大統領弾劾裁判⑤ 左派イデオロギーに染まった韓国教育現場の腐臭

別世界を生きる左派系と保守系の新聞読者

朝日や東京新聞の購読者は産経や讀賣新聞を読むことはまずない。同様に韓国においても、ハンギョレ新聞を読む人は決して朝鮮日報など手に取ることはない。ことほど左様に、それぞれの新聞を読む人たちは、まったく別の世界に生きている。おそらくお互い考えていることも理解はできないはずだ。1987年民主化の翌年に創刊されたハンギョレ新聞は、文在寅など歴代左派政権を支持する左派系紙の代表格であり、1920年創刊で最古の歴史を誇る保守系紙・朝鮮日報とは対局の論調を張り、目の敵にしてきた。

前回のブログでお伝えした「李在明2審無罪判決」の報道を例に取れば、朝鮮日報は、「逆転無罪の結論ありきで李在明発言を細切れに解釈」し強引に無罪にしたと主張し、「そもそも選挙法の裁判は、法の通りであれば起訴から控訴審まで最長でも9カ月、270日以内に終えなければならないが、実際には909日もかかった。(李在明側が)訴訟記録受理通知書を受け取らない送達未受領、公判への不出廷、期日変更、違憲法律審判の申し立てなど「ありとあらゆる裁判遅延の手段を使ったから」だとし、「今後、選挙法裁判の引き延ばしに関する『教科書」になるかもしれないほどだ』と皮肉った。

朝鮮日報3月26日付社説「法律上は「270日以内」のはずが909日…共に民主・李在明代表の公選法違反事件裁判」>

一方のハンギョレ新聞は、3月27日付社説「韓国最大野党代表、選挙法違反裁判で無罪、『政治検察』の起訴が有罪だ」で、今回の無罪判決は「検察の政治報復行為が有罪判決を受けたも同然だ」「検察の無理な起訴に、『自動販売機』のように応えた一審とは異なり、極めて常識的な判決だ」「イ代表に対する検察の捜査と起訴は膨大な規模と執拗さだけでも、類例のない政略的捜査・起訴として記録されるだろう」と主張した。

誰が聴いても嘘と分かる「嘘」を、「嘘」とはいえないとした今回の無罪判決を、ハンギョレが「極めて常識的な判決」だと評価する裏には、最初から政治的意図を持って起訴した検察の不当な権力政治という前提があるからであり、このハンギョレ社説を信じる人も検察はそうした存在だと最初から決めつけている。つまり、正義の最後の砦であるべき検察の捜査を信用していないだけでなく、裁判所の判決にも信頼を寄せていない。被告である犯罪者はあれこれと言い訳を並べ裁判を延々と回避することさえできる。このような国にまっとうな司法制度が機能するはずがなく、司法への信頼がゼロの韓国には、三権分立も司法の独立も存在しない、いわば無法地帯も同然と言えなくはない。

弾劾裁判があぶり出した韓国の矛盾や恥部

こうした司法制度の欺瞞性を含めて、尹錫悦大統領による非常戒厳の宣布とその後の弾劾裁判は、韓国という国が抱える様々な矛盾や課題、この国の歪(いびつ)で遅れている部分や恥ずかしくて隠したい姿などを、改めて白日の下にさらす結果となった。

当ブログでは、これまで4回に渡って、分断国家・韓国にしかない特殊性として、北朝鮮の指令を受けてスパイ活動に従事する左派系労組「民主労総」の存在や、北朝鮮の金正恩独裁体制を賛美する従北左派の「大学生進歩連合」という学生組織の過激な活動の実態をお伝えしてきた。

今回は、同じような従北左派の組織として全国教師労働組合(全教組)についてお伝えしたい。「全教組」とは、「日教組」(日本教職員組合)と同じく、本来は教師の労働環境や権益の保護、また児童生徒により良い教育環境や教育手法を提供するために作られた組織だが、現実には教育の中立性を失い、特定の政治イデオロギーを学生に強要し、左派イデオロギーによる偏った教育を行っている組織でもある。

政治的中立を無視し大統領罷免を主張する全教組

全教組はこの3月、尹錫悦大統領の罷免を求める「教諭非常時局宣言」に名を連ねる教諭たちをインターネット上で募っていることが分かった。

             (全教組『非常時局宣言文』)

「憲法裁判所は内乱首謀者・尹錫悦を即刻罷免せよ」と題された全教組の時局宣言文には、「昨年12月14日、国会で弾劾訴追が可決されてから100日が経つが、未だに尹錫悦は罷免されていない。裁判から100日経ったが、私たち教師たちは新学期を前に『内乱一味が2回目の非常戒厳を宣布するのではないか』『また別の(ソウル)西部地裁暴力問題を起こすのではないか』と深刻な懸念や不安を抱え、眠れない日々を送っている」とし、「このまま罷免が遅れて4月まで混乱した状況が続くと、韓国社会と教育現場は激しい混乱に陥るしかない。国民を相手に『戒厳法で処断する』『従北左派勢力を剔抉せよ』という妄想に陥って、国を戦争の危機に追い込んだ尹錫悦政権こそ内乱勢力だ。私たち教師は必ず尹錫悦を退陣させ、彼が犯した罪を償わせる社会を作る。尹錫悦罷免は内乱収束と教育大改革のための始まりの大きな一歩となるだろう」とある。まるで政治革命宣言である。

12月3日の非常戒厳の宣布は、実際には国会と中央選管へ数百人の兵力が投入されただけで、宣布から4時間後には解除されたものだった。普通の人なら寝ている時間にすべてが終了した非常戒厳措置によって、教育現場に具体的にどんな混乱が発生したというのか?普段どおり教育活動を行うのに、いかなる障害が生じたというのか?教育現場に非常戒厳の影響などあろうはずがない。全教組の教師たちは、ただ非常戒厳と弾劾裁判という事態を利用し、政権批判を強め、倒閣運動をしたいだけなのは明らかだ。

全教組支部の一部は、学校現場の内部業務メールを通じてリンクを共有し、「非常時局宣言」への署名参加を勧めているという。全教組によるこうした時局宣言への参加督励に対して、国家公務員法上の政治的中立義務に違反する、という批判もある。昨年10月、韓国教育部(省に相当)は、市民社会団体が推進する「尹錫悦大統領退陣国民投票」の要請文をホームページに掲載した全教組委員長に対し、国家公務員法に違反した疑いがあるとして、警察に告発していた。それにもかかわらず、全教組による教育現場の私物化と政治的中立義務違反は当たり前になっている。

朝鮮日報3月29日「教諭に『尹錫悦即刻罷免』時局宣言への参加促す全教組、公務員の政治的中立義務巡り物議」

全教組による「洗脳・扇動」を告発する高校生たち

学校教育の現場で全教組の教員たちが実際にどんな教育をしているのか、教育の受け手である高校生らが教育現場の問題を告発するため、国会で記者会見を行った。

なぜなぜ韓国「10代学生たちも詐欺弾劾について知っていました」

高校生たちは、「全教組は韓国の歴史を歪め、自由民主主義の価値を損ない、学生を特定の政治勢力の道具として利用している。自分たちのイデオロギーに合わない歴史的事実は教えず、不都合な事実を隠している」として、次のような例を示す。

例えば全教組の教師たちは、韓国の建国と経済発展に貢献した李承晩と朴正熙大統領を「独裁者」としてのみ教え、二人の功績を矮小化し否定する教育を行っている。しかし実際は、李承晩大統領は共産主義の脅威の中で自由民主主義の韓国を建国し、朴正熙大統領は産業化を成し遂げ、今日享受している経済基盤を築いたという業績がある。

一方、北朝鮮についてはどう教えているだろうか。北朝鮮が引き起こした天安鑑爆破事件や延坪島砲撃事件など明白な敵対行為に対して、全教組の教師たちは沈黙している。むしろ北朝鮮は平和の相手として対話すべきだと擁護する態度を取っているという。高校生たちは「私たちは天安鑑で犠牲になった兵士や延坪島で命を落とした住民についてただしく学んだろうか?」と問いかけている。

さらに深刻な問題は教師たちが政治的中立性を損なっていることだ。教師は学生に正しい知識を伝える存在であり、特定の政治勢力の代理人ではない。しかし一部の全教組教師たちは、授業中に特定の政党や政治家を批判し、学生たちに特定の政治的立場を強制している。さらに尹大統領の弾劾を主張し、生徒たちに同調することを要求する教師もいる。

全教組のイデオロギー教育を一掃しないかぎりこの国の未来はない

高校生たちは訴える。「わたしたちの国の教育は中立性を失い、左派イデオロギーによる偏った教育が行われている。その中心には全国教師労働組合があります。私たちは未来を担う世代だ。自由民主主義は私たちが享受するすべての自由と権利の基盤であり、これを守ることは私たちの責任です。しかし、現在の教育は韓国の自由民主主義の価値を歪め、偏った視点を強制している。私たちは正しい歴史と真実を学ぶ権利がある。全教組の政治的扇動に流されずに、韓国の歴史と真実を客観的に見つめるべきだ、私たちが黙っているとこの間違った教育は続いてしまう。いまこそ声を上げる時だ。」

また、全羅道から来たという18歳の高校生は次のように訴えている。

「私たちは香港が共産化された2年前と似たような状況に置かれています。そしてこの共産化カルテルの中枢が、私が育った全羅道です。私たちの無関心と無視が韓国を衰退の道へと導いています。韓国は全羅道の影響によって急速に共産化が進んでいます。全羅道は1980年代までに成し遂げた発展から、ほとんどの地域で停滞しており、幼い頃から多くの『洗脳』を見聞きして育ってきました。全教組の左派に偏った教師たちは正当な裁判結果もないまま生徒たちを洗脳し扇動しています。生徒たちに一方的な扇動を行い、それに加わらなければ生活記録簿(内申書)にいわゆる“テロ”と書いたり、学校生活に支障を与える行為も厭わないのが実情です。」

なぜなぜ韓国「全羅道の18歳高校生,左派による洗脳の実態を暴露(全教組の洗脳教育に衝撃の告白)」

曇りのない目を持った高校生たちは、醜い大人たちの下心ある陰謀にとっくに気がついている。そして、国と未来を作る基本である教育の現場から、腐った根を抜かないかぎり、この国の再生はないことを警告しているのである。

富士の高嶺から見渡せば

大学で中国語を専攻して以来、半世紀にわたって中国・香港・台湾を見続け、朝鮮半島にも関心を持ち続けてきました。これらの国との関係は過去の歴史を含め、さまざまな虚構と誤解が含まれています。富士の高嶺から、雲海の下、わが日本と周辺の国々を見渡せば、その来し方・行く末は一目瞭然。霊峰富士のごとく毅然、敢然、超然として立てば、視界も全開、隣国を含めて同時代の諸相に深く熱く切り込めるかもしれません。

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