東京オリンピック・パラリンピック組織委員会のホームページに掲載された聖火リレーのルートと日程を示した日本地図に、日本の領土である竹島が表示されているとして、韓国の元首相や前首相が、日本政府が竹島を地図上から削除しなければ、東京オリンピックをボイコットし、韓国選手団を参加させないと息巻いたことで、ネット上では「どうぞ、どうぞ、そうしてください」「韓国不参加、歓迎します」「北朝鮮と一緒にボイコットしてくれればすっきりする」など、喜びの反応で沸騰している。
中央日報によると、李洛淵(イ・ナギョン)元首相は5月27日、自身のフェイスブックに「日本政府に竹島(韓国名「独島」)の表記を直ちに削除するよう強力に求める」と書き込み「日本が最後まで拒否するなら、(韓国)政府は五輪ボイコットなど、可能なすべての手段を動員して断固として対処しなければならない」と主張した。
<中央日報5/28「韓国『東京五輪地図から独島削除を』要求に日本政府『全く受け入れられない』」>
丁世均(チョン・セギュン)前首相も29日、地方議員懇談会で「日本はちょっと偏屈で恥知らずなのではないか。われわれを刺激しなくてもいくらでも五輪をできるのではないか。五輪地図修正ができなければ国民の同意を受けて五輪をボイコットすべき」と主張し日本を「あいつら、悪い人たち、偏屈、恥知らず…」と汚い言葉を使って罵倒した。た。
<中央日報5/30「韓国前首相、日本政府を露骨な表現で批判」.
二人とも、来年の大統領選挙に与党「共に民主党」候補として出馬に名乗りをあげ、与党の候補者指名レースをともに闘っている者同士だが、しかし、今のところ支持率はともに数%程度しかなく、与党のなかでは李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事の30%前後に大きく水を空けられているため、たぶん大統領候補指名は難しい。だからなおさら、人気とりを狙って日本に対する強硬な姿勢を示し、「反日」左派系の支持獲得を画策したのだろう。困ったときの「反日」頼みは、もはや韓国政界の伝統芸であり、政権終盤の見え見えの戦術でもある。
政治家だけではなく、韓国外交部も、外交ルートを通じて、日本政府に地図上から竹島(独島)の表示を削除するよう要求し、日本政府からは当然のこととして拒否されているが、今後も「状況を注視しながら文化体育観光部、大韓体育会などのすべての関連機関との積極的な協議を通じ、継続して積極的に対応していく」としている。日本政府に要求が認められなければ、関係機関との協議で五輪ボイコットの可能性があると、脅しでも掛けるつもりなのだろうか?
この問題について、28日の記者会見で聞かれた加藤勝信官房長官は「歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も明らかに日本固有の領土であり、韓国側の主張は全く受け入れられない」と突っぱねた。
竹島をめぐる両国の間の長期におよぶ争いの経緯からも、こうした反応になるのは当然のことで、互いに一歩も引かないことはわかりきっているはずだ。
互いに互いを抗議し、要求を繰り返し、相手の主張は断固拒否する、こうした外交のやりとりは、いわば「儀式」みたいなものであり、一応、形式を整え、やったこととして記録に残すための外交手段だから、仕方がないが、だからといって、「五輪ボイコット」だとか「不参加」だとか、具体的な報復手段にまで言及するのは、どうせブラフであり、実行できるはず問題ないのだから、幼稚な手段だというほかない。
領土問題や領有権をめぐる争いを抱える国なんて、それこそどこにでもあるわけで、人も住めないような小さな島をめぐって、相手がこちらの言い分を聞かないからといって、国際的な行事をすべてボイコットし、参加をいちいち拒否していたら、国際会議も国際スポーツ大会も成り立たないだろう。
韓国は、中国との間で海の境界や航空管制空域をめぐって争っているほかに、韓国側が「白頭山」(ペクトゥサン)と呼ぶ中朝国境の山も、中国側は「長白山」(チャンパイシャン)と呼び、古くからの中国の領土だと主張し、歴史的には境界線は確定していないとの立場を堅持している。当然、中国は韓国の言い分を認めるはずはないので、来年の北京冬期オリンピックに対しても、韓国はボイコットと不参加を宣言すべきであろう。
たとえば中国と領土問題を抱えるインド、南シナ海の島や岩礁をめぐって中国と領有権を争うフィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシアなどは、北京冬期オリンピックへの参加を拒否するべき、ということになる。しかし、そうした話は聞いたこともない。
一方で、ウイグル人数百万人を強制収容している中国政府の人権侵害に抗議して、米国やEU諸国には北京五輪をボイコットしようという動きがある。しかし韓国が、そうしたウイグル人に対する人権侵害に抗議の声をあげ、香港、台湾の民主化要求の声に支持を表明したという話は聞いたことがない。
中国には何があっても抗議せず、従順に従う一方で、日本にはどんなに些細なことでも文句をいうのが許されると思っている韓国。強い者には頭を垂れる事大主義、属国主義、植民地体質が抜けきれていないようだ。
ところで、KBSが聯合ニュースの写真を使って報じている地図では、たしかに赤い四角に囲まれたところには小さな点のようなものが見え、これが竹島だと分かるが、しかし、この地図が組織委員会のホームページのどこにあるのか、私自身は、見つけることはできなかった。
<KBS日本語放送5/27「東京五輪ホームページに独島表示 東京五輪組織委員会が地図の修正を拒否」>
韓国側が問題にしている東京オリンピック組織委員会の日本地図だが、聖火リレーに関する情報を伝えるホームページに、確かに聖火リレーのルートと日程を示した日本地図はあったが、地図を拡大しても竹島の島影は私のパソコンではついに確認することはできなかった。ほかに地図があるのか探してみたが、各県別の詳細地図はグーグル(Google)の地図をそのまま利用したもので、島根県の地図では竹島がある場所は範囲外で表示されなかった。
<東京2020オリンピック聖火リレー・ルート情報(olympics.com)>
つまり私自身が、組織委員会のホームページで竹島の位置を確認できず、これだけ探しても容易にその位置を確認できないということは、東京五輪組織委員会に、日本地図の表記を使って「日本固有の領土である竹島」の存在を内外に訴えようという意図はほとんどないことが分かる。韓国人が、その地図を発見したというのは、当然、日本への「いちゃもんをつける材料を何としてでも探し出す」という意図、執念をもって探し出すため、普通の縮尺では見えるはずのない竹島がある場所で地図の画面を最大まで拡大し、目をこらしても薄い点にしか見えない竹島の影を見つけたということになる。つまり日本側の隠れた意図としては、私が竹島を探すために時間をかけ苦労したように、韓国人にも探し出すまでにあれこれ障害を設け、最大いらつかせるという意図があったのかもしれない。しかし、おそらく組織委員会も、偏執狂の韓国人を相手にするほどヒマではないだろう。
旭日旗の会場への持ち込みを問題にし、福島原発事故の放射能に汚染されているとしてガスマスクを付けて聖火リレーを走るポスターを作成し、選手村の汚染された食事から韓国選手を守るとして食材や水は自分たちで持ち込むと宣言するなど、東京オリンピックをさんざん貶め、けなしてきた韓国である。スポーツマンシップとは縁のない韓国選手は、日本を相手なら何をやっても許されると教育を受け、日本に勝つためなら、どんなに汚いラフプレーでも平気で行なう。韓国が東京オリンピック・パラリンピックをバイコットしてくれるなら、そのほうがどれだけすっきりするか、と多くの日本人が思っているはずだ。
もともと韓国文在寅政権は、南北融和を演出した平昌五輪の成功体験を忘れられず、東京オリンピックへ南北合同チームで参加し、朝鮮半島の平和構築と南北対話のきっかけにしようと考えていた。しかし、そんな文在寅を心底から嫌い、無視し続けている北朝鮮は、新型コロナウイルスの蔓延を理由に不参加を表明、文在寅は腰砕けとなった。そうしたなかで、どう考えても真(ま)ともとは思えないのは、2032年のオリンピック開催都市にソウルが平壌とともに名乗りを上げたことだ。
しかもIOC国際オリンピック委員会の開催地選考委員会は今年2月24日、2032年夏期オリンピックの開催都市として豪ブリスベンを最優先候補に選定していた。ところが完全な後出しじゃんけんだが、ソウル市は4月1日なって、突如2032年平壌との共同開催を提案した。しかも、ソウル市の提案は、北朝鮮側や平壌市と協議した結果ではなく、2018年の南北首脳会談の合意に従ったというのがその理由だった。
<BBC2/25「2032年夏季五輪、豪ブリスベンを最優先候補地に IOC」>
<ロイター4/1「韓国ソウル、2032年夏季五輪の南北共同開催案を提出」>
さらにおかしいのは、セクハラ事件で朴元淳前市長が自殺したため、ソウル市長は当時、空席で、IOCへの開催都市提案の決定は市長代行が独断で行なったものだった。しかも、その1週間後の4月7日には市長選挙が行なわれ、新しい市長が決まることになっていた。実際に市長選挙では、最大野党「国民の力」の呉世勲(オ・セフン)氏が与党候補に大差をつけて勝利したので、IOCへの開催都市提案は新市長のもとでは覆る可能性もあったのである。結果的には、市長選挙直前のソウル市長代行による南北共同開催都市提案は、文在寅政権の与党左派勢力が、保守派市長の誕生を前に、北朝鮮側と帳尻を合わせることなく単独で強行した最後っ屁のようなものなのだ。特定の政治勢力によるオリンピックの政治利用も甚だしいというしかない。そんな国の政治家や国民から、東京オリンピックについて文句を言われる筋合いはいっさいない。
ところで、新型コロナウイルスの感染拡大が収らないなかでのオリンピック開催に、国民の命とオリンピックとどっちが大事なのか、という議論がある。大相撲やプロ野球、サッカーJリーグ、プロバスケットBリーグなど観客を入れた試合開催の状況を見る限り、スポーツイベントで大規模なクラスターが発生したという事例がなく、むしろオリンピック期間中に国民の多くが自宅でのテレビ観戦に釘付けになれば、人流も減り、ロックダウン以上の感染対策になるのではないかとも思うが、立憲民主党や共産党は東京五輪中止を訴えている。
しかし、不思議なのは、かれらは東京オリンピックの中止は主張するが、すでに8か月後に迫った北京冬期五輪の中止については何の声もあげないことだ。
産経新聞によると米紙ウォールストリート・ジャーナルは28日付の社説で、
<「権威主義諸国は自国の政治形態(の優越性)を誇示する場として五輪を活用している。東京五輪の失敗は中国政府にとってプロパガンダ上の大勝利となるだろう」と警告し、開催の政治的重要性を強調した。同時に東京五輪の開催は1年以上のロックダウン(都市封鎖)を経て「世界が再び動き出したという重要なメッセージを送ることになる」と訴えた。>という。
2021年東京オリンピックの開催は、人類が経験した地球規模のパンデミックに打ち克ったことを示す大会となり、中国のような権威主義的・全体主義的国家や、韓国のようにオリンピックを政治利用して自分たちの言い分を通そうという国に対しては、自分たちの思い通りにはさえないという明確なメッセージを送る大会になることだろう。
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