中国とどう向き合うべきか③

3) 中国にだまされ続けたアメリカ

米国防総省やCIAでアドバイザーを務めたマイケル・ピルズベリーという中国問題専門家が去年、「中国の100年マラソン」という本を書いた(邦訳は「チャイナ2049」日経BP社)。この本では、先述の「二つの百年」国家戦略について、中国では密かに「百年マラソン」と呼ばれていることが紹介されている。そしてピルズベリーは、アメリカの中国に対する見方について、次のように書いている。

• アメリカは、中国の発展を支援すれば、よりアメリカに協力的になるはずと信じた。

• アメリカは、中国の経済が発展すれば 中国は民主化に向かい始めるはずと信じた。

• 中国側は、「中国は問題だらけで、崩壊の危機に瀕している」とわざと自分を弱く見せ、アメリカの協力を引き出そうとした。

• 中国の指導者は、「兵は危道なり」という謀略・騙しあいをよしとする孫子兵法の信奉者たちだった。                    

• 孫子の兵法に則り、世界制覇という国家目標はその実現の直前までその意図を見せてはならないと内部では戒めていた。

・アメリカは1972年の米中国交回復後、ニクソン、カーター、レーガンの   歴代政権は、中国に対する大規模な科学技術援助、軍事援助を行い、アメリカの研究機関に大量の中国人留学生を受け入れた。たとえば核開発や宇宙開発に関する技術を供与し、ロシアとの国境地帯に米中共同の盗聴施設を作った。そうした技術供与、軍事協力は同盟国である日本にも知らされず、アメリカは当時、同盟国日本より中国を重視していたということになる。実は、そうした中国に対する軍事協力、技術支援を行うようにアメリカ政府に進言したのは、他ならぬピルズベリー本人だった。そうすることによって、中国はアメリカに協力すると信じ、民主化が進むと信じたからだったが、それはことごとく裏切られる結果となった。中国に裏切られたと分かったことが、この本を書くきっかけになったとピルズベリーは言う。

・そうしたアメリカの支援・協力で、中国は経済発展し、軍事力の近代化を達成したにもかかわらず、ここに至って中国は、南シナ海での人口島建設と軍事化を進めるなど、アメリカへの対抗心を露にしている。アメリカは「航行の自由」作戦で、南シナ海での中国の覇権主義的な行動を抑えようとしているが、   オバマ政権の対中国政策にも見直しが迫られ、ASEANを巻き込んで対中国包囲網を作るなど対ASEAN政策にも変更が求められている。

・またシルクロード経済圏(一帯一路)やAIIBなど、中国が経済覇権を追求していることについては、TPPという「中国包囲網」で対抗。オバマ大統領もTPPは、中国に世界経済のルールを作らせないための手段だと明言している。しかし、次の大統領候補として有力なクリントンもトランプもTPPには反対している。次期アメリカ大統領の中国政策には注目する必要がある。 

富士の高嶺から見渡せば

大学で中国語を専攻して以来、半世紀にわたって中国・香港・台湾を見続け、朝鮮半島にも関心を持ち続けてきました。これらの国との関係は過去の歴史を含め、さまざまな虚構と誤解が含まれています。富士の高嶺から、雲海の下、わが日本と周辺の国々を見渡せば、その来し方・行く末は一目瞭然。霊峰富士のごとく毅然、敢然、超然として立てば、視界も全開、隣国を含めて同時代の諸相に深く熱く切り込めるかもしれません。

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