感染者激増でもウィズコロナを止められない韓国K防疫

<日本の感染急減は韓国製PCR検査キットを使わないせい?>

日本では新型コロナの感染者が急減し、死者もほとんど出なくなったのに対して、韓国では逆に、感染者や重症患者、死者が急増している。感染が急拡大しているにも関わらず、11月に入って感染対策を大幅に緩和する「日常の回復」、いわゆる「ウィズコロナ」政策をとり、会食や集会、スポーツイベントなどの人数制限を弛め、小中高校の全面的な登校授業を開始した。それに伴って感染者はさらに急増し、11月30日にはついに5000人の大台を突破した。12月1日午前0時までの一日の感染者数は5123人、重症患者も723人で過去最高となった。死者も連日30~40人以上を数えている。

こうした深刻な状況にも関わらず、韓国では、日本の感染者が急減していることについて、「理由が分からない」「何か隠している違いない」「良からぬカラクリがあるはずだ」などと、下衆(げす)の勘ぐりや難癖・いちゃもんの類いの憶測が、いまもメディアを賑わしている。

そのなかでも、有名なラジオパーソナリティーで自称ジャーナリストの金於俊(キム・オジュン)という人物が自身のラジオ番組で、日本は「韓国製のPCR検査キットの輸入を拒否し、使っていない唯一の国だ。そのため、感染者を補足できず、その結果、感染者が急減しているように見えるだけだ」と主張した。

朝鮮日報11/27「金於俊氏「日本には韓国製の診断キットがないのでデルタ株を捕捉できない」…K防疫の危機でまたまた陰謀論」

何の根拠もなく、いかなる証拠も示さず、こんなフェークニュースを堂々と垂れ流すのは、日本を貶め、何としても日本を蹴落としたいという「陰謀論」でしかない。こんな与太話で韓国国民を騙すことができるとしたら、韓国の民衆は救いようがないほど愚かな人たちに違いない。ちなみに、この金於俊という人物、左派系の過激な言論で知られ、「文政権のラッパ吹き」「政権与党の太鼓持ち」として有名な人物だ。最初からお里の知れた人物による、タメにする議論として、韓国民は割り引いて聞いているに違いない。

ところで、韓国のPCR検査は、20㎝ほどの長さの綿棒を鼻と喉の奥に突っ込み、そこの粘膜をこすり取るようにして採取する。私は、日本に何度か一時帰国したあと、そのつど韓国での2週間の隔離期間を送り、その最初と最後の2回、保健所で必ずこのPCR検査を受けさせられたが、綿棒を乱暴に鼻や喉に突っ込まれかき回されるときは、かなりの痛みを感じる。

その点、日本の抗原検査は、唾を2~3cc吐き出して容器に貯めるだけなので、簡単で、30分以内に結果が分かる。PCR検査の場合、遺伝子を培養し増幅する必要があるので結果が出るまで1日はかかる。もともとPCR検査自体、「偽陽性」といったあやふや結果が出やすいだけでなく、韓国製のPCR検査キットは不良品が多いことで知られ、信頼性は低く、その検査に全面的に頼ることは危険と言われてきた。韓国系女性を妻に持つアメリカ・メリーランド州知事はトランプ大統領の反対を押し切って、韓国製検査キットを大量に輸入したが、不良品が多発して米食品医薬品局の承認が得られず、ほとんど使い物にならず廃棄されたといわれる。

しかし、それにしても、自分の国の感染急拡大については棚に上げて何も言わずに、隣りの国の感染者の急減についてイチャモンをつけるというのは、余計なお世話、を通り過ぎて、いい迷惑だ。日本の感染者が急減した理由を詮索するより、ワクチン接種者が80%を超えようとしているのに、韓国で感染者と死者が急増している理由こそ、真剣に探ることが先ではないのか。

感染者数の推移をグラフで見ると、日本をはじめ欧米では、感染が拡大したあとに終息するという感染の波、あるいは山が顕著に見られるのに対し、不思議なのは、韓国の場合、ことしの初めから感染が拡大する9月までは、ずっと200人から400人の間を行ったり来たりし、感染が拡大した9月以降も2000人から4000人の間を行ったり来たりして、いずれのときもグラフの線がずっと横ばいになっていることだ。

インフルエンザなど過去のさまざまなウイルスの流行状況を見れば、感染拡大のピークを経て終息するまで山が表れるのが普通で、むしろ韓国のようにずっと同じように横這いというほうが、ウイルスの性格からみてむしろ異常ではないのか。毎日毎日、同じような規模で感染者が定量的に発生し続けるというほうが、説明がつかないはずだ。陰謀論的に言えば、何のためかは分からないが、何らかの人工的な集計操作が行われている可能性も考えられる。

<日本は無症状者を放置して自然感染を許し集団免疫を確保した?>

日本で感染者が急減した理由について、韓国で最近、議論されている詮索の一つに、日本では無症状や軽症の感染者についてはPCR検査を行わず、むしろ積極的に放置したために自然感染で集団免疫が獲得されたという説だ。あるいは、PCR検査のためには2万円の検査料を支払わなければならないため、無症状者および軽症者の場合は、この検査料を惜しんでPCR検査を受けず、そのままにした。そのために、陽性が判明した人の10倍に当たる人が実際には感染していたと韓国の専門家は推定しているというのだ。

朝鮮日報11/27「韓国の接種率は日本とほぼ同じなのに感染者数は36倍…専門家が挙げる4つの理由とは」

自然感染による集団免疫の獲得という説は、京都大学医学部の上久保靖彦特定教授が去年の前半の段階ですでに主張していたもので、その当時は、欧米に比べて日本で感染者や死者が少ない理由として「ファクターX」を説明するなかで展開された議論だった。上久保教授が取り上げたのは、武漢ウイルスが本格的に流入する以前に日本にもたらされた初期のウイルス株のことで、その後、ことしになって置き換わったデルタ株について、この理論が適用されるかは定かではない。

そもそも、いくら無症状だといっても自宅隔離中の感染者が2,3日で急激に症状が悪化し死亡するケースも発生していたことはニュースで伝えられていたし、感染リスクが高い接触や行動について自覚があった場合や職場など周囲で感染者が出た場合は、検査を受けるのは当たり前だった。無症状や軽症の人がすべてPCR検査を受けなかったなど、あり得ない。保健所や医師に相談すれば無料で検査は受けられるので、金を惜しんで検査を受けないなどということもあり得ない。つまり、こうした議論も「自分たちのK防疫は世界一流で、日本は遅れている」ということを言いたいがための議論なのではないか。

そもそも多くのデータを所有し、治療の現場に立っている日本の研究者や専門家が、自然感染だの集団免疫などと何も言っていないのに、正確で十分なデータを持たない韓国の専門家がどうして確定的なことを言えるのか。一方で、日本の感染激減という現象を見て、PCR検査を徹底させ無症状の感染者を含めて隔離を徹底してきた「K防疫」は間違いで、「いまからでも動線追跡する疫学調査と無症状者・軽症患者を対象にしたPCR検査を中止すべき」だと主張する学者も表れた。

中央日報11/25「韓国慶北医大教授「日本の感染者数急減、K防疫の致命的誤り見せる」

デルタ株に加えてオミクロン株まで出現した状況のなかで、いまさらPCR検査を全部中止することなど可能なのだろうか?

<独自のワクチン開発も「ワクチンハブ」も何も実現していない>

ところで文在寅大統領をはじめ韓国の保健当局は、ワクチン接種が国民の80%まで進んだなかで、自然感染だろうが何だろうが、感染が拡大することはいっこうに気にならないようだ。文大統領はKBSの公開番組「国民との対話」(11月21日放送)のなかで、感染者が急増している現状について「感染者増加はウィズコロナに踏み切る前に5000人、1万人にまで増加する予想もしていた。(しかし、今はそのレベルには達していない)。ブースター接種など早く進められるように準備しているから状況は改善されるはずだ」と楽観的だった。

文大統領は、今年6月のG7サミットで各国の首脳から韓国の感染者が少ないことを賞讃されたことで気をよくし、先進的な「K防疫」の成功で韓国は先進国の仲間入りできたと宣言した。しかし、文大統領が「K防疫」を自慢するたびに、そのあと感染者が激増するというパターンを繰り返している。今回も国連総会でK防疫とワクチンハブを自慢して帰国した途端、感染者が2000人台に急増し、「国民の対話」放送直後には4000人台と過去最高を記録している。

そもそも文大統領が「K防疫」や「Kバイオ」だと称して、独自にワクチンや治療薬を開発して世界の「ワクチンハブ」になると宣言し、「ワクチンネットワーク」の中心的役割を担うとしていたにも関わらず、実現したものは何もない。「K防疫」の内実にしても、いまの感染状況を見たら、虚しいだけだ。

そもそも韓国は去年末(2020年12月)まで、ワクチン確保にほとんど関心を注がなかった。K防疫が成功し感染者・死者とも少ない世界の模範国という自負と、自国で独自にワクチンや治療薬を開発できるのでそれを待つ、という姿勢だった。しかし、その後、ワクチンを確保していないことで国民の突き上げを受けたことを契機に、大慌てでワクチン確保に乗り出し、アストラゼネカ製ワクチンを自国での臨床試験はすっ飛ばしてアメリカや日本より先に承認した。高齢者を中心にアストラゼネカ製ワクチンの接種が進んだが、1回目の接種拡大を急ぐ余り、2回目接種のために残すべきワクチンを一時接種に回したために、7月には在庫は底をつき、1回目と2回目の接種を8週間から12週間に伸ばすという対応を取った。これが抗体価が高まらない理由とみられた。さらにアストラゼネカの場合、接種から3か月後には抗体価がファイザーやモデルナの5分の1、7分の1といわれ、効能機関も3,4か月しかないといわれている。ワクチン接種を完了した人が感染する突破(ブレイクスルー)感染が60歳以上では80%に及ぶという現在の韓国の状況が、何よりその証拠だ。

アストラゼネカは、各国の製薬メーカーと契約し、製造を委託している。つまりその製造過程のなかで、何らかの不具合や調整ミスがあれば、その効果に差が出てくる可能性がある。韓国で製造されたアストラゼネカ・ワクチンについて、効果のない単なる「水ワクチン」と噂されているのはそのためである。不思議なことにアストラゼネカは10月になって、韓国とのワクチン製造契約を解除したという。韓国側に何か問題があったことも考えられる。

Youtube韓国ニュース解説11/30「感染者が急減する日本、急増する韓国」


<「ウィズコロナ」を維持しつつ「在宅治療」に踏み出す>

韓国はワクチン接種75%達成したことをめどに11月から「段階的な日常回復=ウィズコロナ」へ移行したが、その後の感染急拡大を受けて、この「段階」をさらに一歩前に進め、第2段階に移行することは断念した。そして、今の第1段階のレベルを維持しながら12月は「特別防疫期間」とすると決定したという。経済を元に戻すという「ウィズコロナ」政策は撤回するわけにいかず、会食や集会などの人数制限の緩和はそのままにするが、政府は「12月1か月間は、不要不急の集まりを自粛し、共同体の安全を脅かす恐れのある集会やデモも控えてほしい」と訴えている。要するに名目的にはウィズコロナを維持しつつ、国民のモラルに期待して自主的な活動自粛を求めるというわけだ。そんなことができるのだろうか。

さらには、驚いたことに、今後、感染者は自宅治療が原則になるという。重症患者の急増による病床のひっ迫を受けて、すべての感染者は在宅治療を基本とし、やむを得ない理由がある場合にのみ入院治療を受けるようにするというのだ。感染者が発生したらすぐに医療機関と連携し、酸素飽和度測定器や体温計、解熱剤など在宅治療キットを提供するという。あれだけ「K防疫」を自慢し、日本の感染対策を嘲笑し、「在宅治療」をさんざんバカにしていたはずなのに、その在宅治療に自ら踏み出さざるを得ないというわけだ。自慢の「K防疫」が完全に失敗したことの証左ではないのか。

外国人客が多かった明洞や仁寺洞では夜間の人通りは閑散としているのに対し、すぐ近くの鐘路三街の屋台や飲み屋はどこも会社員や若い男女で満席だった。冬になり、屋台の四方は透明のビニールシートで囲っているため、内部は料理の湯気や人いきれで熱気がこもり、完全に密閉空間のなかで「密状態」になっている。

来年3月の大統領選挙に向けて与野党公認候補の選挙戦が過熱するなかで、従来のような大規模選挙集会を開催することは無理でも、候補者が行く先々で大勢の支持者たちが集まり、混雑する姿が見られる。こうした人の集まりは、今後はさらに頻度を増し規模も膨れ上がることが予想される。

これまでは厳しく規制されてきたデモや集会も頻繁に見られるようになった。全国民主労働組合総連盟(民主労総)傘下の公共運輸労組は先週土曜日(11月27日)、ソウル市ヨイド(汝矣島)公園周辺で2万人を集結し、最低賃金の引き上げや非正規職の撤廃などを要求して総決起集会を開いた。この集会を警備・監視するために8000人の警官隊も集結し、密集状態となっていた。感染者5000人、重症患者は700人を超え、ソウル市内での重症病床使用率は90%以上だという緊張感はさらさら見られない。

感染が急減している日本と急増している韓国の感染対策の違い、国民の意識の差は明らかであり、いずれもそうなる理由があることは納得するしかない。

(ヨイド公園に設置された臨時PCR検査所)

富士の高嶺から見渡せば

大学で中国語を専攻して以来、半世紀にわたって中国・香港・台湾を見続け、朝鮮半島にも関心を持ち続けてきました。これらの国との関係は過去の歴史を含め、さまざまな虚構と誤解が含まれています。富士の高嶺から、雲海の下、わが日本と周辺の国々を見渡せば、その来し方・行く末は一目瞭然。霊峰富士のごとく毅然、敢然、超然として立てば、視界も全開、隣国を含めて同時代の諸相に深く熱く切り込めるかもしれません。

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