韓国「不正選挙」を「陰謀論」では済ませられない多くの理由

韓国の選挙をめぐって「不正選挙」を指摘する声は、相変わらずかまびすしい。しかし、そうした疑問の声は、極右による「陰謀論」だとして一方的に片付けられ、韓国の中央選挙管理委員会が問題に真摯に向き合う態度はどこにも見られない。6月3日に投開票が行われた韓国大統領選挙をめぐっても、不正選挙の疑いは晴れることがなく、国際選挙監視団による報告書が、構造的な欠陥と組織的な選挙介入を指摘するなど、かえって不正選挙の疑いは深まるばかりだ。

全米選挙公正協会National Election Integrity Association (NEIA)という米国の民間組織は、第1次トランプ政権で国務省の国際刑事司法担当大使Ambassador-at-Large for Global Criminal Justicを務めたモース・タンMorse H. Tan博士をはじめとする4人の選挙監視団International Election Monitoring Team (IEMT)を韓国に送り込み、5月26日から6月4日までの10日間、選挙事務状況の視察や調査を行った。この選挙監視は韓国の中央選挙管理委員会の協力と承認が得られず、あくまで民間の立場でしかなかったため、監視活動には最初から制約が伴った。以下は、その選挙監視団が6月5日に公表した声明文での選挙総括である。

事前投票と当日投票で大きく逆転した得票率

選挙監視団がまず指摘したのは、与野党の有力候補者の間で、期日前投票と投票日当日のそれぞれ得票率で、統計学的にはあり得ない極端な格差が生じたという点だった。

期日前投票は5月29・30日の2日間行われ、全有権者4439万人のうち1542万人が投票を済ませ、投票率は34.74%と過去2番目の高さを記録した。また6月3日投票日の最終投票率は79.4%で、これも過去2番目の高さを示し、期日前投票と会わせると有権者3524万人が投票を済ませたことになる。そして各候補者の得票率は最終的に李在明氏が49.42%、金文洙氏が41.15%で、李在明氏の当選が決まった。

ところが、各候補者の得票率を期日前投票と投票日当日に分けて比較すると、期日前投票は李在明氏が63,72%、金文洙氏が25,44%で、李在明氏が38ポイントあまりの差で圧倒的に勝っていた。しかし、投票日当日に限ってみると李在明氏の得票率は37.96%、金文洙氏は53.00%で、逆に15ポイントの差で金文洙氏が勝っていた。金文洙氏の得票率は期日前投票から27ポイントあまり増え、逆に李在明氏は25ポイントあまりも減らしたのである。

「同一有権者プールの中で最大27%の差が出るというのは、民主主義国の選挙では、まれに見る異例的な現象だ」と選挙監視団は総括する。第3の候補である李俊錫(イ・ジュンソク)氏の得票率は、期日前投票が8.83%、当日投票が7.94%、最終得票率が8.34%で、その差は1ポイント以内である。また第4の候補も期日前が0.98% 当日が0.99%、最終が0.98でまったく差がない。普通に考えたら、こちらが正常な数字であり、李在明氏と金文洙氏の票の現れ方は明らかな異常で、何らかの操作や組織的な介入が疑われても仕方がない事態といえる。

選挙監視団は声明文で、「第1、第2の候補者間で短期間のうちに結果が完全に逆転する現象が発生したことは、事前投票の集計や開票手続き全般に異常な要素が介在した可能性を強く示唆するものだ。したがって事前投票システムや開票過程について即時かつ精密な技術分析および検証が必ず行われるべきだ」と指摘する。

出口調査の数字は実態を反映しない予測値だった

次に選挙監視団が指摘した問題点は、公営放送KBSとMBC、それに民放のSBSの地上波3社が共同で行った出口調査の数字だった。選挙当日の午後8時に三局が一斉に報じた出口調査の結果は、李在明氏51.7%、金文洙氏が39.3%、李俊錫氏が7.7%だった。

KBSによれば「今回の調査は KBSとMBC、SBSの地上波放送局3局が世論調査会社の韓国リサーチ、コリアリサーチ、イブソースに依頼して6月3日午前6時から全国325の投票所で投票を行った8万人あまりの有権者を対象に行ったもの」だという。

KBS日本語ニュース6月3日「李在明候補が優勢 地上波3局の出口調査」>

つまり、出口調査の対象は投票日当日の投票所だったはずだが、前述の投票日当日の各候補の得票率(李在明37.96%、金文洙53.00%、李俊錫7.94%)とは大きくずれて、李在明氏の場合は実際の得票率より13.7ポイント高く見込まれ、逆に金文洙氏の場合は同じく13.7ポイント低く見込まれていた。この同じ13.7ポイントという差は、何を意味するものなのだろうか?

出口調査の数字は、実際の最終得票率(李在明49.42%、金文洙41.15%、李俊錫8.34%)と比べると、誤差はそれぞれ2.28、1.85、0.64ポイントとなり、当日投票の得票率との誤差に比べるとはるかに差は縮まっている。

こうした結果から、KBSなど地上波3社は、事前投票をした有権者にも電話による聞き取り調査を実施し、当日出口調査の結果と併せて最終得票率を推定したものと見られる。しかし、純然たる投票日当日の出口調査の結果としての数字ではなく、事前投票の趨勢も反映した全体の予想得票率を出口調査の結果として発表するのは、視聴者に混乱を与え、出口調査の正確性や信頼性にも疑問を投げかけるものだ。何よりも、李在明氏は「国民統合」という名の下で、過半数の50%を越える得票率を得て、圧倒的な勝利を国民に見せることを望んでいたし、実際に午後8時の時点で出口調査の結果が報道されると陣営は勝利を確信し沸き立った。出口調査の数字は、そうした願望に沿って作為的に発表されたものではないかという疑いも拭えない。

これについて選挙監視団は声明文で「出口調査は事前投票と当日投票を区別して発表すべきであり、放送局と選挙管理委員会は出口調査の調査対象、方法、統計処理過程、事前投票の電話聞き取り調査の有無などを有権者に透明に公開すべきだ。これは公的信頼の回復と選挙の公正性確保のための必須の改善措置だ」としている。

因みに、余談だが、KBSなど公営メディアは政権が変わるごとに幹部職員の大規模な異動が実施される。政権交代が確定した選挙後のKBS報道を見ると、尹錫悦前政権に対して厳しい評価をするニュースの文面が増え、反対に李在明新大統領を批判する内容のニュースは極端に減ったように見えるが、気の回しすぎだろうか。

韓国選挙の構造的欠陥と組織的介入の可能性

そのほか、選挙監視団が指摘したのは、期日前投票の投票者数について、各地の選挙管理委員会が発表した数字が、投票所に入場した人の数を市民団体が目視で数えた数字より大幅に上回っていたという報告が各地から寄せられたこと。投票所を監視する市民団体の参観や撮影が妨害され、選挙監視活動を萎縮させる措置や規制が敷かれたこと。投票箱の封印が破られていたり、折り目のない新券状態の投票用紙が見つかったり、重複投票や偽造身分証を提示した事例などが散見されたという。選挙監視団は、こうした事例が「全国的に類似のパターンとして繰り返し発生しているのが確認された」ことから、「これは単なる行政ミスや局所的な過失ではなく、選挙管理手続き全般にわたる構造的な問題、または組織的介入の可能性を強く示唆するものと見なせる」とし、「選挙の信頼回復のためには、単なる陰謀論や個別事例として一蹴せず、選挙管理委員会は能動的に動き、即時かつ独立的な調査手続きを受け入れること」を提案した。

市民による選挙監視活動を保障せよ

さらに「選挙の信頼性と透明性を高めるために、選挙手続きを妨害しない範囲で、市民の監視活動は保障されなければならず、これを萎縮させる過度な法的措置や抑圧は望ましくない。適切な市民の選挙参加と監視活動は民主主義の本質であり、制度的に奨励され保護されるべきだ」としている。

韓国の選挙の仕組みは、外部から見ても未だに信頼が置けるものにはなっていない。不正の証拠の告発は今回の選挙でもSNS上には無数に上った。信頼できない選挙システムによって選出された立法府の議員や行政府のトップに、国民が完全な信認を与えるには無理がある。選挙で選ばれた大統領が2度に渡って弾劾で罷免されたのも、民主主義の根幹である選挙に信を置かず、選挙結果に敬意を表して受け入れるのではなく、選挙結果などどうにでも覆ると軽く見ている証拠であり、韓国の民主主義はそれほど脆(もろ)いという証明でもある。

選挙監視団は声明文で「選挙に深い疑惑が投げかけられた状況で、これを単に陰謀論として片付けるのは責任ある民主国家がとる態度ではない。客観的な説明と制度改善の努力が伴ったときにのみ、国民の信頼を回復できる」と強調する。選挙監視団は今回の監視活動で収集した資料をもとに国際基準に適合した最終報告書を作成し、韓国および米国政府、米国議会、国連および国際選挙機関、主要海外メディアに提出するとしている。韓国の選挙に関しては、今後も引き続き国際的な監視が必要なことを銘記すべきだと思う。

(選挙監視団声明文はYoutube-liveなぜなぜ韓国6月9日「国際選挙監視団の声明書分析・裁判延期」を参照させてもらった)


富士の高嶺から見渡せば

大学で中国語を専攻して以来、半世紀にわたって中国・香港・台湾を見続け、朝鮮半島にも関心を持ち続けてきました。これらの国との関係は過去の歴史を含め、さまざまな虚構と誤解が含まれています。富士の高嶺から、雲海の下、わが日本と周辺の国々を見渡せば、その来し方・行く末は一目瞭然。霊峰富士のごとく毅然、敢然、超然として立てば、視界も全開、隣国を含めて同時代の諸相に深く熱く切り込めるかもしれません。

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