<資料>韓悳洙氏大統領出馬宣言の全訳 「政治を正常化しろ、という国民の声に押されて」

(韓国で6月3日に行われる大統領選挙に向けて、これまで大統領権限代行を務めてきた韓悳洙(ハン・ドクス)氏が5月1日、国務総理を辞任し、翌2日に記者会見を行って正式に無所属での立候補を宣言した。この中で、就任2年目までに憲法を改正し、大統領と国会が互いに牽制と均衡の中で権力を分け合う政治体制を作り、国民統合の政治を実現すると宣言し、自らは就任3年目で大統領を辞任するとした。この出馬宣言を通して、いま韓国が抱える政治と司法の混乱、国民の間で進む分断状況など、韓国が抱える課題、解決を要する課題が何なのか、そして韓悳洙氏が持つ危機感などがよく理解できる。以下は、その韓悳洙(ハン・ドクス)氏による出馬宣言全文の日本語訳であり、資料としてこのブログに掲載する。)

政治闘争はもはや危険なレベルに達した

尊敬する国民の皆さん、私は今日、第21代大韓民国大統領選挙への出馬を国民の皆様にお伝えするために、この場に立ちました。今、世界は通商秩序が急変し、国際秩序が揺れ動いています。どんな国も未来を予測するのが難しい大変革の時期です。それに加えて我が国は国内的に大きな混乱に陥っています。葛藤と分裂が共同体の基盤を揺さぶっています。国と国民の未来ではなく、個人と陣営の利益を追う政治闘争は危険なレベルに達しています。政治が変わらなければ、民生も経済も外交も改革もできません。私たちが苦労して築いた国が、無責任な政争で足元から崩れようとしているのに、これを放置してはいけません。

私は誇らしい大韓民国国民の公僕として、経済発展の第一線で一生を生きてきました。国益の最前線である通商外交まで政争の材料にする現実は、私の良心と常識では到底納得できるものではありません。

私は私が愛する大韓民国の未来のために、私たちみんなのために、私にできることを探すと心に決めました。私は今回の大統領選挙を通じて、国民の選択を受けるように全力を尽くします。

就任2年で改憲を完成させる

国民の皆さん、私は三つのことを約束します

一つ目は、直ちに改憲します。任期初日に、大統領直属の改憲支援機構を作り、改憲の成功に総力を傾けます。初年度に改憲案を用意し、2年目に改憲を完了し、3年目に新しい憲法に基づき総選挙と大統領選挙を実施した後、直ちに職を退きます。

改憲の具体的な内容は、国会と国民が激しく議論して決定されますが、私は牽制と均衡、つまり分権という核心的方向だけを提示します。

我々の憲法は1987年の改正後、38年になりました。急変する時代の流れと国民の意思を反映するには大きく不足しています。今回、我々が改憲に成功できなければ、二度と今のようなチャンスは訪れないでしょう。誰が政権を握っても 今と大きく変わらない不幸が繰り返されるだけです。

これまで、多くの政権と多くの政治家が改憲を約束しましたが、自分の番が来ると、その時の状況と利害関係によって、こっそりと態度を変えました。権力を目標に生きてきた政治家は、改憲に着手することも改憲を完遂することもできません。公職の道を歩いてきた私が、迅速な改憲で韓国の憲政秩序を新しい礎の上に置きます。

大統領と国会が牽制と均衡の中で力を分け合うこと、政治の司法化と司法の政治化が共に消えるようにすること、協治が制度化され、行政が効率化され、韓国政治と韓国の政府が真に国利民福(国益と国民の福祉)に貢献すること、これが私が考える正しい改憲であり、私たちが追求すべき核心目標であり方向です。

私は国務総理在任中、ほぼ毎日、ジャーナリストと政治家、企業家と専門家、その他数えきれないほどの各界各層の人士に会って、お互いに違う意見に耳を傾けました 毎日一生懸命に働いている国民の皆様を全国各地に探して学びました。この程度では足りません。これからはもっとたくさんの人にお会いします。

韓国経済がなすべき成長について、韓国国民が享受すべき幸せについて、韓国社会が求めるべき安定について、私たちが作らなければならない新しい憲法と、私たちが進むべき新しい時代について、絶えず人々と会い、尋ね、耳を傾けます。国民の目で、国民の意志で、必ず改憲を成功させます。

新しい憲法に基づき、大韓民国の次の時代を切り開く踏み石になります。どうか、国民の皆様が、私の踏み石を踏んで、極端の時代から合理の時代へ、党派の時代から協治の時代へ、韓国の国格と時代に合った新しい大韓民国へと前に進むことを心から願います。

通商交渉での長年の経験と実績を強調

第二に、通商解決を約束します。米国発の関税の嵐は全世界すべての国の最も緊急な通商課題です。グローバル貿易秩序がひっくり返っています。私は4月8日に米国のトランプ大統領と電話会談し、韓米同盟の堅固な基盤の上に、通商解決策を積極的に模索することで合意しました。先週ワシントンで開かれた韓米2プラス2の高官級会談で非常に意味のある成果がありました。解決の速度が一段と速まると期待します。

私は韓国初の通商交渉本部長を務めました 経済副総理、国務総理に続き、駐米大使を務め、数多くの通商交渉を成功裏に導いてきました。この仕事を一番長くやり、最も上手にやれた人間だという自信があります。米国政府はもちろん各界の専門家たちと活発にコミュニケーションをしています。今回の通商懸案も必ず解決してみせます。

第三に、国民統合と弱者・国民と共に歩むことを約束いたします。統合こそが共生です。南北に分かれたこと自体が嘆かわしいことなのに、左と右に、東と西に、今は男性と女性で、中高年と青年で、ずっと分かれていていいのですか?

保守だけで産業化を成し遂げたわけではなく、進歩だけが民主化を成し遂げたわけでもありません。私たちが成し遂げたどんなことも、どれか一つの勢力だけの功績ではありません。一日一日、一生懸命生きてきた韓国国民みんなの功績であり、したがってその果実は、みんなに還元されるべきです。いい仕事、快適な住宅、便利な交通、質の高い医療、細やかな育児支援、心強い老後保障、こういうことを一番上手くできる方々を探して、最高の内閣、働く内閣を構成して、その方々が責任を持って実質的な成果を上げるよう、強く促していきます。社会のあらゆる分野で、国民統合と弱者と共に歩む社会が実現できるように渾身の力を尽くします。

政治を正常化しろという国民の声に押されての出馬

尊敬する国民の皆さん、これまで多くの皆さんから、私は大統領選出馬を勧められ、懇々と訴えかけられました。「政治を正常化しろ、どうかもう争うのをやめよ、分断せず統合しろ、経済を立て直せ、民生を支えろ」などで、一言でいえば、「政治の心配をせずに、安心して暮らせるようにしてほしい」ということでした。

肝に銘じます。改憲をしっかりと執拗に推進します。民生をしっかりと執拗に支えます。通商交渉は私に任せてください。一つ一つ、きちんとやります。

新しい政府は韓悳洙政府ではありません。左右に分かれる代わりに、ただ前に進みたいすべての人の政府、すなわち皆さんの政府です。私は勝てる経済大統領であり、左でも右でもなく、前に進む人であり、約束を守った後、直ちに大統領職を退く人です。

私は明日から、国民が生まれ、育ち、白髪になるまで、人生の段階ごとに国の政策がどのように変わるべきか、具体的な代案を一つ一つお伝えする考えです。

野党民主党の代表を含め、政界と韓国国民が提案する良い政策があれば、それもまた何の固定観念もなく受け入れ、効率的に実行します。

国民の皆さん、私は私がすべてのことをできるとは思いません。そうであってはいけないとも思います。これまで多くの大統領をお迎えして働きながら、私は多くのことを感じました。大統領は孤独な席であり、責任が重い地位です。とてつもなく多くの仕事ができる席であると同時に、自分一人でできることはほとんどない場所でもあります。

私は哲学と信念を持って国政を運営しますが、それぞれの省庁はその省庁を担当する人に任せ、大統領は大統領がすべきことに専念します。いくら能力が秀でた人でも、世の中のすべてを、一人で見る万機親覧は不可能であり、それが可能であってはいけません。多くの人の知恵は、一人の知恵より、いつも深くて広いからです。私に容赦なく苦言を呈する方々、大統領選挙の過程で競争する方々、一人一人を三顧の礼で迎え、挙国統合内閣に招きます。次官級以下の人事は、徹底的に、その方と一緒に働く副総理と長官が責任を持って抜擢するようにします。

経済発展という奇跡をここで終わらせてはならない

国民の皆さんは、もしかすると私に、国務総理としてできなかったことを、大統領になったら、急にどうやってやり遂げられるというのか、お尋ねになるかもしれません。

国務総理だからできなかったことを、大統領の力で必ずやり遂げます。

その言葉をどうやって信じろ、というのかと尋ねる皆さんには、私の話じゃなく、私が生きてきた人生を見てほしいと申し上げたい。誰の人生にも、その人にとって最も重要な質問があります。私の場合、その質問は、私という平凡な人間が国のために何ができるか、でした。

私は一人当たりの国民所得が100ドルに満たなかった時代に生まれ、1千ドル、1万ドル時代、2万ドル、3万ドルの時代を、韓国国民の働き手として生きました。努力型で、けっして天才だったことはなく、夜遅くまで私に任された仕事に没頭し、国の成長に力を添えることに、何よりもやりがいがありました。

我が国が強くなり、豊かになること、世界の中で尊敬され愛されるようになること、その過程を見守って、寄与することが、今も、これからも私の人生であり、夢です。

国民の皆さん、私の理念はただ一つ、ここで大韓民国の奇跡が終わってはいけない、私たちは絶えず前に進まなければならない、ということ、これだけです。若者たちが私を踏み石として、思う存分、私を越えて、世界へ、未来へ、もっと明るい時代に進むことを願っています。ただ国利民福のために働き、また働き続けます。ありがとうございます。


Youtubeなぜなぜ韓国「保守で一番支持率が高い韓悳洙(ハン•ドクス)、大統領選挙出馬!」の会見映像での発言を、ハングルで文字起こしし、それを自動翻訳。「なぜなぜ韓国」の日本語字幕を参考に修正を加えた。>


富士の高嶺から見渡せば

大学で中国語を専攻して以来、半世紀にわたって中国・香港・台湾を見続け、朝鮮半島にも関心を持ち続けてきました。これらの国との関係は過去の歴史を含め、さまざまな虚構と誤解が含まれています。富士の高嶺から、雲海の下、わが日本と周辺の国々を見渡せば、その来し方・行く末は一目瞭然。霊峰富士のごとく毅然、敢然、超然として立てば、視界も全開、隣国を含めて同時代の諸相に深く熱く切り込めるかもしれません。

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