中国「一帯一路」と韓国製投開票システムの輸出の関係?
韓国大統領が内乱罪で逮捕・拘束され、憲法裁判所での弾劾訴追裁判が始まったなかで、韓国の選挙に不正があったか、なかったかという疑惑が中心議題になりつつある。しかもそれが、中国や中央アジアの国を巻き込んだ国際的な陰謀論に発展する可能性が浮上するなど、今後の展開には目が離せない状況が続いている。
1月17日の朝鮮日報日本語版の記事<尹大統領の弁護団「不正選挙の事実は中国と大きく関連」 憲法裁で2回目の弁論期日>によると、憲法裁の2回目の公判で、尹錫悦大統領側の弁護団は、不正選挙疑惑を明らかにするため非常戒厳宣布は不可避だったと主張し、特に、中国の選挙介入の可能性を強く提起したという。
朝鮮日報のこの記事のベースになった「TV朝鮮」のニュースを探ってみると、Youtube動画<TVCHOSUN LIVE 1月16日“ニュース9”重要ニュース>でその関連発言部分を確認できる。TV朝鮮が、憲法裁の2回目の法廷の様子と伝えた映像の中で、尹錫悦大統領側の裵真漢(ぺ・ジンハン)弁護士は、「私どもは、この不正選挙の事実は中国と大きく関連があると考えます。韓国電子投開票機を“輸入”した中国の陸海上の一帯一路の国々は、中国の助けを借りて“輸出”したものだ」(“ ”は筆者が付記、動画の27~8分の部分)と発言していた。この文章だけでは、誰が“輸入”し、“輸出”したのか主語がわかりにくいが、要するに中国の「一帯一路」プロジェクトの対象国は韓国製の電子投開票機を導入するにあたり、中国が購入したものを借用または購入するなど、中国の何らかの援助を受けて導入したということを言いたいようだ。実は、中国の「一帯一路」の対象国で、韓国製の電子投開票機を導入した国として、中央アジアのキルギスの名前が挙がっているが、それについては後述する。
韓国の選挙研修院でなぜか中国人が研修を受ける?
また別の朝鮮日報の記事<尹大統領側が「選挙研修院に滞在した中国籍の事務員名簿」の提出を選管に要請…憲法裁が事実照会を採択>によると、弁護団は不正選挙関与疑惑に関連して選挙研修院に中国人が滞在していたかどうかについて確認したいとして、中央選挙管理委員会への事実照会の申請を憲法裁判所に提出し、憲法裁はこの申請を受理し採択した。その事実照会として求めた資料の中には、2020年の総選挙と新型コロナウイルス感染症の期間に京畿道水原市の選挙研修院に滞在した中国籍の事務員の名簿が含まれているという。
「今回の非常戒厳令当時、戒厳軍が選管研修院で99人の中国人を逮捕し、日本の沖縄に護送したとする一部ユーチューバーの未確認情報にまで尹大統領側は言及した。しかし選管はこれを全面的に否定している」という情報が朝鮮日報社説にも取り上げられるほど、尹大統領支持派の間では、中国人がらみの選挙不正があったいう疑惑は既成事実化している。
<朝鮮日報社説1/18 逮捕当日に「不正選挙の証拠は多い」と衝撃的な発表、その後は何も語らない尹大統領>
キルギスでは韓国製システムで選挙不正が行われた?
韓国の選挙システムの不正と中国人の存在が、どういう関係にあるというのだろうか?その点と点をつなぎ、疑問を解消するかもしれない第三者として浮かび上がったのが、前述の中央アジアの国キルギスだった。
実は、戒厳令が発令された12月3日、その当日の午前、尹大統領は韓国を訪問したキルギス共和国のサディル・ジャパロフ大統領と会談したことが報道され、一部のメディアでは戒厳令との関係に関心が注がれた。しかし、その後の後追い情報がないため、どこのメディアもこれを深く追及することはなかった。
<朝鮮日報12/6 「3日午前に来韓して尹大統領と首脳会談、夜は戒厳令…キルギス大統領のスケジュールが話題に」>
そのキルギスでは2020年10月4日に総選挙が行われ、親大統領派の政党が議席の大部分を占める結果となり、不正投票を疑う声が高まった。市民デモは大規模な反政府運動に発展し、現職の大統領を辞任に追い込み、当時、収監中だった野党指導者のジャパロフ氏がデモ参加者によって解放され、翌年の選挙で正式に大統領に選出された。(この一連の経緯は「2020年キルギス反政府運動」と呼ばれ、Wikipediaに詳しい記述がある)。
実はこの2020年のキルギスの総選挙で使われた投開票システムの機械が韓国製だったと言われる。それが冒頭で紹介した憲法裁での尹大統領側の弁護士の発言、つまり「私どもは、この不正選挙の事実は中国と大きく関連があると考えます。韓国電子投開票機を“輸入”した中国の陸海上の一帯一路の国々は、中国の助けを借りて“輸出”したものだ」という主張につながり、2020年4月15日に行われた韓国総選挙の前後、選管の選挙研修院に滞在していた中国人たちの存在に注目が集まることに繫がっていく。
つまり、選挙研修院に滞在した中国人たちは、韓国の選挙の投開票に使われる電算システムの研修を受け、その運用を学ぶと同時に、そのシステムに外部から不正に侵入し、データを改ざんする方法を秘かに習得したのではないか、という疑惑が持たれているのだ。そして中国はその韓国製の投開票システムの設備を韓国から輸入し、それをさらに「一帯一路」プロジェクトの対象国になっているキルギスに“輸出”したのではないか、という主張が、憲法裁での弁護士発言ということになる。そして、それはこの韓国製システムを中国人が操作し、キルギスの選挙に不正に介入したのではないか、という疑問にも当然、帰結する。
韓国では不正選挙の指摘があっても選管が対応せず
韓国では前回2024年4月10日の総選挙に関しては、与党が善戦するとの事前の予測に反して野党が圧勝するなど、以前から不正を疑う声があり、とくに事前投票に於いて、投票数を調整するプログラムが仕組まれていたという告発もあったという。そのため監査院を通じて中央選挙管理委員会を監査しようとしたところ、選管側は政府から独立した機関であるため監査院の監査は受け入ないと拒否。その直後に野党勢力による監査院長に対する弾劾決議案が出されていた。そしてそんな折にキルギスの大統領から韓国製投開票システムの機械の不正を直接きいて、尹大統領が中央選管の強制調査のための戒厳令を決断したのではないか、と見られている。監査院長に対する弾劾決議は、戒厳令直後の12月5日、野党単独で可決し、監査院長は職務停止となった。こうした状況では、中央選管に対する疑惑を解消するため、選管内部を捜査しようとしても、調査する監査院自体が野党勢力の妨害で、手も足もでない状態になっていた。また「選挙管理委員長をはじめ選管には判事が多くいるため、家宅捜索令状の発付を簡単には受け付けてもらえず、不正選挙疑惑の捜査は難しかった』という事情もあったという。
<朝鮮日報1/18「選管には判事が多くて不正選挙疑惑の捜査は困難だった」>
国の政治の骨格を決める選挙を管理運営する主体が、まるで政府から独立し、一部勢力の利益のために働く独裁機関に成り下がっていた、ともいえないか。
尹大統領の国民に向けた談話「戒厳発令しか手段はなかった」
こうした状況のなかで、尹大統領が非常戒厳を発令した理由にも、改めて関心が注がれている。尹大統領は12月12日に発表した「国民向け談話」では次のように述べていた。
<私が非常戒厳という厳重な決断を下すまで、これまで直接明らかにできなかったさらに深刻なことがたくさんあります。昨年の下半期に選挙管理委員会をはじめとする憲法機関や政府機関に対して、北朝鮮によるハッキング攻撃がありました。国情院がこれを発見し、情報流出と電算システムの安全性を点検しようとしました。国情院の職員がハッカーとしてハッキングを試みると、いくらでもデータ操作が可能で、ファイアウオールも事実上ないも同然でした。パスワードも非常に単純で、「12345」といったやり方でした。民主主義の核心である選挙を管理する電算システムがこんなにでたらめなのに、どうして国民が選挙結果を信頼できますか?>
また1月15日、尹大統領は逮捕・拘束される直前に「国民の皆さまへ」と題した自筆の手紙3枚をフェースブックに投稿し、この中で選挙不正に関連して、以下のように述べている。
<韓国の選挙では不正選挙の証拠があまりに多く存在しています。そのようなことを可能にする選挙管理委員会の杜撰なシステムも明らかになりました。特定の個人を指摘して不正選挙を処罰する証拠が不足しているからといって、不正選挙を陰謀論として片付けることはできません。ナイフで刺され死亡した遺体が多数発見されても、殺人犯を特定できないからと言って、それを自然死として否定することができないのと同じです。
正常な法治国家であれば、捜査機関に積極的な捜査依頼を行い、全ての関係者が協力して犯人を見つけるべきです。選挙訴訟における投票箱の検票で、多数の偽の投票用紙が発見され、選挙管理委員会の電子システムがハッキングや改ざんに無防備であること、さらに通常の国家機関の電子システム基準に大きく満たないことが判明しました。それにもかかわらず、それを是正する努力が全くなく、発表された投票数と実際の投票者数の一致を検証し、確認することを拒否するならば、それは相対的な不正選挙システムが稼働していると言えるでしょう。
それは国民の主権を盗む行為であり、自由民主主義を崩壊させる行為です。自由民主主義と法治主義を指向する正常な国家であれば、選挙訴訟でそれを発見した裁判官や捜査官が捜査を依頼し、積極的に協力して、このような選挙不正が行われたかを徹底的に確認しなければなりません。それにもかわらず、それを隠蔽しました。殺人された遺体が多く発見されているのに、被害者の家族に、犯人を特定する資料を見つけ、告訴して処罰が確定するまでは、殺人事件だと騒がないでくださいと言うならば、それが国家と言えるでしょうか。
デジタルシステムや偽の投票用紙を投入することで行われる不正選挙のシステムは、1つの国の経験のない政治勢力が単独で独自に試みても推進できるものではありません。失敗して摘発されれば、その政治勢力が崩壊する可能性があります。単独では到底思いきって行えることではありません。せいぜい金品のばら撒きや利権取引、世論操作といったところでしょう。
しかし投票と開票の不正や世論調査の操作をつなぐ不正選挙のシステムは、それを試みて推進する政治勢力の国際的連携と協力が必要であることを示しています。投開票の不正選挙のシステムは特定の政治勢力が掌握した世論調査のシステムと選挙管理委員会による確認拒否及び隠蔽によって構成されています。殺人犯を特定できないからと言って、殺人事件を陰謀論と片付ける世論づくりも、また不正選挙システムの一環をなしています。
国民の皆様がご存知のように、もしこれが我々の現実であるならば、この状況は危機でしょうか?それとも正常でしょうか?この状況は戦時や非常事態に準じる国家緊急事態ではないでしょうか。戦時や非常事態は我々の国土上で発生する物理的な状況、すなわちハードウェアの危機の状況を指しますが、今の我々の現実は、我が国の運営システムとソフトウェアの危機的状況なのです。>
(この日本語訳はYoutube「まゆねぇチャンネル「韓国ユン大統領の手紙読んでみた【日本語翻訳】ノーカット」から字起こししたもので、翻訳はチャットGPTを使って行い、動画ではそのまま朗読されている)
尹大統領はこの手紙のなかで、中国を名指しはしていないものの、「投開票の不正や世論調査の操作などの不正選挙は、1つの国の政治勢力が単独で独自に試みるのは困難で、これらを試みる政治勢力の国際的連携と協力が必要だった」とし、外国勢力の関与を匂わせている。戒厳発令の裏にあった「選挙不正」解明という尹大統領の動機について、韓国と日本の主要メディアは、大統領が極左ユーチューバーの偏狭な「陰謀論」に引っかかった結果だという見方に偏っている。しかし、憲法と大統領を裁く最高司法機関である憲法裁判所で、中国による不正選挙関与説が公式に言及されたという重い事実は、けっして蔑ろにして済ますわけにはいかない。世論調査では野党勢力を上回る支持率を示す尹大統領支持者や与党支持者の声に応え、憲法裁判所をはじめとする韓国のすべての司法機関は、選挙不正の疑惑を根本から解明し、韓国民主主義の真価を問い直す、今がまさにその時だという姿勢を示すべきだ。
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