この世の現実なのかと目を疑った。
ロンドンに拠点を置く人権団体コリア・フューチャー・イニシアティヴKorea Future Initiativeが、中国で性労働を強いられている北朝鮮女性や韓国に亡命した脱北女性らの証言を集めて、ことし5月、<Sex Slaves: The Prostitution, Cybersex & Forced Marriage of North Korean Women & Girls in China(性奴隷:中国における北朝鮮女性・少女の売春、サイバーセックス、強制結婚)>という調査報告書を発表した。
(写真はKorea Future Initiativeのウェブサイトより)
現在、その報告書の中身は団体のウェブサイトでは読めなくなっているが、発表当時、BBCやCNN、インディペンデント紙やニューヨークタイムスなどが一斉にその内容を伝えている。しかし、なぜか?韓国では大きな問題になっていないようだ。
例えばBBC NEWS(2019年5月20日)のタイトルは “North Korean women 'forced into sex slavery' in China – report”(「北朝鮮女性、中国で性奴隷を強いられる」) であり(因みに日本語版5月21日は「9歳少女まで……北朝鮮の女性数千人が中国で性奴隷に=英団体報告」)、INDEPENDENT紙(5月20日)では“Tens of thousands of North Korean women 'sold into China sex trade and systemically raped” (数万人の北朝鮮女性が中国性労働に売られ、全身的にレイプされている)である。
このタイトルは何を意味するのか? その衝撃の中身とは・・・・調査した女性たちの多くは12~29歳で北朝鮮を出てから1年以内に、何回かにわたって人身売買が繰り返され、数種類の性奴隷的な仕事に就かされたという。被害女性たちは最低30元(約480円)で売春させられ、1000元(約1万6000円)で妻として売られた。そして隠れ家に閉じ込められ、セックスカムあるいはサイバーセックス(インターネットによる性行為などのリアルタイム配信)を強制させられるのだという。女性たちは24時間、パソコンのウェブカメラで覗かれ、性行為をしたり、性暴力を受けたりする姿が、オンラインで世界中の観客の目にさらされる。セックスカムをさせられていた女性の中には9歳の少女もいたという。BBCは、「そうした動画を見ている人の多くは韓国人とみられる」と報じている。
中国・大連のホテルで韓国人客相手に売春をしていた北朝鮮女性は、「韓国企業は社員たちのために、北朝鮮人の売春婦を買いたいと思っている」と証言した。韓国人は企業ぐるみで北朝鮮女性の買春を認め、奨励しているということを意味する。
さらに、北朝鮮女性は中国で性奴隷の扱いを受けるだけでなく、安住の地としてやっとの思いで脱出した韓国でもまた屈辱的な扱いを受けている実態が明らかになった。BBC NEWS(12月6日「脱北女性、韓国当局者2人に「強姦された」 中絶強制の訴えも」)によると、
北朝鮮を脱出して韓国に渡った女性は、韓国国防部の情報当局者の監視のもとに置かれ、その担当の男2人から繰り返し、強姦、暴行を受け、中絶手術を2回も強制されたという。
BBCによると、韓国にいる脱北者約3万3000人のうち、女性は72%で、「多くの脱北者は韓国に来る前に、中国で性暴力を経験している」とし、「彼女たちはそれに耐え、韓国に着いたときには、自分はすでに汚されていると考える人もいる」という。そうした負い目と、生きるためには金(韓国からの支援金)が必要だという弱みにつけ込んだ卑劣な人権侵害というしかない。
当ブログではすでに3年前、<「慰安婦像」を子供にどう説明するのか④ 2017年1月>のなかで、国際的な脱北者支援組織Crossing Bordersを主宰するMike KIM氏の著書『Escaping North Korea (2008)』の内容を引用して、以下のように論じたことがある。
「北朝鮮から中国へ、脱出した人の総数は、2006年当時で30~40万人といわれる。その半数以上が女性だったとして、人身売買の結果として10万から20万規模で北朝鮮女性が中国国内に不当に拘束され、悲惨な運命を嘆きながら、ただひたすら救出を待っているということではないのか? (中略)中国も韓国も、70年も前の「慰安婦」と呼ばれた女性を取り上げて、日本の歴史認識をあれこれ云々することに熱心だが、もっと自分の足元をしっかりと見つめて欲しい。同じ中国人同胞や韓国人同胞が当事者として関わり、現実に「性奴隷」としか言えない境遇で苦しむ女性が、中国国内に数万から数10万人もいるという事実にどう向き合うのか。70年前の手の届かない彼方にある問題を追いかけるより、手を伸ばせばすぐそこにある現実を直視し、救いを待つ人々を実際にどう救い出すか、その方法を考える方が重要なのではないか」。
韓国政府や韓国世論が、北朝鮮女性の中国における「性奴隷」被害の実態について声を上げたという事実は、これまで寡聞にして聞いたことはない。
ところで李栄薫編著『反日種族主義 日韓危機の根源』(文藝春秋)は、慰安婦問題について「第3部 種族主義の牙城 慰安婦」として全5章を割いて縦横に論じている。
このなかで李栄薫元ソウル大学教授が強調しているのは、旧日本軍慰安婦制度は「近代日本で成立し、植民地朝鮮に移植された公娼制が、軍事的編成として使われたもので、女性たちが軍慰安所に募集された方式や経路も、女性たちが都市の遊郭に行ったそれと変わらず、就業、廃業、労働形態、報酬の面でもそれと同じだったということ。
その一方で、韓国における慰安婦制は1945年以後、都市の私娼、韓国軍特殊慰安部隊、米軍慰安婦の形へと、さらに繁盛しました。1950年代、60年代において、韓国政府によって慰安婦と規定され、性病検診の対象となった女性の数は、1930年代、40年代の娼妓と慰安婦に比べてなんと10倍以上でした。彼女たちの労働の強さ、所得水準、健康状態、業主との関係は、1930年代、40年代に比べてはるかに劣悪なものだった、という点だ。(日本記者クラブ11月21日での李栄薫氏の発言全文「韓国人の自己批判書だ」より)
以下は『反日種族主義』の中からの引用である。
(以下引用)「一九七〇年代まで慰安婦の実情をよく知る人たちが多数生きていたときには、慰安婦問題 は提起されませんでしたが、時が四〇年以上も過ぎ、もうそういう人たちがいなくなってその記憶が薄れて来るや、架空の新たな記憶が作られ、慰安婦問題が登場したのです。解放後の四五年は、韓国人の頭に慰安婦に関する新たな記憶が作られるのに必要な時間だったのです」(第21章解放後の四十余年間、慰安婦問題は存在しなかった 朱益鐘 位置No.3833)
「本当に元慰安婦たちが経験した苦痛と悲しみに共感し、彼女たちを慰めたいなら、日本を攻撃するより、まず一九九〇年までの我々の四五年間を、それ以降も含めた解放七十余年を反省すべきです。娘を売ったのも、貧しい家の女性を騙して慰安婦にしたのも、また、その女性たちが故国に帰って来れないようにしたのも、帰って来たとしても社会的賤視で息を殺して生きて行くしかないようにしたのも、我々韓国人ではありませんか? 五〇年間近く、あまりにも無関心だったのではないでしょうか?五〇年過ぎて新たな記憶を作り出し、日本を攻撃し続けて、結局韓日関係を破綻寸前にまで持って行ったこと、まさにこれが 一九九〇年以降の挺対協の慰安婦運動史でした。我々は、この慰安婦問題の展開の中に最も 極端な反日種族主義を見ます。」(第22章韓日関係が破綻するまで-挺対協の活動史 朱益鐘 位置No.4109) (引用終わり)
日本人にとって、慰安婦問題はこれですべて決着がついたのではないか?
あとは韓国人たちが、今の時点でも抱えている自分たちも関わっている「性奴隷問題」も含めて、どう反省しどう清算するかが残されているだけだ。
それに向けて、韓国人の非常に勇気ある動きもすでに始まっている。
中央日報12月5日(「水曜集会のそばで「少女像撤去」集会開いた反日種族主義の著者」)によれば、12月4日午後、ソウルの元日本大使館前で毎週水曜に開かれている慰安婦デモのすぐそばで、『反日種族主義』共同著者である落星台(ナクソンデ)経済研究所の李宇衍(イ・ウヨン)研究委員を中心にした「韓国近現代史研究会」などの団体が記者会見を行い、「少女像を撤去し水曜集会を中断せよ」と要求したという。
李宇衍氏はこれまでも度重なる脅迫を受け、命の危険に晒されているだけに、自分の敵対勢力の真ん前に出て、こうした主張を展開するというのは本当に勇気ある行動だが、これも真実を追究する研究者魂・学者の良心からの行動なのだろうと思う。
反文在寅集会の会場で売られる『反日種族主義』の本
0コメント