻為疫情「吹哨人」

李文亮医師は、ヒトからヒトへの感染、病院内での感染が起きていることを12月末には告発していたが、武漢市の衛生当局がヒト-ヒト感染可能性も排除できないとようやく発表したのは、半月後の1月14日で、それまでは院内感染の発生も否定していた。その武漢市衛生健康委員会がネットで公表した「新型コロナウイルス感染による肺炎の病疫に関するQ&A」でさえ「現在の調査結果から見て、明確なヒトからヒトへの感染の証拠はなく、ヒトーヒト感染の可能性も排除できないが、そのリスクは低い(现有的调查结果表明,尚未发现明确的人传人证据,不能排除有限人传人的可能,但持续人传人的风险较低)」と、この時点でもまだヒト-ヒト感染への警戒感は薄く、今から見ると明らかに間違った方向に誘導していた。

武漢市衛生健康委員会1月14日付け「新型冠状冠状病毒感染的肺炎疫情知识问答」

李文亮医師が吹き鳴らすホイッスルの警告音に真剣に向き合っていれば、新型コロナウイルスが武漢を越えて中国国内に拡散する事態は防げたし、ウイルスを保有した中国人が海外に自由に旅行し、発症もせずにウイルスだけをばらまく事態は防ぐことができたし、少なくとも海外の国がウイルスの流入にどう対処するかの心構えと準備を整えることはもっと早くできたはずだ。


武漢市の周先旺市長は1月27日、中国国営中央テレビCCTVのインタビューで「感染状況の情報公開が遅れた」ことを認めた上で、「地方政府は情報を得ても、権限が与えられなければ発表することはできない」とも発言し、情報提供の遅れは、中央政府の対応にも責任があったことを暴露した。つまり、新型コロナウイルスの感染拡大に関する情報封鎖や情報制限は、中国特有の独裁専制体制、全体主義的・官僚主義的な一局管理体制、秘密主義的・排外主義的・一国中心主義の外交政策、思想・言論の自由がなく基本的な人権が蔑ろにされた非民主主義的体質こそが、新型コロナウイルスのパンデミック(感染爆発)を招いたのであり、広くは政治体制だけでなく、中国文化や人々の生活様式を含めた「中国」という特殊な文明のありかたそのものが今問われているのである。

われわれ人類は、2002~3年のSARSに続く、新たなコロナウイルスの出現とその脅威に直面して、中国で繰り返される「新型ウイルスの製造と海外輸出」というこの事態を、もう少し、人類史的に考察する必要がある。

希少な動物を好んで食べるというシナ人の習癖から、異なる種の動物が生鮮市場という狭い空間に寄せ集められ、生きたまま市場で取引きされるため、ウイルスは動物の間を転移する間に、容易に遺伝子のタイプを変え、人間にも感染するようになる。ある意味、生物化学兵器より質が悪い。なぜなら生物化学兵器なら、当然、その脅威に対抗できるワクチンや薬品が開発されているはずだからだ。未知の動物由来で、しかも簡単に変異するウイルスを相手に免疫ワクチンを開発するには少なくとも1年や2年の時間がかかる。

感染症専門家でSARS治療でも名を馳せた鐘南山氏をはじめとする中国の研究者グループが発表した論文によると、新型コロナウイルスの潜伏期間は3日を中央値として最大で24日だったという。3週間以上に及ぶ観察・隔離期間が必要だとしたら、人々の日常生活は崩れ、地域のコミュニティは失われ、経済活動も完全停止する。

それにしても人類は、繰り返される中国発の新型ウイルスの脅威にこれからも付き合い続けるしかないのだろうか。そのたびごとに外出を控えて家に閉じこもり、マスクや消毒液の不足に悲鳴をあげ、学校や工場を閉鎖し、海外渡航や出張を取りやめ、経済活動を自粛し、無価値の時間を無為に過ごさなければならないのか?

中国建国の父、毛沢東はかつて人民革命とか毛沢東主義とかいう革命思想を世界に輸出し、人類に多大な犠牲を強いた。知識人を目の敵にし何百万人ものカンボジア国民を死に追いやったポル・ポト派(クメール・ルージュ)や、ペルーでつい10年ほど前まで数多くのテロ活動に従事したセンデロ・ルミノソ(Sendero Luminoso)が有名だが、海を越えて中国人以外の人命を犠牲にしているという意味では、新型コロナウイルスは中国発の「危険思想」と変わらない。

中国は経済大国にのし上がるとともに、世界の経済覇権を手にするため、かつてのシルクロードを模した「一帯一路」という世界戦略を立ち上げ、中国のヒト・モノ・カネが国境を越えて大量に行き交うネットワーク作り、経済圏構想を推し進めている。中国からのヒト・モノが大量に行き交うルートは、必然的に中国発のウイルスも簡単に運ばれるルートであり、「一帯一路」は当然のこと、ウイルス拡散ルートを世界に広げることでもある。

「一帯一路」構想とともに、中国が世界の覇権を完全に牛耳るためのもう一つの重要戦略が「中国製造2025」、つまり最先端技術を中国が独占しようという技術覇権構想だ。重点分野には次世代通信規格5Gや人工知能AI、自動運転技術などがあるが、バイオテクノロジーや医薬・高性能医療機器開発も含まれる。人類に多大な害を及ぼす病気の原因を造っておいて、医療・医薬品の分野で技術覇権を確立しようという中国の狙いはどうなのだろう?

新型コロナウイルスの感染爆発を招いた中国指導部は、これまで国際社会に対して何の説明も謝罪もしていないが、日本をはじめ世界に感染拡大を招き、多大な損失を生じさせた責任をはっきりと認めなければならない。こうした状況を招いた自身の体制と体質を省みて、そういう国のあり方や人々の生活方式で、本当に人類の一員として生きていけると思っているのか、世界を相手にできると思っているのか、真に反省しなければならない。中国と付き合うことによって、命を危険に晒すウイルスまで取り込むことになるとしたら、誰が中国との付き合いなど望むだろうか?

人類史において、中国文明のあり方、血塗られた王朝の興亡の歴史、中華思想という影響圏の拡大とともに周辺民族を迫害し続け、チベット人やウイグル人に対しては耐えがたい苦痛を今も与え続けている。

現在の中国共産党体制を含めて中国文明のあり方は、人類の普遍的理念とはかけ離れすぎている。希少動物を食べれば、それが希少であればあるほど体に効果があるという発想自体が異様ではないか?

習近平国家主席は、憲法を改正してまで終身制に道を開いた。「中国の夢」をスローガンに掲げ、経済的にも軍事的にも米国を上回る実力を蓄え、世界の覇権を握るとともに、14億の人民の運命を一手に引き受けるつもりらしい。

民主化運動を軍の力で押しつぶした天安門事件の時もそうだったが、中国では、物事を考え、判断できる頭脳は鄧小平など数人の国家指導者だけが持っていればよく、その他の人民は、自ら考える頭脳など持つ必要はないと言われた。

どう見ても平凡なおじさんにしか見えない習近平に、ずば抜けた頭脳や非凡な才能があるとは思えない。彼がすべての選択において正しい決断をし、あらゆる状況について的確な判断をできる人物ではないことは、今回のパンデミック事態で明らかになっている。中国の民衆も含めて、われわれ地球市民は、中国の独裁者一人に生殺与奪のすべての権力を委ねたわけではない。習近平だって、人類全体の運命を左右する責任まで、自ら引き受けようなどという身の程知らずなことはよもや考えていないと思う。中国指導部は、中国人民の厳しい目だけではなく、国際社会から鋭いまなざしが自分たちに向けられていることを自覚し、自らの能力不足を反省し、退場の準備をしたほうがいい。

富士の高嶺から見渡せば

大学で中国語を専攻して以来、半世紀にわたって中国・香港・台湾を見続け、朝鮮半島にも関心を持ち続けてきました。これらの国との関係は過去の歴史を含め、さまざまな虚構と誤解が含まれています。富士の高嶺から、雲海の下、わが日本と周辺の国々を見渡せば、その来し方・行く末は一目瞭然。霊峰富士のごとく毅然、敢然、超然として立てば、視界も全開、隣国を含めて同時代の諸相に深く熱く切り込めるかもしれません。

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