中国とどう向き合うべきか②

2) 中国は何を狙っているのか?

・1989年の天安門事件とソ連・東欧共産圏の崩壊をきっかけに、頻りに「和平演変」論が取り沙汰されて以来、「中国の体制はすぐにも崩壊する」という「中国崩壊論」が叫ばれ、その種の主張を行う本が出版され続けてきた。それからすでに四半世紀が経過したが、しかし、中国はいっこうに崩壊する兆しを見せず、逆に経済の急速な拡大・発展を背景に、対外的にも軍事的にも覇権主義的な強大国への道をひた走っているように見える。中国は何を目指し、どこへ向かおうとしているのだろうか?

・中国は最近まで、自らを発展途上国の一員だと位置づけ、経済的な基盤も産業技術力も弱いので、先進国の支援が必要だという姿勢を見せてきた。一方、西側諸国は、中国が経済発展して豊かになれば、民主・自由、人権国家になるはずだと考えてきた。しかし、それは「幻想」だったことが分かる。日本や欧米諸国が、中国に投資して工場を作り、技術移転し、中国の発展を助けてきたが、実際に中国が経済的に豊かになり、GDPでは世界第2位の実力をつけたとたん、現実にはより強権的で、自由を束縛する社会になった。

・習近平体制になってそれまでとは明らかに変わったことがある。南シナ海での人工島の埋め立てや軍事基地化など力による現状変更をためらわず、経済力を背景に、外交・軍事で強硬な態度をとり、領土拡大への野心を隠さなくなったことだ。鄧小平の遺訓「韜光養晦」路線(才能や野心を隠して力を蓄え、敵を油断させて復讐を果たす)を完全にかなぐり捨てたことになる。しかし、経済に陰りが出てきているなかで、南シナ海の人工島維持などに膨大な軍事予算をいつまでかけ続けることができるのか?冷戦時代、米国との軍事費競争に負けた旧ソ連の二の舞になることはないのか、注目される。

・ところで、中国が目指している「ふたつの百年」という国家戦略がある。李克強首相も、全人代活動報告で「ふたつの百年に向かって奮闘しよう」と宣言している。「二つの百年」とは・・・

1)中国共産党創立100年の2021年までに、GDPを2010年の2倍にし、「少康社会」(ゆとりのある安定社会)を実現する。

2)新中国建国100年の2049年までに、富強・民主の社会主義現代国家の建設を達成する。の二つで、

・また習近平自身はたびたび「中国の夢」として、「中華民族の偉大な復興」を目標に掲げている。つまりアヘン戦争以来の「過去百年の屈辱の歴史に復讐して、世界の経済、軍事、政治のリーダーとしての地位を米国から奪取する」ことだといわれる。そのうち経済的には、経済覇権の確立をめざし、海と陸でのシルクロード経済圏構想(一帯一路)を推し進めている。またAIIB(アジアインフラ投資銀行)を作ってインフラ輸出を図り、それらの決済も人民元で直接できるように人民元の国際通貨化を目指し、今年中にはIMFのSDR構成通貨になることになっている。

富士の高嶺から見渡せば

大学で中国語を専攻して以来、半世紀にわたって中国・香港・台湾を見続け、朝鮮半島にも関心を持ち続けてきました。これらの国との関係は過去の歴史を含め、さまざまな虚構と誤解が含まれています。富士の高嶺から、雲海の下、わが日本と周辺の国々を見渡せば、その来し方・行く末は一目瞭然。霊峰富士のごとく毅然、敢然、超然として立てば、視界も全開、隣国を含めて同時代の諸相に深く熱く切り込めるかもしれません。

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