代々木公園の一画が在日中国人に占拠された日
チャイナ・フェスティバルと銘打たれたイベントが、9月6日と7日の土日に、東京渋谷区の代々木公園イベント広場で開かれた。在日中国大使館が主催し、フェスティバル実行委員会の委員長は呉江浩駐日中国大使が務めるという、いわば完全に中国政府が前面に出て、音頭を取った官製イベントだった。
昔は、といっても日中国交回復後の1970代後半から80年代のことだが、こうしたイベントは「中国物産展」と呼ばれていたという記憶がある。そのころの会場には中国で作られた玩具やお菓子、日用雑貨などが並び、当時の中国の生活レベルや工業生産のレベルを日本に紹介する目的で、観覧や販売の対象は完全に日本人だった。学生時代、そこで小さな赤い表紙の「毛沢東語録」を買った思い出がある。そのころの中国は文化大革命を経験した時代だった。
しかし、今、このイベントは完全に在日中国人のための催しとなっていて、中国と日本の交流を目的とするというより、在日中国人同志が集まり情報交換する場といった雰囲気が強くなっている。つまりチャイナ・フェステイバルは、そのものずばり「中国人祭り」というわけである。
例えば、さまざまな中華料理を売る飲食コーナーのテントは「日本中華美食文化促進会」と称する団体に加盟する日本在住中国人が経営する各地のレストランが出店していて、店の名前を売りだすための派手なポスターを全面に掲げているが、テントの裏側に回ってみると、その店の関係者や子供を含めた家族が集まって、大勢でテーブルを囲み、酒を飲んだり大声でおしゃべりしたりしていた。まるで家族や会社の同僚たちによる野外ピクニックといった様相で、公共の施設である公園の一画を、中国人たちが一日中、私的に占領し、それを自慢し楽しんでいるといった雰囲気だった。
(飲食店テントの裏側)
在日中国人のための「困りごと何でも相談」?
また出店しているテントの中には、「行政書士法人」を名乗る中国系企業が各種のビザ取得のための無料相談に応じるとしてテーブルと椅子を置き、ひっきりなしに訪れる中国人の相談に応じていた。日本滞在のための各種ビザ(査証)、たとえば「留学」や「配偶者ビザ」のための手続き、「技術/人文」「高度人材」「経営管理」などのビザ資格の取り方、そして「永住」や「帰化」のための手続きを説明し、さらには、たとえば廃品回収のための「古物商」を営むための免許、不動産会社や旅行会社を起業するための許認可手続きについても相談に応じるとしていた。
(行政書士法人の無料相談)
また「あなたの海外生活の助手」を名乗る中国系企業は、東京、大阪、京都を中心に中国人家庭に家政婦を派遣して清掃を行ったり、台所や風呂など水回りの修理を行ったりするとして、チラシを配ったりQRコードの宣伝を行っていた。例えば換気扇の清掃は9900円、風呂の排水溝の修理は22000円、トイレの修理は22000円、排泄物の取り除きはプラス20000円などとあり、さらに1回の交通費は東京、大阪、京都市内なら880円、その周辺の郊外なら2860円とあった。確かに異国で暮らす中国人のお困りごとあるあるが、これらのサービスリストに現れているようで、強気で高めの値段設定も、それだけ需要があるという証拠かもしれない。
(看板には「何か問題があったら私たちを探して、海外生活の助手」とある)
在日中国人に日本の文化や伝統への理解を求めても無駄か?
そして中国系企業が在日中国人に対して行う、こうしたサービスに需要があって、ビジネスとしても成立するということは、大量に移住してくる中国人によって作られた中国人コミュニティーが、一つの経済圏として完結し自立しているという証拠でもある。つまり、日本に住みながら、日本人とはまったく関係を持たなくても、中国人同士の交流だけで十分に生活できるという意味だ。日本に住んで、日本の文化を体験し、日本人の物の考え方や伝統的なものに理解を深めるなどということは、初めから期待しても無駄だということを意味する。
「チャイナ・フェスティバル2025」でYoutubeを検索してみると、チベット出身の美人歌手で日本でも人気のAlanの歌唱ステージ(以前よりだいぶふっくらしたが今も可愛いAlanの姿が見れる)、ファッションショーや伝統楽器の演奏、それに二本足歩行ロボットがボクシングの実演を披露する風景などが見られ、それなりに日本人客も盛り上がったようだ。そして会場の一画で、目を引いたのは、中国製アニメ・コンテンツのキャラクターだった。中国は独自のアニメ・コンテンツを開発して世界のアニメ市場に進出することを目指しており、そうした国策に沿った展示だった。
中国ではことし春に公開されたアニメ映画「哪吒(ナタ)2」(哪吒之魔童闹海(Nezha 2/魔童の大暴れ)」が大ヒットし、公開から数週間で興行収入は125億元(約2500億円)を突破し、観客は2億人以上に達したと報じられている。
チャイナフェスの会場では、中国のアニメ専門の動画配信プラットフォーム企業bilibili(ビリビリ/哔哩哔哩)が展示を行ない、中国製アニメやキャラクターの紹介を行っていた。bilibiliは「配信プラットフォーム」であると同時に、アニメ制作への出資や共同制作者としてコンテンツ開発にも取り組んでいて、海外配信権を持つストリーミングサービスや配給契約も進んでいるらしい。アニメの分野でも中国が日本進出・世界進出を狙っているのは明らかで、こうしたチャイナフェスのような場がその最前線となっている。
富士山の天然水を自社ブランドだとして売り出す中国企業
こうした日本に進出した中国企業の日本での活動の様子や、在日中国人らが経営する企業が日本でどんなビジネスを展開しているのかは、気になるところだ。
そうした中、出店企業の看板を見て驚いたのは、「富士山の贈物」と銘打って、ウォーターサーバー用の飲料ボトルとサーバーを販売する会社だった。販売しているのは、千代田区神田淡路町に事務所を置く「東京設計株式会社」という中国人オーナーの不動産仲介業者で、ついに中国系企業が富士山の天然水にも手を伸ばし、飲料水販売にも着手したのかと驚かされた。しかし、パンフレットをよく見ると、採水とボトル詰めを行っているのは横浜の不動産会社ライフシステムサービスという会社だった。しかし、日本に進出し不動産仲介業を営む中国人経営者が日本の不動産会社とタイアップして、日本の貴重な水源地をビジネスとして狙っている構図には変わりはない。看板には「日中合作の天然水ブランド」とあり、すでに自社ブランドを気取っていた。
そのライフシステムサービス生活環境事業部のホームページには「山梨県鳴沢村の標高1030m地点で地下300mまで掘った井戸で地下水を『毎分1トン』くみ上げている。資源としても非常に豊富で、なにより『世界遺産の富士山』の雪解け水をくみ上げられる井戸は、今後許可が下りません」とあった。
そこで実際に「鳴沢村地下水資源保全条例施行規則」を調べてみると、その第3条に
「日量500立方メートル以上の地下水」を採取しようとする者の許可基準は、▼地域への振興及び雇用機会の拡大が図られ、もって村経済の発展及び村民生活の向上に寄与すると認められること。▼当該企業の信頼性に問題がないと認められること。▼水源保全の為の措置が充分に実施されると認められること、などの条件が付与されている。日量500立方メートルはつまり500トンであり、「毎分1トン」のくみ上げなら8時間の操業で480トン、24時間の操業で1440トンに達する。しかし、こうした井戸から富士山の地下水をくみ上げ、飲料水ビジネスを展開するためには、企業の信頼性と設備の安全性が担保されることが求められ、鳴沢村としても安易に許可を出すことはないと思われる。
一方、富士河口湖町の「地下水保全条例・施行規則」によると、地下水を採取するための井戸の利用は、「地下水の循環的利用」、つまり井戸のある場所で地下水を利用し、利用後不要となった地下水は井戸のある場所で適切に排水処理することが求められ、「汲み上げた地下水の持ち出しは不可」、例えば「ミネラルウォーター製造工場は不可」とはっきり規定されている。<富士河口湖町公式ホームページ「地下水(温泉含む)の利用を検討している方へ」>
各自治体の個別の地域事情によって、井戸から地下水を採水する条件は大きく異なっていることがわかる。中国人や中国系企業による水源地の土地買収問題は、北海道をはじめ全国各地で報告されているが、日本の貴重で良質な水資源、つまり中国側からしたら、喉から手がでるほどの、まさに垂涎の的の資源を、未来永遠に保全するために、各自治体の地下水保全条例の整備と規則の厳格な施行を求めたい。
日本でも補助金漬けの中国製EV
もうひとつ中国企業の日本における活動で注目されたのはEV自動車を販売するBYDだった。フェスティバル会場でも、会場の中心で一番目立つ場所に、日本で販売する4車種のモデルを展示し、BYD日本販売店のスタッフが来場者を捕まえては熱心にセールストークを行っていた。驚いたのは、EV車を購入する際に国や自治体から支払われる公的補助金の額だった。BYDのセールススタッフの説明では、国から補助金は「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」(CEV補助金)が35万円、東京都の補助金「ZEV(Zero‐Emission Vehicle)車両購入補助金」が45万円、さらに千代田区在住者はさらに20万円の補助金が得られるということで、合計100万円。たとえばBYDが大衆車として売り込んでいる車種ドルフィンの場合、メーカー希望小売り価格が299万円だが、BYD独自の期間限定値引き50万円と公的補助金100万円を合わせて、149万円で購入可能としている。
国のCEV補助金や東京都のZEV補助金は、各メーカーの車種ごとの販売実績によっても適用される補助金の額が変わり、さらに車体からの給電機能(V2Hなど)の有無、再生可能エネルギー電力契約や太陽光発電の設備設置などの条件によっても上乗せされる。そのため補助金の合計額は、例えば日産のリーフの場合、120~140万円前後。テスラのモデル3の場合、110~130万円前後、BYDのドルフィンの場合、80~110万円前後と幅がある。<ChatGPTのweb検索による「車種別の補助金見込み比較」の回答>
それにしてもBYDの電気自動車に100万円もの日本の税金が使われ、車両価格の3分の1を占めるというのは、驚きだった。いまや欧州のEV市場で、BYDはテスラを上回る販売実績を示し、日本でもヒュンデ(現代)をはるかに上回る販売成績を上げている。その一方で、中国政府は国内で供給過剰となっているEVに補助金をつけて海外輸出の拡大し、ゴローバルサウスなどの海外市場に活路を見いだしている。中国や韓国ではEVのバッテリーが発火し、大きな火災になる事故が相次いでいる。EVの信頼性やバッテリーの寿命、そのリサイクル方法などはまだまだ確立されていない。日本が中国製EVによって席巻される前に、有効なEV戦略を日本メーカーと政府は打ち立てる必要がある。
中国人の日本への大量移住は日本の一般の人の暮らしにも大きな影響を与えるなど、すでに社会問題化している。その在日中国人たちが日本で展開するビジネスについても、日本の法律の枠を越えて不法に甘い汁を吸うことがないように、厳しい監視監督が求められている。
9月3日の習近平軍事パレードを見れば分かるとおり、中国が国力を高めることは、高度な軍事力を備え、やがてわれわれ周辺の国に対してその牙を向けることである。トランプ大統領が中国の国力を削ぐことに全力をあげているように、われわれも中国がこれ以上、国力をつける方向にはいっさい協力しない心構えが必要かもしれない。
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