1989年の天安門事件から36年が過ぎた。6月3日、東京文京区で開かれた「六四天安門事件36周年抗議集会」に参加した。集会の最後には、次のような集会決議が採択された。
<集会決議>
あの天安門事件から36年、ようやくにして中国共産党の崩壊が現実のものになろうとしている。
アメリカのトランプ大統領による関税政策は、激しく中国経済を揺さぶり、若者の失業率は50%に近づく。
企業の倒産は相次ぎ、北京、上海の繁華街は今や見る影もない。
我々の目指すものは、中国共産党の打倒である。
例え習近平が倒れようと中国共産党がなくならなければ意味がない。
天安門事件は中国のアキレス腱である。
中国が民主化され、チベット、ウイグル、南モンゴルが解放されるまで我々は闘い続ける。
あと一歩、皆頑張ろうではないか。
2025年6月3日 六四天安門事件36周年抗議行動実行委員会
「中国共産党の崩壊が現実のものになろうとしている」とし、「例え習近平が倒れようと中国共産党がなくならなければ意味がない」とあるが、「中国共産党の崩壊」はともかく、「習近平の失脚」に関する情報は最近になって、世界中の中国ウォッチャーから発信され、YoutubeなどSNSでは反響が広がっている。
習近平はすでに辞意を表明、自宅軟禁という説も
これらの情報を総合すると、中国共産党中央政治局拡大会議が5月半ばに開かれ、胡錦濤や温家宝、王岐山などかつての元老が集まった席で、習近平の去就が議論されたとされ、5月27日の極秘会議では、習近平が自ら辞任を申し出たという情報も流れた。すでに共産党内では、習近平体制の中央政治局常務委員会は、表向きは存続しているものの事実上解体されていて、汪洋が暫定総書記、同じく共青団派である胡春華が暫定的な首相を務め、温家宝らとともに臨時の党中央を形成しているとの情報もある。
実際に毎月恒例の政治局会議が5月はついに一度も開かれなかった。また、中央政治局拡大会議が開かれていた期間、習近平は地方の視察を行っていて、北京を追い出された形となり、その後は半月ほど消息が途絶えたことがあった。習近平の動向が確認されたのは6月4日になってからで、この日、ベラルーシのルカシェンコ大統領と北京の中南海で会談したと報道され、さらに6月5日夜には、トランプ米大統領とも電話会談をしている。
しかし、これはあくまで「国家主席」としての名誉職的な立場での活動であり、中国共産党内部の地位とはまったく関係がない。習近平の総書記としての影響力は、皆無に等しく、今は外交を担当する国家主席という、特に権限を持たないお飾りの立場で、対外的に共産党内の混乱を隠すだけの存在に過ぎないといわれる。
ところで、外国との首脳会談は人民大会堂で行われるのが普通だが、ルカシェンコ大統領との会談が中南海の習近平の自宅で行われたことについて、習近平は「自宅軟禁」という身分に置かれているのではないか、という憶測まで出ている。
「穏便な政変」のための演出スケジュール
さて、「静かなる退陣」あるいは「穏便な政変」ともいうべき習近平の失脚劇だが、その退陣の段取り、スケジュールもすでに決まっていると言われる。それによると、今後1か月か2か月の間に、ふたたび政治局拡大会議が開かれ、その場で習近平が健康上の問題などを理由に職を辞すと表明する「演出」が行われる予定だという。これは党内闘争による権力の交代劇という印象を与えないために、全国の党員や国民に向けて「筋の通った説明」と「安定した印象」を与えるための政治的な儀式だとされる。
習近平は反対派との間で、指導部の構成について一定の合意が形成されていて、習近平は総書記、国家主席、中央軍事委員会主席の3つのポストを手放すことを受け入れたという。その際に習近平本人と自分の姉や弟、娘の身の安全について保証を求め、すでに口頭での保証は為されたと伝えられる。一方、夫人の彭麗媛女史に関しては言及がなく、一説には李克強前首相の“暗殺”に絡み、取り調べを受けているという噂もある。
一方、習近平に代わって党中央トップを務める汪洋は、李克強前首相と同年齢のことし70歳、従来の党内規定では引退の歳だが、習近平反対派によって再び担ぎ出されることになった。その際、汪洋は総書記を引き受けると同時に、党中央軍事委員会主席の地位も兼任することを要求したという。中国は武力なきものには権力がない、武力あっての権力という国だからだ。また、党中央軍事委員会副主席の張又侠は、習近平派の軍幹部の粛正に貢献し、習近平失脚の舞台を作ったが、次期政治局常務委員の一人になるとされる。軍人が政治局常務委員になるのは1992年から97年まで海軍司令官の劉華清が務めて以来で、しかも張は年齢が74歳、極めて異例の人事と言えるが、これも人民解放軍に睨みを効かせ、引き続き軍を掌握するためとみられる。
新しい指導部体制の骨格は決まった
政治局拡大会議に引き続いて、党中央委員会第4回全体会議、いわゆる「四中全会」が開かれ、新しい中央委員、政治局委員の名簿が承認され、さらに政治局常務委員の“選挙”(場合によって定員より多い候補者に対する投票)が行われて、新体制が正式に成立することになる。
その後は新体制による各部門との高官会議が相次いで開かれ、汪洋は軍上層部との座談会を実施する予定とされる。また9月3日の抗日戦勝記念日に行われる軍事パレードは、汪洋が新しいリーダーとして、全党全軍から支持を得たことを国民に示す絶好の場になるとみられている。また政権交代による混乱を防ぐため、経済の安定化や社会管理の強化に向けた新たな政策方針が打ち出されると見られるほか、外交面でも、欧米やロシアに対して、新体制の発足を説明し、悪化した米中関係など対外関係の安定に向けて、外交方針の転換を図る動きが見られるかもしれない。
一方、引き続き党内の規律検査が行われ、蔡奇や王滬寧など習近平派に属する人物への厳しい監視や調査が進められ、新体制発足の2~3ヶ月後には、大規模な「反腐敗運動」が再び始まるとの見方もある。つまり、このタイミングで習近平派に対する粛正が始まる可能性もある。実際に昨年の三中全会と北戴河会議の後、習近平は軍や党、政府の実権を徐々に奪われて、同時に習近平派の高官の失脚や行方不明事件、不審な死などが相ついで報道された。つまりすでに報復・粛正は始まっているとも言える。
特に張又侠は李尚福国防部長の失脚時に、習近平に解任されかけた経緯がある。また次期首相に就任すると見られる胡春華は、2022年第20回党大会が開催されるまでは、次の国務院総理の有力候補とみられていたが、習近平によって「政敵」と見なされ、政治局委員からヒラの中央委員、政治協商会議副主席に降格された過去がある。こうした張又侠や胡春華が、新しい政治路線の構築に伴って、習近平による過去をいかに清算するのか、このまま穏便に済ませることができるかどうかは、疑問だ。
チベットやウイグルなどでの人権抑圧を早期に終息させよ
一方、冒頭に記した天安門事件という歴史的事実を直視し、自らの政治体制改革をいかに進めるかや、極めて厳しい経済状況をどう回復させるか、などの課題はもちろんのこと、チベットやウイグル、そして南モンゴルや香港など、21世紀も続くジェノサイドや人権抑圧を中止し、それぞれの民族自決にいかに回帰させるかなど、真剣に考えるべき課題は多い。次期指導部に期待したいが、彼らが中国共産党の存続を望むかぎり、遠い夢に過ぎない。
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