悪の3巨頭が並び立つことで暴かれた“究極の虚構”戦勝パレード

北京の天安門楼上に、習近平、金正恩、そしてプーチンの3人が並び立つ図は、虫酸が走るほどおぞましく、醜悪だった。この3人は現代の典型的な独裁者であり、虐殺者であり、この3人が揃い踏みするということは、なおさら、この3つの国の本性を世界に晒すことになった。

この日(9月3日)、北京で行われた「抗日戦勝パレード」を、中国側は「抗日戦争並びに世界反ファシズム戦争勝利80周年記念式典(「中国人民抗日战争暨世界反法西斯战争胜利80周年纪念日」と称した。「抗日戦」と「反ファシズム」を並列させたのは、習近平がこの日の演説でも語ったように、「中国人民による抗日戦争は世界の反ファシズム戦争の重要な構成部分であり、中国人民はそのために多大な犠牲を払った」という認識があるからだ。

ライブ中継映像は習、金、プーチンの3人が主役

しかし、ここでいう「ファシズム」について、20世紀前半の特定の国家体制を指す歴史用語としての厳密な定義はさておき、「独裁権力のもとで議会制民主主義が否定され、強力な軍事警察力によって国民の権利や自由が抑圧される体制」(『世界史の窓』歴史用語解説)という意味なら、ウイグル人やチベット人、モンゴル人に対する大量虐殺や人権侵害、思想・文化・宗教弾圧を行っている現代のファシズム国家こそ、習近平の中国であり、ウクライナに軍事侵攻して領土の獲得を狙う戦争を共に戦い、自国民の多大な犠牲を省みない独裁者の国、ロシアと北朝鮮も間違いなくファシズム国家である。

軍事パレードの様子は、民放各局がBSやYoutubeで流したライブ番組を通じてつぶさに見た。中国中央テレビCCTVの中継は、金正恩の天安門への到着から始まり、各国首脳との記念撮影、天安門楼上へ階段を上がる様子などすべての場面で、習近平の左側には金正恩、右側にプーチンが並ぶ姿が映し出され、まるで軍事パレードはこの3人が主役という雰囲気だった。しかし、過去の歴史を振り返り、勝利を云々することは、自分たちの今の所業にも世界の耳目を集め、光を当てることであり、そのブーメラン効果に彼らは気がつかないのだろうか。

<ライブ映像は例えば、日テレNEWS LIVE「たっぶり見せます!中国・軍事パレード」【専門家解説付き】を参照>

戦勝パレードは「究極のフィクション、嘘に基づく祝賀行事」

ところで抗日戦勝利80周年パレードを前にして、米国の大手研究機関ハドソン研究所は「中国の第2次世界大戦勝利記念パレードは、究極の虚構:捏造された写真、偽りの物語、そして嘘に基づく祝賀行事」(China’s World War II Victory Parade: A Supreme Fiction Fabricated photos, false narratives and upcoming celebrations based on lies.)と題する報告書を発表している。ハドソン研究所のマイルズ・ユー(Miles Yu 余茂春)中国部長が執筆したもので、7月25日の「ワシントンタイムズ」に掲載された。以下はハドソン研究所のサイトから引用し、翻訳したものである。

<表向きは戦時中の英雄主義への賛辞だが、この見せ物(display)は実際には歴史の巨大な歪曲であり、党を称賛し、現代の敵対者を貶め、国民を欺くための計算された虚構である。この茶番劇(charade 見え透いた嘘)の核心にあるのは、戦争中に日本侵略に対する主たる戦闘勢力は中国共産党だったという虚偽である。この主張は厚かましい嘘だ。1937年から1945年にかけて、日本軍の攻撃の矢面に立ったのは蒋介石率いる国民党政府であった。中国共産党ではなく国民党軍がほぼ全ての主要戦闘を戦い、350万人以上の戦死者を出した。これとは対照的に、延安の拠点に籠もっていた中国共産党の損失はごくわずかだった。日本軍との小競り合いで死亡が確認されている共産党の高官は左権将軍(八路軍副参謀長・第2縦隊司令官)ただ一人である。

日本の戦死者データが真実を裏付けている。中国における推定100万人以上の日本軍戦死者のほぼ全員が、国民党軍または連合軍の手に落ちたのであり、共産党軍によるものではない。(略)共産党が稀に戦闘に踏み切った事例として1940年の「百団大戦」がある。大々的に宣伝される割には、この戦いは、決定的でも英雄的でもなかった。抗日戦勝利を偽装するため、中国共産党はこの作戦で日本軍に4万6千もの甚大な損害を与えたと主張したが、日本側の戦死傷者に関する記録によれば実際の数字は500人未満であった。(略)

ソ連と中国共産党は、戦争の大部分において、日本軍との対立を避ける政策を事実上余儀なくされた。中国共産党によるいかなる軍事行動も、ソ連と東京の間で結ばれた中立条約を危うくする恐れがあったため、毛沢東と中国共産党は日本軍との実際の衝突を慎重に回避した。結果として、日本軍と中国共産党軍は、共産主義者の抵抗がほとんど、あるいは全く存在しなかった日本占領下の華北の広大な地域で、事実上共存していた。

毛沢東は解放や抵抗ではなく、戦争終結までに数千人規模から100万人以上の軍隊へと静かに軍を拡大することに注力した。これは本格的な戦闘を避けつつ、戦後は米国による支援に支えられた中国国民党政府の打倒を目的としたものだった。

この行進(抗日戦勝利パレード)は政治的な見せ物であり、国家が作り上げた追悼を装ったスペクタクルに過ぎない。1989年に無数の命が踏みにじられた天安門広場でこれを開催する皮肉は、中国の真の歴史を知る者には明らかだ。

中国共産党は戦争で犠牲になった1500万人の人民を称えると言いながら、粛清、飢饉、強制労働、恐怖政治、そして継続的な弾圧によって命を奪った7000万人以上の人民については沈黙を守っている。いかなる外国勢力よりも多くの中国人の死を招いた政権に、平和や犠牲について語る道義的立場などない。大躍進政策、文化大革命、天安門事件で亡くなった者たちのための横断幕は掲げられないだろう。(略)

この見せ物に参加することは、詐欺を正当化することである。外国の指導者、特に民主主義国家の指導者は、この偽りの歴史に自らの存在で彩りを添えるべきではない。そうすることは、ファシズムと戦った人々の記憶を裏切り、自国民の骨の上に築かれた体制に報いることに他ならない。9月3日に繰り広げられるのは追悼ではなくプロパガンダだ——旗と軍服に包まれた侮辱であり、歴史ではなく欺瞞を誇示する行進である。それは嘘のパレードであり、あらゆる嘘と同様に、真実は暴かれなければならない。>

悪の3巨頭のおかげで歴史の真実はすぐに暴かれる

如何だろうか。今回の中国の軍事パレードに対して、かなり辛辣で、強力な否定材料となっている。この論文の影響力は、ワシントンの政界をはじめ、西側の世論には大きなインパクトを持つものと思われる。実際に西側の政治家は、鳩山由紀夫を除いて、誰も参加しなかった。中国共産党と習近平は、この論文に反論することもできず、「戦勝パレード」という「究極の虚構」、「歴史の捏造」を強行したことになる。しかし、その主役が習近平、プーチン、そして金正恩であったという事実は、この軍事パレードの性格を何よりも雄弁に物語るものであり、彼ら三悪人が行った世界を欺く壮大なプロパガンダとして現代史に刻まれ、その真実が暴かれるのもそんなに時間がかからないような気がする。

富士の高嶺から見渡せば

大学で中国語を専攻して以来、半世紀にわたって中国・香港・台湾を見続け、朝鮮半島にも関心を持ち続けてきました。これらの国との関係は過去の歴史を含め、さまざまな虚構と誤解が含まれています。富士の高嶺から、雲海の下、わが日本と周辺の国々を見渡せば、その来し方・行く末は一目瞭然。霊峰富士のごとく毅然、敢然、超然として立てば、視界も全開、隣国を含めて同時代の諸相に深く熱く切り込めるかもしれません。

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