「歴史カード」の次は「放射能カード」だという韓国外交

韓国との関係は、出口の見えない泥沼状態に陥っている。

ここまでこじれた原因は、間違いなく韓国政府の対応にある。それは公然とウソの発表をしても恥じない、常識はずれの外交である。日本を貶め、日本をやり込めるためなら手段を選ばないということだ。

日本が貿易管理上の問題から韓国を対象に輸出手続きの管理強化をしたところ、韓国政府は徴用工問題に対する経済報復だと猛反発し、政府高官が直接、日本にやってきて抗議するのではなく、なぜか、みなワシントン詣でを繰り返し、お得意の「告げ口外交」を展開した。しかし、米国は日韓の間に立って仲介に乗り出すことはなく、これが後に米韓同盟の見直しにも繋がる日韓軍事情報包括保護協定GSOMIA破棄の遠因になったとも言われる。そのGSOMIA破棄について、韓国外務省は、米国に事前に説明して「理解を得ていた」と発表した。しかし、米国国務省はすぐさま否定し、ウソはすぐにバレた。

韓国は日本を貶めるために今、盛んに「放射能カード」を使っている。産経新聞ソウル支局長の名村隆寛氏は「文在寅の『放射能カード』は第2の慰安婦問題になる」かもしれないと警告する。なぜなら、放射能問題は、歴史問題や慰安婦問題と同じにように「日本の弱み」だと認識しているからだ。

「放射能問題では「韓国国民の不安と健康と安全」を掲げている。「歴史カード」も「放射能カード」も“韓国が被害を受けた”と強調する。(中略)福島の放射能問題は韓国にとって、ひたすら日本を従わせることができる好材料なのだ。韓国は「放射能カード」にうま味を感じ始めている。」

<名村隆寛(産経新聞ソウル支局長)「文在寅「放射能カード」は第2の慰安婦問題になる!」>

https://bunshun.jp/articles/-/13565

その「放射能カード」として使っている一つが、福島第1原発で汚染水を処理したあと貯留タンクに貯まり続ける処理水の問題である。

8月19日 韓国外交部の権世重・気候環境科学外交局長が在韓日本大使館の西永知史公使を呼び、福島第1原発の「汚染水」の海洋放出計画に関するメディアの報道や国際環境NGOの主張について、事実かどうかの確認や今後の処理計画などについて、日本政府としての公式な回答を要求する文書「口上書」を手渡したと発表した。

しかし、在韓日本大使館がその後(8月27日)、ウェブサイト上に発表した「8月19日付大韓民国外交部口上書への回答について」によると、韓国側が西永公使を外交部に呼び出したというのは全くのウソで、本当は、福島第1原発の処理水に関する日本政府の立場を説明するため(「回答」では「申し入れる」ためとなっている)、日本大使館側が外交部訪問を要請し、西永公使が自ら出向いたもので、召致された事実はないと否定している。その上で韓国側がまったく真逆の報道発表したことについて韓国外交部に抗議したという。

しかし、こうした事実は、韓国のマスコミはもちろん、日本のメディアでも報じられていない。

外務省は、韓国外交部の虚偽の発表の事実について、もっと声を大きくして広く広報すべきではないか。

そもそも、韓国外交部がこの処理水の問題を提起したのは、国際環境NGO「グリーンピース」の専門家が最近、英国のニュース誌エコノミストに寄稿し、「安倍内閣と東京電力が福島第1原発に保管されている高濃度の放射能汚染水100万トン以上を太平洋に放流する計画を進めている。特に韓国はこの事の危険性から免れるのは難しい」と主張したとする、何を根拠にそういう主張を展開するのか、まったく不明の一方的な言説をもとにしているという。

<KBS日本語放送8月19日「福島原発汚染処理水の放出問題 外交部が日本公使呼んで回答要請」>

http://world.kbs.co.kr/service/news_view.htm?lang=j&Seq_Code=73063

しかし、在韓国日本大使館の「回答」でも触れられている、経済産業省がまとめた「韓国側への回答」文書でも明らかなように、水に溶け出したトリチウムを除きほとんどの放射性物質を取り除いたあとの処理水「ALPS(アルプス)多核種除去設備で浄化処理した水(ALPS処理水)」については、国の「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」で総合的に検討しているが、現時点では具体的な結論は何も出していないし、その小委員会での審議過程は、経済産業省のホームページ「福島第一原子力発電所における汚染水対策」で全て公表されている。

https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku.html

しかも、こうした処理水の検討状況については、「日本政府は、これまで累次にわたり、各国の在京大使館向け説明会(2018年10月)や国際会議(2019年7月WTO・SPS委員会)で説明し、これに加え、在京韓国大使館に対しても個別に、2018年10月以降4回にわたり、本件に関し、透明性を持って丁寧に説明してきた」とし、さらに、「2019年2月には、韓国政府の求めに応じ、経済産業省は日韓海洋環境実務者会合において、福島第一原発の汚染水対策の現状及びALPS処理水の現状について説明した」という。

日本側がこれだけ何度も説明を繰り返してきたという事実にはいっさい触れず、あたかも日本が何も説明せずに秘匿しているとでもいうように、「在韓国日本大使館の関係者を呼んで、日本政府としての公式な回答を要請した」などと、まったく事実に反するウソを重ねて報道発表するとは、どういう神経なのか。

在韓日本大使館は、韓国側への回答のなかで、「我が国は,本件に関して,科学的根拠に基づいた措置を,責任を持ってとっており,韓国政府に対し,本件を含む種々の案件に関する対外発表は,事実に基づいて行われること,また,同国政府がとる措置は科学的根拠に基づくべきであることの重要性を強調する」としている。

韓国側はこの福島第1原発の処理水問題を国際会議の場などを通じて世界に訴え、国際問題化しようと画策しているが、要するに韓国が世界に向けて対外発表するときは、少なくとも事実に基づき、科学的な根拠をはっきりせよと当たり前のことを忠告しているのだ。

福島第1原発事故をめぐっては、韓国側は「放射能カード」として、処理水問題以外にも、日本産食品などに対する放射能検査強化や2020年東京オリンピックへの安全性の問題にも広げている。

韓国は、8月になって日本から輸入する石炭の焼却灰や廃プラスチック、それに過去に基準を超える放射性物質が見つかったとされる日本の加工食品などへの放射性物質の検査を強化する措置を発表した。

東京オリンピックを一年後に控え、各国の選手団団長を招いて開いたセミナーでは、韓国オリンピック委員会の代表が、選手村に提供される福島産食材や国立競技場の建設に使われた福島産木材の安全性に懸念があると問題を提起した。

東日本大震災から8年半も経って、日本国内では放射能汚染の問題は、原発周辺の住民避難地域を除けば、ほとんど問題とされなくなっている。福島県産の農水産物については、全量、放射能検査を行い、安全が確認されたものしか出荷されない、ということで日本人は安心しきっている。韓国側のコストと手間をかけ、敢えて行うという放射能検査強化の動きは、何を今さらの感もあるが、科学的に裏付けられた日本の安全宣言には、信を置かないというポーズを見せるためであろう。そうすることで、風評被害を拡大させ、日本を貶め、陥れようとしている。

貿易管理上の瑕疵をなくすために、日本が採った輸出管理強化の措置に対する韓国側の対抗措置が、日本製品の不買運動や日本旅行拒否などのボイコットジャパンの動きを越えて、ここまでするのかというのは、日本人の誰もが感じる率直な思いだと思う。結局は、自分たちの主張を通すためだったら、理屈も道理も、恥も外聞もなく、相手がどう思い、どう受け取るかも関係なく、使える材料なら何でも利用して、ひたすら相手を貶め、やり込めれば満足なのであろう。こうした隣人に、われわれの側も、結局のところ、信を置くことはないだろう。

日本の新聞はあまり大きく報じないが、安倍総理が、9月5日、ウラジオストクの「東方経済フォーラム」で行ったスピーチの内容が面白い。

https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2019/0905eef.html

安倍総理は「私は本年も(ウラジオストクに)未来と可能性だけを話にやってきた」としたうえで、「日本は『パートナー』です。皆さんが、信を置ける国。一度約束を結ぶと、子々孫々守って、日本は堅固不抜です」。「日本に対する接し方はただ一つ。「信」を置いていただくことだと繰り返したいと思います。「信」は、人と人との間で生まれ、人と人をつなぎます」と述べた。

「一度約束を結んだら、子々孫々守って堅固不抜」とは、明らかにその逆を行くどこかの国に対する当てこすりであろう。

写真は、8月15日ソウル光化門広場での「反日ろうそく集会」

富士の高嶺から見渡せば

大学で中国語を専攻して以来、半世紀にわたって中国・香港・台湾を見続け、朝鮮半島にも関心を持ち続けてきました。これらの国との関係は過去の歴史を含め、さまざまな虚構と誤解が含まれています。富士の高嶺から、雲海の下、わが日本と周辺の国々を見渡せば、その来し方・行く末は一目瞭然。霊峰富士のごとく毅然、敢然、超然として立てば、視界も全開、隣国を含めて同時代の諸相に深く熱く切り込めるかもしれません。

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