「超限戦」に立ち向かう①=中国人留学生急増という「静かなる侵略」

東大の留学生の6割は中国人

東京大学や東北大学など我が国の先端科学技術を担うトップ大学で、中国人留学生が留学生全体の6割を超え、年間290万円の公的経済支援を受ける博士課程後期在籍者のうち中国人が3割を占める実態が、参議院の外交防衛委員会での質疑を通じて明らかになった。つまり日本の国費を使って中国人留学生を援助し、それによって我が国の先端科学技術が中国にダダ漏れとなっている、という安全保障上の問題が浮かび上がっているのだ。

3月24日の参議院外交防衛委員会で、自民党の有村治子議員が指摘したのは、東京大学や京都大学、東北大学、それに東京科学大学に名称を変更した旧東京工業大学など、日本の最先端科学を扱うトップ大学で、ここ数年、中国人留学生が急増しているという実態だった。

有村治子参議院外交防衛委員会質疑3月24日「年290万円の院生支援、3割は中国人留学生」

写真の円グラフでも分かるとおり、2009年度以降のここ15年間の留学生数の推移を調べたところ、東京大学は2009年の時点で留学生の総数は2555人、うち中国人留学生は769人で30%だったが、2024年度には留学生全体が5104人、うち中国人が3396人で61%を占め、数では4.4倍、割合では2倍あまりに増えていた。同様に京都大学は、同じ期間に中国人留学生の数は571人から1674人に2.9倍に増え、中国人の割合は40%から57%に増えている。また東北大学も606人から1302人へ2.1倍に、割合も45%から61%に増え、旧東京工業大学は431人から1068人へ2.5倍、割合は38%から58%に増えている。

中国人に上限枠を設け、多様な国からの受け入れ必要

文科省は、こうした中国人留学生の急増について「中国で高等教育を受ける学生数や留学希望者は、他国とは桁が違い、世界各国への中国人留学生の数が大幅に増加していることが背景にある」と分析し、近年、日本への中国人留学生の割合は全体としては4割程度で横ばいの状況だと説明する。しかし、全国の大学の留学生全体に占める中国人の割合が4割で、東大や京大では中国人が6割を占めるということは、そもそも地方の国立大学などは留学生の数自体が少ないだろうから、それだけ中国人たちは東大など日本のトップ大学、有名大学を目指し、そこに集中する傾向にあるということでもある。

文科省は、「我が国の高等研究力の向上のためには、多様な国・地域からの留学生が学ぶ環境を整備し、教育研究力の高い大学を有する国・地域との交流を確保することが重要だ」という手前、中国人留学生の受け入れを制限するとは口が裂けても言えないのだろう。しかし、「多様な国・地域からの受け入れや交流が必要」というのなら、一定の国に偏らないように国別の受け入れ上限枠をもうけ、留学生の少ないインドや東南アジアなどに対しては、日本の大学や教育環境を紹介し、留学手続きのアドバイスを行う日本留学のためのPR拠点を現地にもうけるほか、各国にある日本広報文化センターの役割を積極的に活用して、周知PR活動を徹底すべきだ。

たとえば韓国では、韓国放送公社KBSが各国駐在の大使館や文化センターと共催して、韓国語のスピーチやK-POPの歌や踊りを競わせるコンテストを各国で実施し、優秀者を韓国旅行に招待して留学への呼び水とする事業を国家戦略として行っている。

自国学生に冷たい奨学金制度の内外格差

「国費外国人留学生」として各国駐在の日本大使館が募集・推薦し、受け入れ大学が募集・推薦して、優秀な学生を留学生として受け入れる制度がある。その場合、日本での滞在生活費として学部レベルで月額117,000円、修士課程で144,000円、博士課程で145,000円を支給している。また授業料と往復の旅費も国費で負担している。そうした国費外国人留学生の受給者数は2025年度の場合11,157人で、そのための概算要求額は185.3億となっている。

文科省事務局説明資料「国費外国人留学生制度の概要」

国費外国人留学生の数を国別で示すと、2023年の場合、トップ5はインドネシアが1093人、中国が676人、タイ631人、ベトナム588人、バングラデシュ437人だったが、2017年の場合、中国が1018人と最も多く、次いでインドネシア897人、タイ723人、ベトナム660人、韓国573人の順だった。つまり中国は毎年1位か2位を占めていることがわかる。

文部科学省2024年11月14日「国費外国人留学生制度」> 

日本学生支援機構の奨学金制度では、貧困家庭や多子世帯には給付型の返済不要の奨学金もあるが、そのほかは無利子で借りる第1種奨学金(国公私立、自宅・自宅外の別で月額2万~6万円から選択)と有利子で借りる第2種奨学金(月額2万~12万円、大学院の場合15万円まで1万円刻みで選択)があり、最大20年をかけて返済しなければならない。一方、外国人の場合、国費外国人留学生以外に、文科省の留学生受入れ促進プログラムによる学習奨励費(学部・大学院48000円、日本語教育機関月額30000円、原則1年)と、学校間の学生交流に関する協定に基づく海外留学支援制度(月額8万円)があるが、いずれも返済不要となっている。

今や日本より経済力があり豊かな中国や韓国、それに為替の変動によって円安の日本に来れば、はるかに有利に暮らせる外国人留学生には、返済不要な奨学金がある一方、学習意欲があっても経済的困難を抱える日本の学生は、奨学金を借りてもその後の返済に長く重い負担がのしかかる。外国人留学生の優遇を横目に、日本の学生にとっては、むしろ学習意欲が減退しそうな冷血な教育政策をこの国は実行しているのである。

有村氏によれば、OECD加盟国など先進国の多くは、自国の学生と他国からの留学生の間で大学授業料等に差をつけ、留学生の学費を自国の学生より高く設定している。例えば、カナダの国公立大学では自国の学生に比べ留学生からは5.5倍の学費、米国の国公立大学でも2.9倍の学費を請求しているのが現状だというが、日本の場合、日本人と留学生の授業料に差をつけていない。

有村氏は「国の発展、国力、若者の将来性や稼ぐ力に直結する自国の大学教育、しかもトップ大学において、これを支える自国民を優遇し、留学生に応分のコスト負担をお願いすることは何ら差別ではなく、他国では長期にわたる常識的な慣習となっている。日本の学生こそ我が国の宝。日本も自国の学生を重視し、留学生に応分の負担をしてもらう学費設定の再考を積極的に実施すべきだ。その収入を大学の安定的な運営に充て、優秀な教授陣の処遇改善につなげ、日本の大学の国際競争力の向上につなげていくことを早急に実施してほしい」と主張する。

富士の高嶺から見渡せば

大学で中国語を専攻して以来、半世紀にわたって中国・香港・台湾を見続け、朝鮮半島にも関心を持ち続けてきました。これらの国との関係は過去の歴史を含め、さまざまな虚構と誤解が含まれています。富士の高嶺から、雲海の下、わが日本と周辺の国々を見渡せば、その来し方・行く末は一目瞭然。霊峰富士のごとく毅然、敢然、超然として立てば、視界も全開、隣国を含めて同時代の諸相に深く熱く切り込めるかもしれません。

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