尖閣沖に中国民兵漁船が集結中

広島「原爆の日」の平和式典がまさに始まり、リオデジャネイロでは「平和の祭典」オリンピックの開幕式が華やかに行われていた8月6日午前8時05分、尖閣諸島の接続海域に中国漁船とともに中国海警局の警備船6隻が侵入し、周辺の海域には230隻あまりの中国漁船が大挙集結しているのが確認された。また翌7日午前10時には、中国海警局の船は9隻にまで増え、うち2隻が尖閣諸島沖12カイリの日本の領海に侵入、周辺の中国漁船も300隻あまりを数えた。さらに8日には接続水域に入った中国の公船は同時に15隻まで増え、その周辺の漁船も400隻にまで増えたと伝えられる。これまでは見られなかった異常事態である。

いくら豊かな漁場だといっても、400隻もの漁船が集中し、操業したとしても、獲れる魚は高が知れている。そもそもいまの季節、この海域にはアジやサバの幼魚しかいないのではないか?福建省沿岸の港から遠い尖閣沖まで出て操業するとして、雑魚しかとれなければ、船の燃料代さえ稼げないはずだ。

中国沿岸では魚の乱獲や海の汚染が原因で、ほとんど魚が取れなくなったため、90年代末から漁業資源の保護を名目に春から夏にかけて禁漁期を設けている。8月1日はその禁漁期が明けて、漁が解禁された日で、いっせいに漁に出た漁船がたまたま尖閣沖に集結したのだと解説するメディアもあるが、そんな説明を誰が信じるだろう。そもそも、これらの船に乗っているのは戦闘訓練を受けた武装民兵だと言われている。あらかじめ、習近平政権が動員計画を立て、漁船の燃料代や民兵への手当てを払って仕組んだ政治ショーであることは明白だ。

中国側の意図がどこにあるかは明らかだろう。日本の国民が深く心に刻む大切な日のもっとも重要な時間に合わせ、また世界の目が遠く南米リオデジャネイロに注がれ、テレビ中継を通して、日本人選手の活躍に心を躍らせているまさにその瞬間を狙って、日本政府の中枢や現場の海上保安官、自衛官らの警戒を高めさせるために、計画的に準備し巧妙に仕組んだ嫌がらせ以外の何ものでもない。

それによって何ごとかをアピールするつもりなのであろうが、そんな小ざかしい手段しか取れない彼らの幼稚さには哀れみしか感じない。大海の真ん中の、人も住めない小さな島を、「自分たちが最初に発見して名前をつけた」と嘘八百を並び立て、だから「古来から自分たちの領土だ」などと屁理屈をつけていいつのり、さらには、今となっては何の開発も手出しもできない小さな島を自分たちの「核心的利益だ」とまで公言したせいで、そんなむちゃくちゃな屁理屈、噓八百を取り繕い、何の役にもたたない面子と虚勢を張るためだけに、こけおどしの機関砲を搭載した大型警備船15隻と民兵漁船400隻あまりを動員し、無駄なコストと膨大なエネルギーをかけるはめに陥っているのだ。沖縄周辺には、いま熱帯低気圧が発生し、勢力を増しつつあるようだが、中国漁船はいつまでも居座わり続けることができるか、見ものでもある。

しかし、こうしたやり方は南シナ海の島を中国が掠め取るときの常套手段だっただけに、十分に注意し警戒する必要がある。1974年1月、ベトナムが支配していたパラセル諸島の島を中共軍が攻撃して奪ったときも、2012年、フィリピン沖のスカボロー礁を中国が一瞬の隙をついて占拠したときも、まず最初に大量の中国漁船を先兵としてその周辺海域に集結させていたからだ。いずれにしても中共政権はかくも腹黒く、度し難い連中なのだということを、改めて肝に銘じ、日本人はあくまでも尖閣諸島を守り続けるという決意と覚悟を国際社会に向けて示し続けていかなければならない。名目的に実効支配しているという強みは日本にあり、そうした現状を力で変更しようという中国の試みに対しては、ハーグの仲裁裁判所の裁定でも示されたように、必ずや国際的な非難が浴びせられるのは間違いないからだ。

富士の高嶺から見渡せば

大学で中国語を専攻して以来、半世紀にわたって中国・香港・台湾を見続け、朝鮮半島にも関心を持ち続けてきました。これらの国との関係は過去の歴史を含め、さまざまな虚構と誤解が含まれています。富士の高嶺から、雲海の下、わが日本と周辺の国々を見渡せば、その来し方・行く末は一目瞭然。霊峰富士のごとく毅然、敢然、超然として立てば、視界も全開、隣国を含めて同時代の諸相に深く熱く切り込めるかもしれません。

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