韓国国民が作り出した政治状況と韓国国民自身による選択なので、われわれ日本人は「あぁ、そうですか。どうぞご勝手に」と言うしかないが、それにしても、李在明(イ・ジェミョン)という「怪物独裁政治家」を何の疑問もなく国民の大半が選択したという事実は、隣国の国民にもはや信を置くことはできない、ということを改めて示している。そしてその怪物独裁ぶりは就任直後からその本性を現しているではないか。(以下、肩書き・敬称略)
「内戦」を作り出し、利用したのは李在明だった
李在明は、選挙戦最終日の6月2日にも「内戦はまだ終わっておらず、私たちの社会はまだ混乱と不信感の中にある」「投票だけが無慈悲な内戦を止め、希望の新時代を開くことができる」とFacebookで訴えた。しかし、韓国を「内戦」状態を引き込み、尹錫悦大統領に戒厳令という強硬手段を選択させたのは、李在明と「共に民主党」であり、戒厳令事態をいいことに、今度はそれを逆手にとって、「内戦」状態を自分に有利になるよう利用しているのが李在明勢力であることは明らかだ。
<聯合ニュース6月3日「イ・ジェミョン「投票だけが内戦を止め、希望の時代を開く...新しい歴史を一緒に」>
国会で巨大勢力を誇る李在明の党が、次々と閣僚の弾劾を決議して行政機能を麻痺させ、国家予算を野党単独で可決するなど、巨大野党の数の力に頼って国会を思うがままに支配し、立法独裁、選挙独裁の姿を見せなければ、戒厳令もなかったはずだからだ。
李在明は、選挙期間中の遊説では、防弾チョッキを着た上に、演壇の周囲に防弾ガラスをめぐらせ、屈強のSPをこれ見よがしに配置して演説した。ほかの候補はそんな警戒は一切しなかったが、李在明は今も内戦状態が続き、野党指導者の自分の命が狙われていることをあえて強調するために、そうした「演出」の舞台装置が必要だったのである。未だに内戦という緊張状態にあることを、これみよがし大衆に見せつけたのだ。
しかし、李在明が「内戦状態は未だに収束していない」と強調することは、大統領に就任したあと、政府や保守系「国民の力」の中にいる「内戦残存勢力」に対する粛正を今後も厳しく行うという意思表示でもある。毎回の選挙結果にも表れるように、左右の対立だけでなく東西南北の地域別、老若男女の世代別にもはっきりと分断した韓国国民の統合を李在明は約束するが、その李在明自身が、いまだに内戦が終わっていないと強調することは、内戦勢力である旧与党「国民の力」とそれを支持する国民、旧政権を支えた官僚とそれに与する国民を敵にまわし、彼らに対する徹底的な報復と粛正を行うと宣言するに等しい。今回の選挙で、得票率ではまったく同率だった左派勢力と保守勢力の間の国民の分断は、それによって、李在明政権が続くかぎり、激しくなることはあっても収束することは決してないことを意味している。つまり、「内戦状態」を強調すればするほど、国民の間の分断をさらに広げ、固定化・深刻化させることだけは間違いない。
とても民主主義国家とは言えない「政治家殺害」の謀略工作
ところで、李在明が未だに内戦が続き、自分の命が狙われているとする根拠は、左派系紙ハンギョレ新聞が独自に入手したという韓国軍元情報司令官の「黒革の手帖」に、「野党指導者や政界、司法界、報道、民主労総、全教組などの関係者500人を“回収”(収容?)対象とし、その“処理方法”として“射殺”などの言葉があった」という特ダネ記事による。以前のブログにも書いたが、李在明はこの記事をもとに、かつてのカンボジアと同じように韓国が「コリアン・キリングフィールド」になり、「自分の射殺死体は韓国の西の海に密かに捨てられ、カニの餌になる」という言葉を、演説やSNSなどでもしばしば使っている。
<過去ブログ記事2月18日「戒厳令は韓国を『殺戮の大地』にする計画だったと主張する野党代表」>
しかし、ハンギョレ新聞によると、この「黒革の手帖」の書き込み自体は、2023年4月の総選挙以前に書かれたもので、これと一年半以上も離れた去年12月3日の尹大統領による戒厳令とが、直接、関連するという証拠は何も示されていない。この「黒革の手帖」問題は、他の新聞ではまったく報じられていいないし、弾劾裁判の法廷でもまったく言及されなかった。
<ハンギョレ新聞24・12・23「元情報司令官の手帳に「政治家、ジャーナリスト『射殺』」表現=韓国」>
<ハンギョレ新聞25・02・14【独自】殺害暗示「戒厳の黒幕の手帳」に文前大統領など500人…「確認射殺」>
これとは別に、去年12月の戒厳令の際、与野党の政治指導者など15人を拘束する計画があったとされ、メディアなどにもその逮捕予定者リストが出回ったが、これは「共に民主党」の朴善源(パク・ソンウォン)議員らが逮捕者リストをねつ造し、陸軍の特殊作戦司令官や国家情報院次長らを懐柔し、憲法裁判所の弾劾法廷で政治家の逮捕や逮捕者リストがあることを証言しろと仕向けた謀略工作の疑いが強いことが、弾劾裁判の過程で明らかにされている。
<過去ブログ記事02月12日「従北左派野党議員が仕掛けた弾劾・内乱「謀略」フレームが明らかに」>
今どき、政治家など500人を何の正当な理由もなく拘束収容し、密かに抹殺しようという国があるとすれば、中国、北朝鮮と並ぶ独裁専制国家ということであり、韓国では民主主義がまったく機能していないことの証拠でもある。戒厳令は政治家の大量殺害を狙っていたという李在明のこうした主張を信じ、防弾チョッキと防弾ガラスで守られて演説する李在明の姿に何の疑問も感じず、それを熱狂して聞いた国民が半数に上ったという事実こそ、異常であり、韓国の民主主義とはいったい何だったのかと疑問に思わずにはいられない。
早くも「怪物独裁国家」の本性が現れた
かつて文在寅(ムン・ジェイン)政権で国務総理を務め今回の大統領選挙に無所属で出馬した李洛淵(イ・ナギョン)氏は、選挙終盤で金文洙(キム・ムンス)候補への支持を表明し、選挙戦から撤退したが、その李洛淵氏は、李在明を選べば「怪物独裁国家」が出現すると警告していた。しかし、その「怪物独裁」ぶりは、すでに6月3日の就任直後から次々と現実となっている。
李在明の当選が確実となった投票日前後からの、国会での「共に民主党」の動きを見れば分かるが、今回の大統領選挙は、12の罪で5つの裁判を受けている多重犯罪者・李在明を大統領にすることで、それらの裁判を全て無効にし、あるいは法律の条文を変える立法措置を行うことで、李在明をすべて無罪にするというのが最大の目的だった。逆に言えば、李在明にとって大統領になるしか裁判から逃れる手段はなく、大統領になれなければ無期懲役を含めた判決を受け、確実に政治生命を失うことは明らかだった。一般国民から見たら、大統領になったら犯罪は全て無罪となり、犯罪をすべて帳消しにする手段は大統領になること、であり、「法の前に全ての人は平等」という原則が完全に崩れたことになる。
李在明個人のため「防弾立法」、司法が屈した姿
大統領に当選したら刑事裁判を停止するという内容の刑事訴訟法改正案、李在明が公職選挙法違反に問われた「虚偽事実の公表」という行為を違反事項から削除する選挙法改正案が、いずれも5月7日に国会法制司法委員会で法案小委を通過した。委員会で多数を占める「共に民主党」による単独処理だった。李在明の裁判をすべて無効化させるためのいわゆる「防弾立法」、つまり李在明ひとりを守るためだけの立法独裁である。
こうしたなか、李在明の公職選挙法違反事件の最高裁判決で、第2審の無罪判決が破棄され、差し戻された「やり直し控訴審」について、ソウル高等裁判所は6月18日に延期されていた公判期日を、さらに無期延期にすると、9日、突如発表した。ソウル高裁は、「憲法第84条に基づいた判断」だとしているが、憲法第84条の「大統領は、内乱または外患の罪を除き、在任中は刑事訴追を受けない」という条文は、「大統領任期中に行われる起訴にだけ適用される」のか「すでに起訴され係争中の裁判にも適用される」のかは、法曹界でも意見が分かれ、その憲法判断は本来は憲法裁判所が行うべきものであった。しかし、今回、ソウル高裁という下級審の判事が勝手に憲法解釈を行ない、李在明に有利な判断を堂々としたことになる。司法が李在明の前に自らの膝を屈した瞬間だった。
最高裁と憲法裁判所が李在明の最後の砦になる
さらに投票日翌日の6月4日には、大法官(最高裁裁判官に相当)を14人から30人に増やす裁判所組織法改正案を国会の法制司法委員会の小委員会で可決した。李在明は今後、増員される大法官16人全員のほか、大統領在任中に大法官30名のうちの26人を自分の息のかかった人物で埋めることができ、最高裁判所を自派の左派系で支配することができる。
<朝鮮日報6月7日付社説「最高裁判事を14人から30人に増やした後どうするの? 与党・共に民主党は検討もせず処理するつもりか」>
また、任期切れで空白となっている憲法裁判官2名について、李在明は前政権で韓悳洙(ハン・ドクス)総理が指名した人選を撤回し、新たに憲法裁判官候補者としてソウル高裁判事など3人を指名した。そのうちの一人、元判事のイ・スンヨプ弁護士は、李在明の選挙法違反事件や偽証教唆事件、北朝鮮への不法送金事件などの弁護を担当した人物である。誰よりも中立・公正であるべき憲法裁判官に、自分の裁判を担当し、無罪を主張した弁護士を選ぶ、という傲慢にこそ、李在明の怪物独裁ぶりが発揮されている。
<朝鮮日報6月9日付社説「韓国大統領室が憲法裁判事に被告人・李在明の弁護人の指名を検討するだなんて」>
これで最高裁判所も憲法裁判所も左派系の判事が多数を占めることになり、李在明の裁判が1審、2審でどう展開しようが、最高裁や憲法裁判所が李在明にとって最後の砦となり、必ず無罪を勝ち取る態勢ができたことになる。大統領は罪に問われないという、強大な権限を与えることは、法治主義の完全の崩壊であり、それこそ「怪物独裁」へと体制を変えた姿だ。
ところで、李在明が抱える5つの裁判はすべて審理が無期延期になる可能性があるが、ただ一つ、京畿道知事時代の北朝鮮不正送金事件をめぐっては、最高裁が6月5日、李在明の指示で北朝鮮との交渉実務を担当した副知事に対して、不正送金と収賄で懲役7年8ヶ月の有罪とする2審判決を支持、実刑が確定した。同時に最高裁は、北朝鮮への不正送金は京畿道知事だった李在明が指示し、承認していたという事実を認めた。これを受けて、市民団体は北朝鮮不正送金事件の主犯である李在明を「外患罪」で告発している。外患罪は、憲法84条「大統領は、内乱または外患の罪を除き、在任中は刑事訴追を受けない」という規定によって、在任中の起訴免除の対象にはならないからだ。ただ、たとえ起訴され、1審、2審と裁判は続いても、李在明と北朝鮮との関係は白日の下に晒されるかもしれないが、最高裁では逆転無罪になる可能性しか残らない。
「検察憎し」で始まった検察改革が三権分立を破棄した
さらに、尹錫悦前大統領の戒厳令に対する内乱罪や金建希(キム・ゴニ)前大統領夫人をめぐる疑惑、それに海兵隊員殉職事故に関して、通常の検察から独立した特別検察官による捜査を可能にするための法案、いわゆる「3大特検法」が、今月5日、共に民主党の主導で国会本会議を通過した。そして10日には李在明の承認を経て、閣議決定され、実施に移されることになった。共に民主党が上程したこれらの特検法は、これまでも何度か国会を通過したが、尹大統領がそのつど拒否権を行使して再議を要求し、廃案となったものだった。
国会が「特別検察官」として指名し動員するのは、「内乱特検法」は60人、「金建希特検法」は40人、「殉職海兵隊員特検法」は20人で、3つの特検法を合わせると最大で120人に達し、ソウル中央地検に所属する検察官の半数に迫る規模だという。
<「KBS日本語放送6月10日「尹前大統領夫妻めぐる特別検察官法が閣議決定」>
時の政権に迎合して反体制派を強制捜査したり、時には政権に叛旗を翻して政治家に捜査の刃を向けたりするなど、強大な権限で政治的な動きを示してきた検察に対しては、文在寅政権は嫌悪感をむき出しにし、その権限を奪い弱体化させる方向で、徹底的な締め付けを行った。その一つが、事件の捜査権を検察から警察に移行させ、検察はただ起訴権をもつだけという検察改革であり、もう一つが、政治家に対する捜査権を検察から「高位公職者犯罪捜査処」という新たな組織に移管するという制度だった。そして国会の指名による「特別検察官」制度も、従来の検察捜査を信用していないことに起因する制度であり、検察機能を奪い弱体化させるための措置にほかならなかった。しかし、皮肉なのは、こうした検察迫害がかえって、文在寅によって検察総長に指名された尹錫悦を大統領の地位にまで押し上げる結果につながったことである。
いずれにしても、文在寅政権に対するいわばアンチテーゼとして生まれた尹錫悦政権、その尹政権の戒厳令事態によって漁夫の利を得た李在明、そしてこうした権力移行に伴って進められた文在寅政権以降の検察改革と李在明の出現による司法壟断、司法掌握という事態によって、韓国では民主主義の基本である三権分立が完全に崩壊し、法治主義という原則さえ完全に見失われてしまった。
ブレーキ不在の李在明「独裁政権」、結果を引き受けるのは国民だ
共に民主党は、KBSやMBCなど公営放送の経営支配構造を変える「放送3法」の改正に乗り出すといわれている。左派労組の傘下にある言論労組や市民社会団体に公営放送の取締役推薦権を与えるという内容が骨子だという。
<朝鮮日報6月4日「ブレーキ不在の絶対権力・李在明政権誕生、行政・立法府の圧倒的な優位で司法府の大幅な入れ替えも可能」>
李在明政権に批判的なカカオトークやYoutubeに対して「極右」というレッテルを貼り、規制する動きはすでに始まっている。
「韓国が先進的な民主主義国家だ」と名乗るのは、まともな韓国国民なら、もはや恥ずかしくて口にもできないはずだ。李在明に投票することで、こうした結果になることは誰もが分かっていたにも関わらず、国民の半数が李在明を支持し、大統領に押し上げた。それによって生じたすべての結果は、韓国国民自身がすべて引き受けなければならない。
0コメント