「日本」を消し去るための「東海」表記、最終戦へ

隣の国の行動形態は、もはや常軌を逸したとも言えるレベルで、信じがたいものがある。「日本」という国を目の敵にし、その存在を消し去ることができれば、どれほどいいか、そんな妄想に日夜、血道をあげている。彼らが莫大なコストとエネルギーをかけることで得られるものとは、いったい何なのだろうか?

「日本海」という呼称に、なぜか目くじらを立て、「東海(トンヘ)」という表記に変えろ、少なくと「日本海と東海を併記せよ」という無理筋の言いがかりを、ここ何十年も世界にばら撒き続けている。「日本海」「Sea of Japan」といった表記を使っている地図を見つけるごとに、世界中の地図や教科書の出版社、メディアやネットのサイト、あるいは航空会社や旅行社、ホテルなど、あらゆる対象にクレームをつけ、「東海」に変えるよう横やりを入れ、執拗な圧力をかけ続けている。その結果、「現在、全世界の紙地図では約40%程度が東海を併記している」と自慢するほどだ。凄まじい執念というべきか。

ハンギョレ新聞9/22「国際水路機関、「東海/日本海」の代わりに「固有識別番号」を導入か」>

日本海から遠く離れた南米やアフリカの国々にとって、自国の船や航空機が通過するはずのない極東の片隅の海域が「Sea of Japan(日本海)」と呼ばれようが、「トンヘ(東海)」と呼ばれようが、どっちでもいいことで、名称など、いかように変えようとも、まったく痛痒は感じない。ましてや「East Sea(東の海)」などという一般的名称はどこにでもあり、守るべき価値があるとも思えない。この名称のどこに、命を懸け、国運を傾けるほどのエネルギーを注ぐ価値があるのか、不思議に思うだけだ。

IHO=国際水路機関が発行する『海洋と海の境界』(Limits of the Oceans and Seas =S-23)は世界の海図作成の指針となるガイドブックだが、1929年の初版から1953年の第3版まで、日本海は「日本海(Sea of Japan)」と単独表記されてきた。韓国が、北朝鮮とともに国連に同時加盟したのは1991年9月だが、その翌年の8月、日本海単独表記を「東海併記」に変えさせるため、あらゆる国際会議の場を利用して訴えることを政府方針として決議し、まさに国際的な国民運動となった。そして、その主な舞台となったのが、IHO=国際水路機関だった。そして、S-23の改定第4版で「日本海単独表記」を「東海併記」に変更させることが目標となった。

そのIHO=国際水路機関の総会が11月16~18日モナコで開かれ、そこでS-23に代わる新しい海図の指標が決まった。GPS衛星測位システムの活用などデジタル時代を迎えて、海域を名称ではなく番号のみで表記し、位置情報だけでなくさまざまな航海情報も提供するS-130(『多角化された世界の海域の区分け』と名付けられたデジタルデータ集a digital dataset named “Polygonal demarcations of global sea areas”)という新しいガイドラインを開発するとした事務局長案で暫定合意した。

一方で、現行のS-23については、「『海洋と海の境界』のアナログ版からデジタル版供給への進化のプロセスを示すために、既存のIHO出版物の一部として引き続き公開し、利用できるものとするとされた。

(S-23 is kept publicly available as part of the existing IHO publications to demonstrate the evolutionary process from the analogue to the digital provision of limits of oceans and seas.)

IHO総会文書 REPORT ON THE INFORMAL CONSULTATION PROCESS FOR THE FUTURE OF S-23>

IHO総会は全会一致が原則だそうで、事務局長案はこのあと加盟国の間で回覧され、12月初めにも正式決定されるという。ところが、この暫定合意について、日本と韓国ではまったく異なる発表が行われ、それによって日韓が再び角を突き合わせることになった。

加藤官房長官は暫定合意では「国際的に確立された唯一の名称として日本海を使用しているガイドラインS-23をこれまで同様に公に利用可能と記載された」と明らかにし、茂木外相も事務局長案に『東海』という言葉が一つも入らなかったことは日本の訴えの成果だとし、「日本の主張が通った」と評価した。

これに対し韓国側は、外交部の副報道官が、海域をすべて数字で表記するデジタル版の海図が「新しい標準」となるため、「日本側が主張する『日本海』の表記はもはや標準ではない」と主張、その上で「デジタル時代への転換に合わせ、韓国が主張する『東海』の表記拡散の新たな枠組みができた」と語った。

数字ですべて表記されるとしたら日本海だけでなく「東海」という言葉も使えなくなるのではないか、と普通は考えるのだが、韓国はそうではない。むしろこれが「東海」表記を拡散する好機だと捉えているのである。

読売新聞11/17「『好機到来』と受け止める韓国…ロビー活動を活発化へ

実は彼らにとって、もともと海図などはどうでもよく、世界中で印刷されている紙の世界地図や地球儀、ネット上に出回っている地図表記で、「日本海」という表記が消えればそれで満足なのである。

ところで産経新聞によると、韓国外交部の報道官は「デジタル分野の先頭国として韓国が新標準の開発に積極的に加わり、『東海』の表記拡散の基盤を拡大していく。世界を対象に『東海』表記の拡散努力も官民合同で展開していく計画だ」とし、さらに「特に新型コロナウイルスの状況下で、デジタル外交が展開されている点に着目し、『東海』の表記拡散の努力をデジタル外交事業と積極的に連携していく」と訴えたという。

<産経新聞11/17「デジタル時代に合わせ『東海』の表記拡散を」 IHOの「日本海」表記めぐり韓国外務省>

彼らがいう「デジタル外交」とは何で、東海の表記とデジタル外交がどういう関係にあるのか?それはIHOのホームページを見れば分る。今回のIHO総会の関連文書のなかで、「IHOのe-ラーニング・センターを韓国に新設する」(Creation of a new IHO e-learning Centre in Korea)が議題の一つに掲げられているほか、IHOが進める海図のデジタル化のための「地理空間情報登録システム」(Geospatial Information Registry)の開発と導入に韓国が2013年以来、深く関わり、そのオペレーションと人材の育成にも韓国が直接支援していることが分る。「地理空間情報登録システム」に関連するIHOのサイトを覗くと、なんと韓国海洋水産部所属の国立海洋調査院KHOA(Korea Hydrographic and Oceanographic Agency)のホームページにリンクが張られている。国際機関のサイトが特定の国の政府機関の宣伝の場に使われているのだ。

そのKHOAのホームページで、KHOAをどう紹介しているかというと、なんと日本との過去の歴史や竹島問題が取り上げられている。以下に国立海洋調査院KHOAの事務局長の挨拶(Greeting)の原文と直訳を示すが、この文章はハングルのページにはなく英文のページにしか見られないので、完全に対外プロパガンダ用の文章である。

「水路学と海洋学は、わが国の歴史において重要な役割を演じた。その事例は、あまり有名ではないが、李舜臣提督による鳴梁海戦と日本が江華島で測量中だと言い訳した雲揚号事件だ。

KHOAは国の海洋主権を保護する業務を最前線で遂行するため、1949年韓国海軍水路部として設立された。KHOAは、1951年に初めて独島(竹島)付近の水路調査を行ったのに続いて初の海図の作成。1957年に国際水路機関に加盟し国際協力をリードした。」

Hydrography and Oceanography play a significant role in our national history. Although they might be unfamiliar, the examples are the Battle of Myeongnyang led by Admiral YI Sun Shin and the Unyo Incident whose excuse was to survey the Ganghwa Island by Japan.

Fulfilling its tasks at the forefront for protecting the national marine sovereignty, KHOA was initiated as the Hydrographic Division of the ROK Navy in 1949. Since then KHOA produced its first nautical chart in 1951, followed by first hydrographic survey near Dokdo Island and joined the International Hydrographic Organization in 1957, leading to international cooperation.

いきなり「鳴梁海戦」だとか「雲揚号事件」だとか言われても、外国人には何のことか誰も分らないだろう。「鳴梁(めいりょう・ミョンニャン)海戦」とは1597年の秀吉の朝鮮出兵(慶長の役)で、李舜臣率いる少数の朝鮮水軍が日本の水軍に勝利した海戦だと韓国では教えられているが、朝鮮水軍は海域の状況を巧みに利用することで神出鬼没の作戦を展開したが実際は逃げ回っていただけで、日本の水軍に損害はほとんどなかったとも言われる。「雲揚号事件」とは、1875年、水路測量中の日本の軍艦雲揚号が江華島付近に碇泊していたところ朝鮮側から砲撃を受けて交戦となった事件で、日本が朝鮮に開国を要求し日朝修好条約(江華条約)を結ばせる契機となったが、韓国では日本が朝鮮侵略を企図して起こした策動だとして教えられている。 

いずれにしても、韓国は用意周到な準備を練り上げて、世界中で印刷・作成される世界地図の中から「日本海」という表記を消しさるために、巧みにIHOという国際機関に取り入り、日本を貶め、日本に打ち克つために無理やり創作した独自の対日歴史観を、世界に宣伝流布するために国際組織を骨の髄まで利用し尽くそうとしているのだ。そのために費やしているコストやエネルギーは相当のものがあるはずだ。何度でも言うが、そうした涙ぐましい労力にふさわしい対価として韓国はいったい何を得たというのだろうか。冷静に、コストパフォーマンスを一度、検証してみたほうがいいと思うのだが。

ところで韓国は、「日本海」という名称が定着したのは20世紀前半の日本の帝国主義、植民地主義の結果だと主張し、ヨーロッパで発行された古地図を見ると18世紀末から19世紀末にかけては「日本海」をはじめ「東海」、「朝鮮海」など多様な名称が使われていたと主張する。IHOが1929年に最初に「海洋と海の境界」を策定するとき、韓国は植民地であったため声を上げられなかったというが、それでは19世紀後半から20世紀はじめにかけて、朝鮮国王であり大韓帝国皇帝であった高宗は、「東海」という呼称にこだわったという記録はあるのか。『反日種族主義』の著者たちが言うように、歴代朝鮮王朝は「独島」の存在さえ認識していなかったのに「東海」を意識していたはずはないと思うのだが。

ある意味、国の境界や地理的な名称は、人類総意の歴史の産物でもある。その時代、時代ごとに人類の共通認識があり、歴代受け継がれてきた共通知識があって定められたものでもある。韓国が主張する「東海」という呼称が、世界のなかで有意な地位を占めることができないのは、それなりの歴史的な背景があるとみるべきだろう。「日本海」の呼称は、江戸時代から日本でも西洋でも使われており、帝国主義とも植民地ともまったく関係はない。韓国の世界各国を巻き込んだ「東海」のごり押しは、そうした人類の総意や世界史的経緯を無視したエゴでしかなく、「日本海」から「日本」という影を消し去ることさえできればいい自己満足にしか過ぎない。こんなくだらない韓国に、世界は付き合っている必要はない。

富士の高嶺から見渡せば

大学で中国語を専攻して以来、半世紀にわたって中国・香港・台湾を見続け、朝鮮半島にも関心を持ち続けてきました。これらの国との関係は過去の歴史を含め、さまざまな虚構と誤解が含まれています。富士の高嶺から、雲海の下、わが日本と周辺の国々を見渡せば、その来し方・行く末は一目瞭然。霊峰富士のごとく毅然、敢然、超然として立てば、視界も全開、隣国を含めて同時代の諸相に深く熱く切り込めるかもしれません。

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