韓国では5年ぶりの政権交代があり、文在寅左派政権から尹錫悦(ユン・ソンニョル)新政権に替わった。政権交代による韓国政治の明らかな変化は、北朝鮮のミサイル発射を「挑発」だと「糾弾」し、直ちに日韓が電話で外相会談を開き対応を協議したことだ。これまで文政権では弾道ミサイルを発射しても北朝鮮の挑発を「挑発」だとはいえず、「糾弾」などしたら、北朝鮮の金与正からどやしつけられ黙り込むのがオチで、とにかく金王朝のご機嫌を損ねることを極端に避けてきた。
対日外交では、これまで北朝鮮のミサイル発射問題を協議するのは、韓国の「朝鮮半島平和交渉本部長」と日本の「アジア大洋州局長」の北朝鮮担当交渉代表でしかなく、外交部長官や駐日大使は日本の外相と直接会うこともままならなかった。それが、今は何か事があれば、朴振(パク・ジン)外交部長官と林芳正外相は直ちに電話で会話できる関係になった。
さらに、政権交代の効果を如実に感じることができたのは、2015年12月の「日韓慰安婦合意」に至る前に、韓国外交部の当局者が慰安婦支援団体「挺対協」の尹美香(ユン・ミヒャン)代表に交渉経過を合意発表の9か月前から4回にわたり説明したことを示す面談記録が公開されたことだ。裁判で面談記録の公開を命じる判決が出されていたにも関わらず、文政権の間は公開されることはなく、政権が替わった途端に公開された。公開された面談記録はその多くが黒塗りで、その部分は尹美香の発言・反応だと思われるが、外交部側が尹美香に何を伝えていたかは、だいたい理解できる。
(韓国外交部が公開した慰安婦合意前の尹美香との交渉記録・・・「李相哲TV」より)
合意発表前日の2015年12月17日の夜7時から9時半まで行われた面談では、外交部の担当者は合意内容について「▶日本政府は責任を痛感する。▶安倍首相が直接、謝罪と反省を表明する。▶日本政府の予算で10億円程度を出資し財団を設立する」などの趣旨の説明をしたと記録されていた。
尹美香はそれまで、10億円を含めて詳しい合意内容は事前には知らされていなかったと主張していたが、それが完全に嘘であることがばれた。こうして外交部から知らされた交渉経過や合意内容について、当事者の「慰安婦」たちにはいっさい知らせることもなかった。今回の面談記録の公表で、尹美香が日韓の外交交渉について、途中経過や最終合意を含めて何を知らされ、慰安婦に対しては何を隠していたかが明らかになったのである。
尹美香は今回の面談記録の公表について、それでも、▶「日韓慰安婦合意」で慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に解決された」こと、▶在韓日本大使館前の少女像問題の解決努力、▶国際社会における相互批判の自制―を約束した合意事項については事前に全く説明がなく、公式発表後に知ったと主張したが、いずれにしても交渉が合意に向かっていることなど交渉経過を慰安婦たちに対して何の説明しなかったのは事実だ。尹代表が外交部から説明があった交渉経過を、そのまま慰安婦たちに知らせていれば、日韓慰安婦合意には「被害者の意見が反映されていなかった」として「被害者中心主義」を掲げる文政権が反発し、合意を実質的に破棄する事態にまではつながらなかったかもしれない。
その尹美香と挺対協や正義連は、「慰安婦問題が解決するためには①覆し得ない明確で公式な謝罪②賠償③真相究明④再発防止措置などが必要だとして、こうした原則でのみ解決が可能ということを両国政府にはっきり伝えた」と主張している。
<聯合ニュース5/18「韓日関係改善に先立ち歴史問題の解決を 韓国市民団体が政府に要求」>
ここでも原則の一つに「真相究明」が掲げられているが、今、正義連が行っている水曜集会で掲げられるプラカードには、慰安婦問題解決の7原則として、▼日本政府が戦争犯罪の事実を認めること、▼真相究明、▼公式謝罪、▼法的賠償、▼責任者,戦犯の処罰、▼歴史教科書への記述と正しい歴史教育、▼追悼碑と資料館の建設、が掲げられ、ここでも「真相究明」を原則の2番目に上げている。
水曜集会は30年前の1992年1月8日、ソウルの日本大使館前で始まり、それ以来、この5月25日で1545回目を迎えたという。その30年の長きにわたる活動のなかで、いまだに「真相究明」を問題解決の2番目の原則に挙げているということは、「慰安婦」の実態や真実はいまだ分かっていないということではないのか。慰安婦問題解決のための市民運動や支援活動は30年かけていったい何をしてきたのか。「慰安婦」問題の真相も定かでないのに、厚かましくも謝罪や賠償を求め、責任者の処罰を求めるとは、いったいどういうことなのか?
「慰安婦」問題の「真相究明」とは、▶日本軍あるいは日本の官憲が、本当に朝鮮人女性を拉致監禁し強制連行したのか?▶12歳の少女を含む朝鮮人女性20万人が本当に強制連行され「慰安婦」にされたのか?▶「慰安婦」たちは本当に自由を奪われて暴行・監禁され、いっさい報酬を受けることなく、まさに「性奴隷」として働かされたのか?▶戦後、「慰安婦」の多くは戦場にそのまま遺棄され、あるいは日本軍によって集団虐殺されたというのは本当か?・・・といった問題の真相を解明することであるはずだ。
「強制連行」も「20万人」も「性奴隷」も、そして「集団虐殺」も戦後から1990年代まで半世紀もあれば、そして真相を解明しようという意思さえあれば、十分な証拠が集められたはずである。1990年代初め、「慰安婦」第1号が名乗り出て以降、30年という時間が経ったのに、「慰安婦」の名誉の回復し賠償金を得るための「真相究明」は何もなされず、たった一人の「慰安婦」も救うことができなかった、ということになる。
韓国の中学生用の歴史教科書には「慰安婦は戦後、日本軍によって集団虐殺された」と書かれているという。集団虐殺が真実であれば、当然、その現場を検証し犠牲者と加害者を特定し、「戦争犯罪」として法廷で裁かなければならないはずだが、韓国政府にはそんな動きはいっさいない。しかし教科書にはっきりと書いてあるのである。自分の国は国民を守るために何の行動も起こさない国だということを生徒たちに教えているようなものだ。それは日本政府にも言える。韓国の教科書に根拠のない「慰安婦」の「拉致監禁」や「集団虐殺」という記述があることに日本政府が抗議したという話は聞いたことがない。
さて、市民運動家から国会議員になった尹美香は、不動産不正問題で所属していた「共に民主党」から離党させられながら無所属でいまだに国会議員を続けているが、詐欺や横領など8つの罪で起訴され裁判を受けている身でもある。「慰安婦」を利用して世界を騙す詐欺を働き、寄付金や補助金を集める「慰安婦ビジネス」で私腹を肥やしたことが判明した今、尹美香が何か言っても誰も信用せず、再び脚光を浴びることはないであろう。
しかし、「慰安婦」という存在をアンタッチャブルな聖域とし、神聖不可侵な高みにまで押し上げたのは尹美香だが、今その役割を引き継ぐ存在になっているのが「自称元慰安婦」の李容洙(イ・ヨンス)氏である。
元「慰安婦」被害者として韓国政府に認定された240人のうち、今も生存しているのは11人だけだが、その中で今も積極的に姿を見せ、唯一活動しているのが李容洙氏93歳である。彼女は、国連や米議会、仏議会でも演説し、トランプ大統領に無理やり抱きついたことでも知られ、韓国では世界的な「女性人権活動家」としてもはや国家英雄あつかいだ。「慰安婦」たちが、独立運動に何か貢献し、韓国の国柄、品格を高めるために何か行動したのか。日本から謝罪を求めるといいながら賠償金を要求しただけで,「国家英雄」とは笑わせる。
昔、「慰安婦」として被害を受けた証拠はどこにあるのか、と問われ、「私という存在が証拠であり、私の証言が第1級の証拠資料だ」と宣(のたま)わった強者(つわもの)のおばあさんがいた。しかし、その元「慰安婦」の「私の証言」こそ、もっとも疑わしく、証拠にならない見本なのである。挺対協が出版した8冊の「慰安婦」の証言集のなかには、はっきりと「日本軍によって強制連行された」と証言しできる人は誰一人としていないという。
なかでも今や「元慰安婦」代表として「女性人権活動家」を自称する李容洙氏こそ、その証言が信用できない最たる例なのである。彼女の過去の発言について数多くの検証がなされているなかで、彼女の「慰安婦」だったことを証明する証言は、発言するごとに証言内容が変わり、今やどれを信用すればいいのか、わからないほどだ。1944年16歳のとき、台湾の新竹に連れて行かれ、それから3年間、慰安所で働かされたと言っているが、戦地ではなかった台湾に日本軍の慰安所がある訳がなく、日本軍が撤退した終戦後も1年ないし2年は台湾の慰安所にいたことになるが、それこそ朝鮮人経営の民間の売春宿であったことの証拠でもある。
<当ブログ2021/01/16「事実認定も証拠調べもない「慰安婦」賠償判決」>
これほど証言の信憑性が疑われる人物でもあるにもかかわらず、韓国を代表する国営通信社聯合ニュースは、新政権発足後の最近、李容洙氏にインタビューし、その証言を大々的に記事にしている。以下は、その一問一答である。(以下引用)
<聯合ニュース記者「新政府は韓日関係改善に意欲を見せているが、日本政府は韓国側が解決策を提示せよという態度だが,どう思う?」
李容洙「日本にICJ国際司法裁判所へ行って是非を問おうと言ったが応じなかった。なのに,誰が誰に向かって生意気に解決策を持ってこいというのか?日本政府が公式に謝罪して解決策を持ってくるべきだ」
記者「韓日関係改善の障害物として過去史問題が指摘される。新政府が過去史の問題を解決せずに韓日関係を改善しようとしたら?」
李「だめだ。公式謝罪が断固なければならない。謝罪なしに関係改善はない。」
記者「日本政府の公式謝罪は具体的にはどのような方法か?」
李「日本の首相が直接、世界中が知れる方法で加害を認めて謝罪すると言う意味だ。」
記者「日本政府が海外に建てられた平和の少女像の撤去へ圧力を掛けているが?」
李「呆れる。生意気な行為だ。日本がおこがましくも他の国が建てた少女像に干渉するのか。私の夢は世界各国に少女像をいっぱい建て、最後に日本の東京の真ん中に少女像を建てることだ。」>(引用終わり)
お分かりいただけるだろうか。聯合ニュースの記者の質問の仕方は、尹錫悦新政権になっても、日韓外交を規定し、「慰安婦」問題の解決の方法を規定するのは「慰安婦」自身で、誰もそれを否定したり侵害したりできないこと。つまり今までと何ら変わりなく、「慰安婦」は聖域であり、尹美香の代りは李容洙氏が果たしていることを,このメディアは伝えたいのである。
実は、このインタビューには背景がある。今回の大統領選挙のさなか、尹錫悦氏はわざわざ大邱を訪れて李容洙氏に会い、「日本から謝罪を引き出す」と口約束したとかで、李容洙氏はそれを言質に早く公式謝罪をさせろ、国連の拷問委員会に訴えろ、ICJに提訴しろと言い募り、「残された時間は少ない」と圧力をかけている。
<聯合ニュース5/17「韓国慰安婦被害者「残された時間少ない」 新大統領に問題解決促す」>
ところで、その大統領選挙で、李容洙氏は尹錫悦氏を支持したと言われているらしいが、それに対する韓国国民の反応が韓国らしくて笑わせる。
以下は、ユーチューバー「キムチわさび」さんの所論の中から引用させていただく。<キムチわさび「あなたは利用されただけです/당신은 그저 '도구'였습니다 - YouTube>
<「ハルモニ(李氏のこと)、前政府であなたがやったことを覚えています。恥知らずです」。「もう気の毒に思えないのはなんでだろう?一生懸命支持していたわけだから尹錫悦に訴えてくださいね」。「前政府があれだけ努力したのにもかかわらず、むしろ助けてくれた人を追いやっといて・・・尹錫悦は親日派なんですよ、ハルモニ」。「ハルモニ、あなたのような人たちが尹錫悦を選びました。醜いよ(추하다=不潔で下品だ)」>
「可哀想なおばあさん」と同情を一身に集めていた「慰安婦」が、文在寅を支持せず、尹錫悦を支持したというだけで、突然、可哀想な人ではなくなり、どうでもいい只の人になってしまう。「これが反日を叫ぶ人々の「本性」だ」とキムチわさび氏はいう。「彼らにとって本当に被害を受けたかどうかは重要ではなく、その人に利用価値があるかどうかが重要なのだ」という。つまり人をただ道具としてみている。李容洙氏は、正義連や尹美香と対立し、選挙運動中に尹錫悦候補と会って支持を表明したことで、正義連からも民主党からも邪魔になった人物だった。「反日に左派も右派もない。文在寅が嫌いだから尹錫悦に投票という人も多い。大多数の韓国人はそもそも「真実」なんかには関心が無い。韓国人の大半は、おそらく挺対協が出版した慰安婦達の証言集を読んでいない。証言集を読んでこの問題について深く考えてみていたなら、今日の事態にはなっていなかったはずだ」とキムチわさび氏はいう。
「慰安婦」問題の本質は日本ではない。問題は韓国人自身だ。自分で真実が何であるかを調べようともせず、教科書に書いてあることや、マスコミや政府が伝えることを鵜呑みにし、「慰安婦」や「慰安婦」団体が言うことは神聖にして侵すべからず、だとして、まるで宗教のように崇めたてまつり、そうする自分の姿に何の疑問も抱かない、韓国人の麻痺した感覚にこそ問題がある。そして人を単なる道具としてしか見ず、利用対象でなくなったらいとも簡単に捨て去ることができる。わずか100年ちょっと前は、人々の大半は名前も持たず、学校にもいけず,文字を学ぶことも許されない奴隷身分だった。
そんな普通でない国の人々が、今や世界10大先進国の国民として世界経済を牽引していると自負し、偉大なK-POPやドラマを生み出した世界に冠たる優秀文化を背景にもつ国民として、コロナ後の世界に縦横に進出し、席巻しようとしているのである。ホラー映画のようで寒気がしてきそうだ。
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