韓国国民の大半が“司法の危機”に気付いていないという恐ろしさ

最高裁長官を国会に喚問しようとした暴挙

日本人の普通の感覚として、理解に苦しむのは、韓国人が司法制度を軽視し、まったく信頼を置いていないこと、それに裁判官や検事を尊敬せず、むしろ憎悪や軽蔑の対象にしていることだ。このような国民感情の中で、司法がその役割を十分に果たし、機能するはずがない、というのも頷(うなず)ける。

大統領選挙の最中にもかかわらず、韓国の国会は14日、日本の最高裁長官に当たる大法院院長を「内乱に加担した」「大統領選挙に介入した」などの理由で弾劾するとして聴聞会を開いた。しかし、国会に召喚された曺喜大(チョ・ヒデ)大法院長と大法院(最高裁)の判事全員は出席を拒否し、法院行政処長を務める千大燁(チョン・デヨプ)大法官(最高裁判事に相当)だけが出席した。

日本の国会が最高裁長官を召喚し、国会で審問を行うなどということは想像すらできず、あってもならないことだ。実は韓国でも大法院長に対する国会聴聞会は憲政史上初めてで、つまりそれだけ異常な出来事だったということができる。さらに国会で3分の2近くを占める「共に民主党」など左派勢力は、国会が検事を指名して特定の捜査を担当させる特別検察官設置法案を国会に上程し、大法院長に対する捜査を開始するとしている。

なぜ、最高裁長官が弾劾や捜査の対象となったのかと言えば、野党候補として今回の大統領選に出馬している李在明(イ・ジェミョン)の公職選挙法違反事件(前回2022年大統領選挙運動で行った虚偽の発言行為が違法とされた事件)の裁判で、控訴審のソウル高等裁判所は一審の有罪判決を破棄し逆転無罪の判決を下した。(詳しくは<当ブログ3月27日「韓国はやはりまともに付き合うことはできない国だという証明」>を参照)

これに対して、上告審の大法院(最高裁)は5月1日、再び有罪と認定して高裁へ差し戻し、審理のやり直しを命じた。二審の高裁の逆転無罪判決(3月26日)から、わずか1ヶ月と5日で、最高裁がスピード審理を行って有罪差し戻し判決を出したことについて、野党「共に民主党」は、大統領候補に名乗りをあげた李在明代表を有罪にして被選挙権を剥奪するための司法クーデター、司法による不当な選挙介入だと見なした。

恐ろしい独裁国家がもう一つ東アジアに誕生!

大法院長に対する聴聞会開催や特別検察官による捜査という、これまで一度もなかったことが、いとも簡単に出来るのは、「共に民主党」や「祖国革新党」など左派勢力が立法府の国会で300議席中192議席を占め、圧倒的な勢力を誇るからだ。大法院長に対する聴聞会や特別検察官による捜査を強行するのは、前科4犯で、今も8つの事件と12の容疑で、5つの裁判を受けている李在明という存在があるからだ。彼を守るためになら「共に民主党」は何でもやる。三権分立や議会民主主義の原則を破壊しているという非難を受けても、そんなことは屁でもない、糞くらえ、なのだ。もはや「共に民主党」は李在明一人を守るための「李在明守護党」、李在明になら何でも付き従う「李在明独裁党」になっている。

その証拠に、民主党は14日、国会法制司法委員会で公職選挙法改正案を通過させ、虚偽事実公表罪の構成要件の一部を削除し、今後は虚偽の発言をしても罪に問われないことにした。この改正案が発効すれば現在、李在明が現在、受けている高裁差戻しの公職選挙法違反事件は、処罰を規定した条項自体が消え、裁判は自動消滅することになる。また同じ法制司法委員会は7日、大統領に当選した被告人の刑事裁判公判手続きを任期中に停止するとした刑事訴訟法改正案も通過させた。これにより李在明が大統領に当選したら、すべての裁判を停止することになる。

さらに、「共に民主党」は、大法院(最高裁)の判事の定員を、現行の14人から最大100人に拡大する内容を盛り込んだ裁判所組織法の改正案と、最高裁に当たる大法院の判決に対して憲法裁判所に訴える憲法訴願を認める「事実上の4審制」を導入するための憲法裁判所法の改正案を、法案審査小委員会に付託した。もはや、やりたい放題も度が過ぎるレベルで、司法を国会と李在明の支配下に完全に置こうとしている。

しかも、李在明が大統領になったら、その巨大与党となる「共に民主党」が発議した法案は、これまでのように大統領による拒否権が発動されることもなく、すべてが李在明と共に民主党の思い通りに立法通過させることが可能になる。反日反米、従北親中の恐ろしい独裁体制が東アジアの一角にもう一つ誕生することを意味する。

          (「議会独裁・司法弾圧」と書かれたプラカードを示す「国民の力」議員)

「司法を李在明の足下にひざまずかせる」という報復政治

保守系「国民の力」の朴俊泰(パク・チュンテ)議員は、14日開かれた大法院長らに対する聴聞会の質疑で次のように述べて、李在明と共に民主党を強烈に非難した。

<「大法院長(最高裁判所長官)を弾劾すると脅迫し、国会に呼び出して聴聞会を開く、そして特別検察法を制定して捜査すると言っている。これは、かつては想像もできないことだった。こうしたことは過去に一度もなかったからだ。では、なぜ一度もなかったことが今起きているのか?それは、民主党が圧倒的多数の議席を持ち、国会を思うままに運営しているからだ。ではなぜ民主党は議会民主主義を放棄したという非難を受けてまで、このように国会を動かしているのか?それは党代表が李在明だからだ。すべては李在明のために起きていることだ。8件の事件、12の容疑、5つの裁判を抱えており、すでに複数の前科を持つ李在明が、自分が刑務所に行かないために大統領になって、その地位を犯罪逃避の手段として利用するために、議会民主主義を破壊し、司法府を脅かす行為に出ているのだ。このように国全体を混乱させ、国会を壊し、今や国家そのものを崩壊させようとしている。民主党のユン・ホジュン議員は現在、(共に民主党の)選対本部長をしているが、かれはこう言った。『法廷の裁判長の小槌(こづち)よりも立法府の国会議長に小槌のほうがはるかに強力であるということを思い知らせてやる』と。これは別の言葉でいうと『司法を李在明の足下にひざまずかせる』という意図だ。」>

なぜなぜ韓国「李在明が大統領になれば、韓国はベネズエラより酷くなる!」参照)

ちなみに法廷や議場でコンコンと打ち鳴らされる木槌は、英語ではGavel(ガベルまたはギャベル)と呼ばれ、裁判長や議長の権限と権利を象徴するものとされる。しかし、韓国のその槌音は、悪徳権力のどす黒い野望の象徴のように聞こえる。

韓国はベネズエラのような強権独裁“後進”国家に転落か!?

さらに朴俊泰議員は同じ聴聞会の質疑で、「共に民主党」が裁判所組織法を改正して大法院の判事の数を現在の15人から一挙に100人まで増やし、その多くを自分たちに同調する左派系判事で独占させようとしていることについても、以下のように痛烈に非難する。

<「(共に民主党は)李在明の妻キム・ヘギョンの裁判(公職選挙法違反・寄付行為)まで延期しろと圧力をかけている。今、共に民主党の中では、「李在明とキム・ヘギョンは憲法の上に君臨する絶対的存在だ」という話まで出ている。

裁判所組織法を改正して大法院判事の数を増やすという法案は、ベネズエラのチャベス政権下(在任1999~2013年)の2004年に最高裁判事の数を20人から32人に増やし、増やした12人全員を自分の息のかかった味方で固めた事例があった。チャベスが亡くなるまで、最高裁判所は4万5000件の判決を出したが、その中に政権に反する判決は一つもなかったという分析・研究結果がある。

民主党はこれを見て、今、大法院判事を増やすという法案を出している。韓国はすでに先進的な制度を整えているにもかかわらず、後進国モデルを追求している。それが今、民主党が作ろうとしている世界だ。李在明が大統領になれば、立法、司法、経済すべてにおいてベネズエラより劣る後進国に向かう可能性が高い。

今回の選挙は金文洙(キム·ムンス、「国民の力」公認候補)を選んで国民に権力を取り戻すか、それとも李在明に全ての権力を集中させるかを選ぶ選挙だ。国民のための善良な大統領を選ぶか、自分のために法律まで変えてしまう最悪の大統領を選ぶのか、その判断をする選挙となる。国民の皆さんが賢明な判断をしてくれると信じている。」>(同上)

「権力があれば無罪」「権力がなければ有罪」という暗黒時代

「国民の力」で判事出身のベテラン女性議員・羅卿媛(ナ・ギョンウォン)議員も14日の記者会見で李在明と共に民主党による司法破壊について、次のように述べている。

<「今、「李在明民主党」による国家システムへの破壊工作、終わりのなき独裁野望が、韓国の法治主義と三権分立の原則自体を崩壊させる危機に直面しています。ご存知のように、すでに検察を「無力化させる」と言って、検察捜査権の完全剥奪を強行し、警察に捜査権を譲り、「公捜処」(高位公職者犯罪捜査処)という無制限の政治捜査機関をつくって、既存の司法システムを崩壊させました。国情院の対共捜査権を剥奪し、スパイ罪の改正には必死で反対し、大韓民国の安保と経済までも危険にさらしています。

そして今、その魔の手が法治主義と民主主義、国民の権利の最後の砦である司法府へと伸びています。曺喜大(チョ·ヒデ)大法院長を揺さぶり、大法官(最高裁判事)を100人まで増やして身内で埋め尽くすという妄想に続いて、今度は裁判官と検事を処罰するというのです。もはやこれは、李在明民主党の「裁判官・検事服従法」、「李在明防弾・司法破壊法」と呼ばれるべきものです。

さらに「法歪曲罪」という前代未聞の罪名を新設しました。この法案は、裁判官や検事が特定の人に不利な判決や捜査をすると、「法の歪曲」というとんでもない罪目を被せて最大懲役10年の刑に処するという、まさに司法府の首に刃を突きつける悪法中の悪法です。誰がその「法の歪曲」を審理するのでしょうか?それで司法府が最後の砦としての役割を果すことができますか。「公正な裁判」と「司法の信頼回復」を掲げてはいますが、実際には李在明に有利な判決を強要し、従わなければ、容赦なく処罰するという露骨な司法支配宣言であり、まさに李在明の「防弾ベスト(チョッキ)」です。

この司法支配は、大韓民国の司法システムを完全に崩壊させます。もはや裁判官や検事は、自分の信念と憲法、法と良心に従って判断するのではなく、巨大野党の顔色ばかりをうかがう政治の下請けに転落することになります。力のない国民は罪があっても権力の側につけば釈放され、罪がなくても権力に逆らえば「法の歪曲」の犠牲になる可能性がある。まさに「有権無罪・無権有罪」の新たな司法壟断(乱用)の時代が始まるのです。」(略)>

「自由か独裁か」、今回の大統領選挙の意味を考える

<「最高裁判事の数を100人まで増やして、民主党よりの人物を大量に任命しようとする「裁判所組織法改正案」、それに最高裁の判決まで憲法訴願の対象にしようとする「憲法裁判所法改正案」は、すべてが最高裁判所に対する卑劣な報復立法テロです。三権分立など、もはや彼らの眼中にはありません。一部の“政治判事”は過去に金明洙(キム·ミョンス)最高裁長官時代に、憲法と法律ではなく、政治で裁き、特定の傾向を持つ裁判官だけを昇進させていた、あの悪しき司法府暗黒期の亡霊を復活させようとしています。そして一部の裁判官たちは、裁判官代表者会議を開いて、最高裁の迅速な判決(高裁差し戻し)を問題視しているようです。選挙法違反事件を2年半も遅延させた時は沈黙していた彼らが、いまさら何を言うのでしょうか。まさに“政治判事”そのものではありませんか。

民主党の立法独裁は、今や司法支配を越えて、大統領職まで手に入れようとしていることに、どうすればいいでしょうか。彼らはすでに違憲政党「統合進歩党」(国家転覆罪で解党処分)の後身である「進歩党」とも手を結びました。これは大韓民国の自由民主主義と憲政秩序を根こそぎ引き抜こうとする露骨な宣戦布告です。李在明一人による独裁、「憲法の上の李在明法」を立てようとしているのです。

私は本当に司法府を破壊する民主党の姿を見て、これ以上、司法まで崩壊すればわれわれ国民はどこに訴えればよいのかと、深刻に考えました。しかも民主党は少し前に国会法制司法委員会で、李在明候補一人を犯罪容疑から救い出すために、「李在明無罪法」とも言える公職選挙法改正案を強行通過させました。(略)選挙のたびにあらゆる嘘で国民を欺いても処罰できないようにするこの法律が、一体誰のための法律なのか?まさしく李在明のための法律でしかありません。これは大韓民国の選挙の公正の根幹を揺るがし、法治主義を真っ向から冒涜するものであり、李在明一人の罪を覆い隠すための史上最大の立法暴挙であり、国家への背信行為です。

今こそ、今回の大統領選挙の意味を再確認すべきです。金文洙候補か李在明候補か、を選ぶ今回の選挙は「自由か独裁か」、「三権分立か一人独裁か」、「清廉か犯罪か」、「真実か虚偽か」を選択するとても重要な選挙です。この未曾有の憲政破壊、憲政蹂躙、法治破壊に対抗して、すべて「自由と法治を守護する勢力」の名の下で、「反李在明」のビッグテント(大連合)を張らなければなりません。」>

なぜなぜ韓国「李在明:判決が怖い?なら法を変えればいい!」参照)

半数が李在明支持という韓国国民を信用できるか?

いかがだろうか?お隣・韓国の司法制度が、いまどのような危機的状況を迎えているか、よくわかったはずだ。司法は国の正義と統治の正統性を体現する根幹中の根幹であり、国民を守る最後の砦でもある。日本のすぐお隣の国が、国の根幹を握る司法制度でこんな危うさを抱えているということは、いつこの国が崩壊してもおかしくないという意味でもある。李在明への支持率が50%を超え、大統領当選、間違いないといわれる状況の中で、韓国有権者のどれほどがその危機に気付いているのだろうか。韓国国民が大統領として李在明を選択したとき、やはりこの国と国民は信用できない、と断じざるをえない。

富士の高嶺から見渡せば

大学で中国語を専攻して以来、半世紀にわたって中国・香港・台湾を見続け、朝鮮半島にも関心を持ち続けてきました。これらの国との関係は過去の歴史を含め、さまざまな虚構と誤解が含まれています。富士の高嶺から、雲海の下、わが日本と周辺の国々を見渡せば、その来し方・行く末は一目瞭然。霊峰富士のごとく毅然、敢然、超然として立てば、視界も全開、隣国を含めて同時代の諸相に深く熱く切り込めるかもしれません。

0コメント

  • 1000 / 1000