韓国の民主主義は大丈夫か?国会が犯罪者集団の避難先となる日

韓国の総選挙が4月10日に迫っている。

ことしは、台湾、ロシア、米国など世界の耳目を集める選挙が目白押しだが、韓国の選挙を見ていると、われわれ一般が抱く「民主主義」の常識は当てはまらないような気がする。それこそ、「民主主義」の危うさという側面が見えてきたり、「選挙」という制度の胡散臭さやごまかし、そこで示される民意への不信といったものを感じてしまったりするのは、なぜだろうか?

OS(基本ソフト)が壊れた韓国政治の「風土病」!?

Youtubeチャンネル「李相哲TV」(2024.3.17)で、龍谷大学教授の李相哲氏は「いま韓国で行われている総選挙では、犯罪者が跋扈してやりたい放題だ」とし、なかでも、日本では「タマネギ男」として知られる曹国(チョグク)元法務部長官が、2審で懲役2年の実刑判決を受けているにも関わらず、「祖国(チョグク)革新党」(「祖国」と「曹国」は韓国語では同じ発音)という新党を立ち上げたが、そこから出馬する候補者の顔ぶれを見れば、その実態は「犯罪者逃避党」ともいうべきだ、と批判している。

李相哲TVにコメンテーターとして出演した北朝鮮問題専門家の朴斗鎮氏は、曹国氏の新党にについて、「韓国が持っている政治風土病ともいうべき「韓国病」の現われ」だという。韓国の左派系の人々は、尹錫悦政権に対する批判票を、最大野党「共に民主党」に結集しようとしたが、党首の李在明氏のやり方があまりに酷いので、たまたま出てきた曹国氏の政党に支持を振り向けたに過ぎないとみる。そして、犯罪者が選挙に出るという、常識では考えられない曹国氏の破廉恥な行動は「コンピュータでいったらOS(基本ソフト)が壊れて作動しない、つまり人間としての基本が破壊されているとしか考えられない」と辛辣に批評している。

「李相哲TV」(2024.3.17)[朴斗鎮×李相哲]韓国「韓国病」再発、犯罪者逃避党支持率上昇中、文在寅ら国家統計も捏造、李在明はいつ刑務所?

理解不能な韓国「比例選挙」制度

ところで、「韓国の民主主義が危うい」という意味は、4月に実施される韓国の総選挙の仕組みが、国会で絶対多数派を占める最大野党「共に民主党」の党首・李在明(イ・ジェミョン)氏に一任され、2月初めに「準連動型比例代表制」という結論に落ち着いたが、なぜそう決まったのか、誰もその理屈が理解できないことにある。

毎日経済2月6日「準連動型比例代表制」党方針採択 李在明「快く一緒にいてほしい」と訴える

前回2020年の総選挙は、「小選挙区・比例選挙区併用制」と「連動型比例代表制」という仕組みで行われた。これは、国会の議員定数300のうち小選挙区選出は253、残り47議席は比例選出枠とし、このうち小選挙区での各政党の得票数に応じた「連動型比例代表制」で30議席、政党名による比例選挙での得票率が3%以上あれば1議席を獲得するなど「非連動型比例代表制」で17議席を配分した。その結果、比例選挙に候補者を登録した政党だけで、泡沫候補から個人政党まで含めて35団体に及び、比例選挙の投票用紙は長さが48センチにも及んだと言われる。

しかし、この時の選挙では、既存の大政党は比例区に特化した衛星政党をつくり、そこで当選した議員は選挙後に本体の政党に合流するという方法をとった。その結果、「共に民主党」と、その衛星政党「共に市民党」・「開かれた民主党」は、あわせて180議席を占めて圧勝した。結局、比例選挙で議席を獲得した中小政党は正義党の5議席だけで、他は二大政党の衛星政党4党が分け合う形となった。

(前回の総選挙に関しては、当ブログの過去記事2020年4月27日の「韓国は北朝鮮の同胞のことを心配していないのか?」を参照していただきたい)


比例政党の中に極左・親北集団を取り込むという恐ろしさ

小選挙区・比例選挙区併用制という仕組みは、本来は中小政党にもチャンスを与え、韓国に第三の政治勢力を作ろうという狙いがあったのだが、実際の選挙結果は、まったく中小政党には不利で、第三勢力を作るなどとうてい無理なことがわかった。そのため衛星政党を禁止することなど、改めて選挙制度見直しへの要求が高まる結果となった。

しかし、国会での決定権を握る最大野党の党首に一任された選挙制度改革の結論は、「準連動型比例代表制」と呼ばれ、従来の制度とまったく代り映えしないもので、何がどう変わったのか、だれも分からないという内容だった。李在明氏の説明によると、新しい制度の下では「統合型比例政党」をつくり、そこに第三党の候補者も取り込んで連合する」のだとし、「衛星政党は否定しないが、前回4年前の衛星政党とは性格が違う」のだという。つまりは、衛星比例政党を作るのは従来どおりで、既存の大政党に有利なように、そこに小規模勢力を取り込み、自分たちの勢力の温存を図るという狙い、のようでもある。

そうしたなか、実際に選挙準備が進み、各政党・各選挙区の候補者や比例代表選挙の名簿順位が出揃う過程で、明らかになってきたのは、最大野党の「共に民主党」が作る新しい比例政党には過激な反米主義者や親北朝鮮勢力が集結している事実や、新しく結成された第三勢力の新党は、それこそ「犯罪者集団」といってもいい実態だった。

韓国の主要日刊紙「朝鮮日報」は、その社説で次のように警告している。

「共に民主党が、総選挙用の比例代表衛星政党を作って進歩党・新進歩連合・連合政治市民会議の候補10人を当選安定圏に置くこととした。進歩党・新進歩連合にそれぞれ3議席、連合政治市民会議に4議席を保障してやることとしたのだ。これらはほとんどが反米・親北勢力だ。」

「(共に)民主党は、(第)3勢力が推薦する比例代表らを何らの検証もなしに受け入れるとの立場を取っている。韓国の国体を否定し国の基本を揺さぶる人々が韓国の国会議員になれる道を、開いてやっているのだ。」

朝鮮日報2月22日付社説「『非・李在明』を追い出して『反・大韓民国』勢力に国政入りを保障するだなんて」

さらに『毎日経済新聞』も2月22日付社説で次のように訴える。

「進歩党のルーツは「李石基(イ·ソッキ)内乱陰謀事件」を契機に、2014年憲法裁判所から解散命令を受けた統合進歩党だ。 進歩党の綱領は「民衆主権時代」「韓米関係解体」など北朝鮮憲法にそっくりだ。 大韓民国の安保と経済の二大軸である韓米同盟と市場経済を否定しているのだ。 進歩党幹部らはスパイ団事件にも関わっている。 連合政治市民会議は韓米FTA反対、狂牛病集会、天安艦怪談散布などを主導してきた反米·親北朝鮮急進団体だ。 彼らが衛星政党を通じて国会に入城することは危険千万なことに違いない。」


選挙制度改革を一任された野党党首の胡散臭さ

これらの新聞社説を読むだけで、総選挙後の韓国国会の勢力図がどうなるか、空恐ろしさを感じる。なぜなら、ここでいう「進歩党・新進歩連合・連合政治市民会議」などの極左政党の候補者が国会で議席を占めることになれば、彼らは国政調査権を使って国家機密にアクセスすることができ、国会の国防委員会など軍事機密を扱う場でも答弁や資料を要求することができるようになり、そうした情報が北朝鮮に筒抜けになる恐れがあるからだ。

そもそも今回の選挙制度を、最大野党の党首として一任された李在明氏こそ、北朝鮮との関係を含めて数多くの疑惑で捜査を受け、現在、起訴されている公職選挙法違反などの4つの公判に、毎週出席しなければならないとされる人物である。その李在明氏は前回の大統領選挙に出馬し、わずか0.73ポイントという僅差で敗れ、その後、国会議員の補欠選挙で当選し、党代表に就任した。今回の総選挙では、党代表として出馬する候補者の公認権を手にし、自分に批判的な人物は現職でも後任から外すと同時に、自分にすり寄ってゴマを擂る擦る人物は積極的に公認するという、あからさまな党の私物化を図っている。

朝鮮日報3月19日付コラム「韓国にはびこる寄生虫政治」


「犯罪者逃避党」となった曹国新党の立ち上げ

さらに、曹国氏が立ち上げた新党「祖国革新党」の問題点について、新聞の社説を見てみよう。

『毎日経済新聞』の3月18日付社説では、次のように述べている。

「祖国(チョグク)革新党が18日発表した総選挙比例代表候補名簿を見れば、名簿の前半には捜査·裁判を受ける者が大挙配置された。曹国(チョ·グク)前法務部長官は子供の入試不正と監察もみ消しの罪で、二審で懲役2年の判決を受けても、厚かましく自らを比例候補2位につけた。 しかし、最高裁で2審判決が確定した瞬間、彼は議員職を失う。 国民のための政治的召命は期待し難く、少しの間でも「私的恨みを晴らす」ことに充当させられるだけだ。 彼が『非司法的名誉回復』というおかしな言葉で、自分の政党を急造し、『犯罪人逃避先』として活用しているという指摘が出ているのも無理はない。」

さらに、朝鮮日報3月20日付社説「当選有力の比例名簿上位10人中5人は懲役犯・被告人の政党」では、次のように指摘する。

「曺国代表や黄雲夏(ファン・ユンハ)院内代表(無免許・飲酒運転で3回逮捕・起訴)などは、国会議員に当選しても大法院で有罪が確定したら議員職を失う。この場合、現行法に基づき、祖国革新党内で順番に議席を承継する。犯罪者らが、国会を逃避先にするだけでは足りず、議席まで譲ってやるのだ。比例衛星政党制度で国会が犯罪逃避先と化している」。

ところが、世論調査会社「韓国ギャラップ」が3月15日に発表した世論調査結果によると、総選挙の比例代表政党の投票意向調査で、与党系の「国民の未来」(国民の力の比例衛星政党)が34%、野党系の「共に民主連合」(共に民主党、進歩党、新進歩連合などによる比例衛星政党)が24%なのに対し、新しく結成されたばかりの曹国新党は、前の週より4ポイントも躍進して19%と、第3位に躍り出たという。

先に紹介した朴斗鎮氏の指摘を待つまでもなく、「韓国病」という政治風土病に犯された韓国の有権者の投票行動には、世界の民主主義国の一般常識から見て、疑問符が突きつけられている。願わくは、韓国の有権者には、世界の人々が理解し、互いに通じあうことができる一般常識を、投票結果で示して欲しい。

(韓国の選挙に関しては以下の過去ブログも参考にしていただきたい)

2022.02.14  「韓国が民主主義国とは言えないこれだけの理由

2022.03.16 「韓国大統領選、戦い済んで「分断“憎悪”国家」への転落」


富士の高嶺から見渡せば

大学で中国語を専攻して以来、半世紀にわたって中国・香港・台湾を見続け、朝鮮半島にも関心を持ち続けてきました。これらの国との関係は過去の歴史を含め、さまざまな虚構と誤解が含まれています。富士の高嶺から、雲海の下、わが日本と周辺の国々を見渡せば、その来し方・行く末は一目瞭然。霊峰富士のごとく毅然、敢然、超然として立てば、視界も全開、隣国を含めて同時代の諸相に深く熱く切り込めるかもしれません。

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