習近平の出世の裏には反日の策謀が渦巻いている
中国共産党政権、とりわけ習近平独裁政権にとって、「抗日戦争勝利」を祝う“資格”も“大義”もないのは明らかだ。
「新中国建国の父」毛沢東も、中国経済崛起の立役者「改革開放の総設計士」鄧小平も、「抗日戦争勝利」に言及し、祝うことなど一度もなかった。それにも関わらず、戦後70年が過ぎた習近平時代になってから、急に大騒ぎするようになったのはなぜか?
中国人の口から「抗日」や「反日」の言葉が聞かれるようになり、テレビで盛んに抗日ドラマが放送され、反日映画が国民の熱狂を呼ぶようになるのは、中国が靖国神社や尖閣諸島、それに台湾問題などをめぐって、国策として「反日愛国」を煽った2010年代前半からであり、それは習近平が政権を掌握する過程と重なる。
習近平が国家副主席として来日し、宮内庁のルールを破って天皇との「特例会見」をごり押ししたのは2009年12、鳩山由紀夫首相、小沢一郎幹事長の民主党政権時代だった。そして2010年9月、菅直人首相の時、尖閣諸島沖で中国漁船による衝突事件が起き、2012年9月、野田政権下で尖閣諸島の国有化が行われた。中国各地で反日暴動が吹き荒れたのは、このころで、当時、政治局常務委員だった周永康が公安組織を使って意図的に反日運動を仕掛け、党内の権力闘争に利用したという見方もあった。そして直後の2012年11月、第18回党大会で習近平は党総書記の選出され、翌年3月、国家主席に就任する。習近平の出世の裏には、なぜか、反日の策謀が渦巻いている。
要するに習近平が掲げる「中国の夢」「中華民族の復興」のためには、「抗日戦争」を利用して、中国人の民族意識と愛国心をうまく刺激し、団結と自立自強を促すことが重要だと考えている。また習近平が重視する「国家の安全」のためには、何よりも強い中国が必要であり、今や日本をはるかに上回るようになった経済力と技術力をもって、軍装備の拡充と先進化を進め、そうした成果を世界に誇示することで、中国に敵対する国を震撼せしめることこそ、今回の軍事パレードの最大の目的だった。
習近平の閲兵式は世界平和に対する真の脅威だ
ところで、中国人訪問学者として現在、東京大学に在籍し、BirchTreeを名乗る人物が「習近平の閲兵式は世界平和に対する真の脅威だ」と題する文章をメルマガ配信サービスSubstackで配信し、これを中文メディア「阿波羅新聞網」が転載したほか、東大大学院総合文化研究科の阿古智子教授が邦訳し紹介している。
<阿波罗新闻网9月4日 BirchTree「习近平的阅兵式,是对世界和平的真威胁」>
<FNNプライムオンライン9月3日阿古智子:「三大独裁国」習近平・プーチン・金正恩集結に浮かび上がる新時代の「枢軸国」>
この中でBirchTree氏は、「表向きは“平和を祝う”行事だが、中国経済が衰退し、失業率が急増し、民衆が生活に苦しむ現状下で行われるものであり、中国共産党が内外の危機に直面する中での政治的ショーに過ぎない。この背後にある中国共産党の政治的操作を、より多くの人々が理解する必要がある。歴史を振り返り、中国共産党はなぜ建国から70年の間、この「祝賀行事」を行わなかったのかを考えてみよう。」とし、次のように述べている。(以下引用)
<中国共産党不在の抗日戦争>
当時、中国共産党は陝西省の辺境の窰洞(ヤオトン:崖や地面に掘った穴を利用して作られた住居)に潜む反政府武装組織であり、「一分抗日,二分応付,七分発展」(721方針:10%の力を抗日に向け、20%の力を形式的な対応、70%の力を自分たちの勢力拡大に投入する)を打ち出していた。
これは、国民党による日本軍の侵略に対する最前線での抵抗を、自らの勢力拡大に活かすことを意味する。 1937年7月7日の盧溝橋事件から1945年8月15日の日本の降伏まで、中国と日本はそれぞれ10万人以上の兵力で少なくとも10回以上の大規模な戦闘を繰り広げた。これらの決戦の多くは、中国共産党の八路軍や新四軍はあまり関係がなかった。(略)
<中国共産党は抗日戦争の最大の受益者>
中華人民共和国建国後40年以上にわたり、「抗日戦争の勝利」を祝うことは、気まずいものだった。毛沢東時代と鄧小平時代を生きてきた多くの人々は、「抗日戦争の勝利」がアメリカ合衆国とその「敵」である国民党政府の支援によって達成されたことを目の当たりにしており、その内実を知っていた。
それは共産党の勝利ではなく、共産党は戦時中の国民党政府の弱体化に乗じて権力を掌握したのだ。共産党こそが、戦争の最大の「受益者」だった。(略)
抗日戦争勝利を大々的に祝えば、「真実が暴露される」恐れがあるからだ。少しでも常識のある人なら、疑問に思うはずだ。抗日戦争中、中国の正統な政府はどの政党の政府だったのかと。それは中国共産党ではない。侵略してきた日本軍の主力部隊に最前線で抵抗したのは、中国共産党の軍隊ではない。(略)
<自らの正統性を証明するため新たな敵を作る>
1991年、中国の国務院は9月3日を「中国人民抗日戦争勝利記念日」と定めた。これは、中国共産党が軍隊と戦車を用いて学生を虐殺した1989年の天安門事件を背景にした行為だったと言える。
この事件により、中国共産党は国内で自らの正統性を証明することが困難になった。そこで、中国共産党は常套手段であるナショナリズムに訴え、新たな敵を作り出した。最も都合の良い敵は日本だった。(略)
2014年、全国人民代表大会常務委員会は9月3日を「中国人民抗日戦争勝利記念日」と正式に定めた。当時、習近平の「中国の夢」においては、反日感情や「愛国心」といった民族主義的な感情を巧みに利用することが、常套手段となっていた。
この新たな政治的要請に突き動かされ、習近平は2015年に初の大軍事パレードを開催し、さらに10年後の今年には、より大規模で精巧なパレードを開催し、二人の著名な独裁者を招待した。
<彼らに必要なのは事実ではなくイメージだけ>
アメリカの弁護士で学者の劉宗坤は、このパレードを「綿密に仕組まれた政治的な栄光」と表現し、中国共産党政権が「自らの勝利ではないものを、自らの権力を称えるための政治的儀式へと段階的に変貌させようとする」恥知らずな行為だと断じた。劉宗坤は、偉大な中国の翻訳家である厳復が130年前に書いた「偽りに始まり、恥知らずに終わった」という言葉を引用している。(略)
数十年にわたる全体主義的統治を通じて、中国共産党は人類史上最大の人権侵害を引き起こしている。2025年、中国では年金も医療も行き届かず、略奪的な経済的・政治的迫害によって多くの企業が閉鎖に追い込まれる中、習近平は盛大な軍事パレードに惜しみなく資金を費やしている。
そして、彼と他の二人の独裁者(プーチンと金正恩)が天安門広場の頂上に立つ時、彼らは新時代の「枢軸国」の様相を呈する(かつて日独伊のファシズム国家が「枢軸国」と呼ばれた)。「平和」を装った彼らの軍事パレードこそが、世界平和に対する真の脅威なのだ。>(引用終わり)
つまり、「抗日戦争勝利」とは、厚顔無恥な習近平が「中国の夢」「中華民族の復興」という自分が掲げた政策のために捏造した「究極の虚構」であり、壮大な政治的プロパガンダに過ぎない。そんなものに、世界の人々は付き合う必要もないし、「真実の歴史はまったく違う」と中国と中国人に対して言い続ける必要がある。
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