福島処理水問題で韓国と北朝鮮が共闘?冗談だろ?

米ジョージア大学名誉教授だというパク・ハンシクなる人物が、ハンギョレ新聞に寄せた寄稿文には呆れてしまった。「福島第一原発の汚染水放出決定に対応して韓国政府は、南北協力を通じてこの問題を国際社会に問題提起すべきだ。最近、南北間での対話や協力がほとんどないのは事実だが、今回の事案が南北対話の再開と協力の機会となることを望む」と真面目な顔で提言しているのだ。

ハンギョレ新聞5/11「寄稿・福島第一原発汚染水、南北が共同で対処すべき」> 

冗談じゃないの?と疑ったが、この国出身の「大学名誉教授」ともあろう人間がこんなふざけた提言しかできないとしたら、その知能程度を疑うし、こんな与太文章をまともに掲載する新聞も、その程度が知れるというものだ。

文在寅があの手この手で秋波を送っても、北朝鮮からは金与正の「ゆでた牛の頭」だの「3歳児以下の頭脳」だのと、さんざんバカにした返事しか返ってこないのに、福島処理水問題では日本に対して南北共闘が成立し、これをきっかけに南北対話が再開できると真剣に考えているとしたら、この名誉教授の頭の中はまるっきりお花畑そのもので、どこか異次元のおとぎ話の国にでも生きているのではないか?

この御仁、先の文章に続けて次のように付言する。「ちょうど北朝鮮も労働新聞を通じて『日本の原発汚染水放出計画は反人倫的妄動』として撤回を求めているため、南北協力が難しくはなさそうだ。韓国と北朝鮮が海洋汚染について共同研究を行うとともに、南北の政府が協力して日本の行動を糾弾し、放出決定が撤回されるよう南北共同の勧告または決議を作成して、声を一つにして国際社会に訴える。そのような外交的努力が必要だ」。開いた口が塞がらないとはこのことだ。

福島の処理水放出が「反人倫的妄動」だって?それをいうなら、北朝鮮の核開発と核実験のほうがはるかに世界の脅威であり、反人類的、反文明の許せざる蛮行だ。その北朝鮮の核開発には何の抗議も、阻止もせずに、南北が共闘し協力するということは、韓国自身も北朝鮮と同様に、反人道、反人倫の罪を犯すことになる、ということに気がつかないのだろうか。

あまつさえ、北朝鮮は核開発に伴って、朝鮮半島北東部の豊渓里(プンゲリ)で、過去6回にわたって地下核実験を繰り返し、実験場とその周辺の河川に深刻な放射能汚染をまき散らし、実験場の運営に携わった科学者や周辺の住民に重大な健康被害をもたらしている。

その真実は、『豊渓里(プンゲリ): 北朝鮮核実験場 死の情景』金平岡著、五十嵐真希訳(徳間書店2018年8月)というノンフィクション小説に詳しくまとめられている。そして、この本については、3年前に本ブログでも取り上げ記事にしている。参考に、その部分を本ブログ「北朝鮮独裁体制の延命に手を貸す韓国」2018年1月23日から再録する。

<政権の崩壊を望んでいた北の民衆>

北朝鮮に甘い顔をして、援助の手を差し伸べることが、結果的にどういう結末をもたらすか、その典型例が、金大中政権による「太陽政策」だった。90年代、北朝鮮は100万人とも200万人とも言われる餓死者を出し、「苦難の行軍」と呼ばれる時代が続いた。北朝鮮の民衆は、金正日独裁政権の崩壊を望み、密かに研究を続けていた核開発も、食料もままならない研究者や軍人たちの困窮で放っておけば失敗するはずだった。ところが、1998年、韓国に金大中大統領が登場し、北朝鮮への「太陽政策」を始めたことで、金正日の首はつながり独裁体制は延命され、頓挫しかかっていた核開発も息を吹き返し、ついには2006年初めての核実験成功につながった。

そうした事情を生々しく証言したのが、脱北女性が書いた「豊渓里(プンゲリ)」という小説だった。この女性は、核実験場がある豊渓里で核開発に携わった研究者を夫に持ち、90年代の苦しい時代に坑道を堀り核実験場を整備する建設工事や2006年初めての核実験成功の瞬間を身近に体験している。

その夫は、「40歳の手前で歯がすべて抜け落ち、肌も黄色く変色し・・・息が止まるほどの痛みに耐え、苦しみながら亡くなった」という。放射線の影響は明らかだった。「恨めしいのは、飢えと貧しさに苦しむ住民たちに、当地で核実験が行われているのが一切知らされていなかったこと」だという。「豊渓里のような貧しい地方と平壌との格差は酷く、国中が困窮して研究も思うように進んでいなかった。94年に金日成主席が亡くなると、都市部でさえ配給が止まる飢饉が国全体を襲った。実験場の軍人も、支給された靴や制服を食料と替えたり、住民の鶏を盗んだりして飢えを凌いだ。国境を越える脱走兵も多く出て士気が下っていたが、98年、金大中政権が発足。「太陽政策」が始まると、食糧事情も見違えるよう良くなった。「研究者や軍人の家族は最上級の配給を受けることができ、米や卵、豚肉などが豊富に与えられました。結果として、中断していた坑道工事も盛んになった」という。

「多くの国民は政権崩壊を望んでいたのに、金大中大統領が、金正日(キムジョンイル)総書記の手を握り北朝鮮を救ってしまった。そのまま放っておけば、核実験の成功はおろか、間違いなく独裁体制は崩れていたでしょう」。

(「脱北女性が見た北朝鮮核実験場「豊渓里」死の光景 研究員だった夫は歯がすべて抜け落ち…」デイリー新潮2017/12/18)

韓国では、金大中、盧武鉉の流れを引く親北の左派政権が再び北への融和姿勢を打ち出している。しかもローソク集会の「民意」で誕生したはずの文在寅政権は、今度は大多数が反対しているという民意を無視して、南北合同チームの結成など平昌五輪の北朝鮮参加を推し進めている。韓国は、過去の失敗を再び繰り返して、北朝鮮の金正恩体制を延命させ、核ミサイルを持った独裁者の誕生という後戻りできない状況を作り出そうとしているのではないか。(再録終わり)

「豊渓里」の核実験場からは今も大量の放射性物質が河川を通じて海に流れ出し、寧辺(ヨンピョン)などの核製造施設からも大量の放射性物質が漏出していることは間違いない。

韓国は、そうした北朝鮮の核実験場や核施設での深刻な放射能汚染の事実を隠し、多数の人の放射能被害の実態に目をつむって、一方では、地球上でかつて一件の健康被害の報告もないトリチウムの危険をあげつらい、ありえないトリチウムの健康被害の恐怖を煽り、なおかつ「南北の政府が協力して日本の行動を糾弾し、放出決定が撤回されるよう南北共同の勧告または決議を作成して、声を一つにして国際社会に訴える」外交的努力が正義にかなっていると本当に信じているのか?

パク・ハンシク教授とハンギョレ新聞よ、それが本当にまっとうなことだと考えているのか、答えてみよ。

富士の高嶺から見渡せば

大学で中国語を専攻して以来、半世紀にわたって中国・香港・台湾を見続け、朝鮮半島にも関心を持ち続けてきました。これらの国との関係は過去の歴史を含め、さまざまな虚構と誤解が含まれています。富士の高嶺から、雲海の下、わが日本と周辺の国々を見渡せば、その来し方・行く末は一目瞭然。霊峰富士のごとく毅然、敢然、超然として立てば、視界も全開、隣国を含めて同時代の諸相に深く熱く切り込めるかもしれません。

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