尹大統領に対する弾劾裁判で、弁護側は尹大統領が戒厳令を発動せざるを得ないまでに追い込まれた事情を説明するために、韓国が抱える「深い闇」ともいえる現実を裁判官と国民の前に次々と晒すことで、国民の覚醒を訴え、尹大統領への理解を求めた。
その深い闇とは、巨大野党「共に民主党」とそれをバックで支える「民主労総」という左派系労組が、北朝鮮の指令を受けて動く反国家団体であり、韓国の自由民主主義体制を突き崩す役割を負わされ、それを確実に実行してきた過去があるという現実だ。
(尹大統領弁護団 キム・ケリ弁護士(左の女性))
尹政権発足直後から弾劾・退陣に追い込む活動を開始
尹大統領弁護団のキム・ケリ弁護士は「民主労総スパイ事件に関する判決文には、ここ数年間、わが社会における対立がすべてスパイによる指令によって動かされていたことが記されていることが確認された」と述べ、証拠として以下のような事例を上げた。
▼尹大統領への攻撃に焦点を当て、「国民の力」の勢力を窮地に追い込めという指令もあった。尹錫悦氏の当選を受けて、「親米事大主義的で反民衆的、反統一的な保守政権が誕生した」とし、「政権初期から尹大統領一派に対する闘争を組織的に展開せよ、尹大統領と側近の政治スキャンダルや不正腐敗行為を執拗に追及し、法的処罰を求める圧力攻勢を継続的に強化し、弾劾の火種を作り、第2の「ろうそく革命」のような大衆的な抗議の機運を醸成せよ」という指令も下された。
これについて尹大統領は弾劾裁判の最終意見陳述で以下のように述べている。(当ブログ参照)
「北朝鮮をはじめとする外部の主権侵害勢力と韓国社会内部の反国家勢力は(略)先の大統領選挙の直後には“大統領弾劾の火種を燃やせ“と言いながら、具体的な行動指令まで出してきました。実際に、2022年3月26日、「尹錫悦先制弾劾集会」が開かれ、2024年12月初めまでに、なんと178回もの大統領の退陣を求める弾劾集会が開かれました。この集会には民主労総傘下の建設労組、言論労組などが参加し、巨大野党議員も演壇に上がりました。北朝鮮の指令どおりになったのではないですか?」
▼梨泰院(イテウォン)惨事の犠牲者を追悼する市民キャンドル集会を開催し、「朴槿恵の弾劾を導いた2014年のセウォル号事件真相究明闘争のような情勢を作り出すことを中心に据え、ろうそくデモと積極的に結びつき、退陣を要求する抗議闘争を展開せよ」という指令が下され、その通りに実行された。
▼国安法撤廃を要求する署名運動が10万人を達成したが、この賛同者の規模はスパイ指令の成果だと称誉された。▼マスコミを中心に民主メディア民間連合などのメディア市民団体と連携し、朝鮮日報廃刊運動本部の活動を進めるようにという指令も出された。
文在寅や李在明自身がスパイ罪や利敵行為で告訴されている
以下は、北朝鮮関連のハイブリッド戦に関する証拠として、弁護団側が法廷で提示した報道資料、報告書、判決文などの内容である。
▼京畿道知事時代の李在明が関わった対北送金事件の裁判で2024年12月19日付の判決文および報道資料によると、反国家団体である北朝鮮に対し、800万ドル規模の巨額資金が流れ、朝鮮労働党に支払われたという趣旨の証拠が示されている。
▼2018年4月27日に行われた南北首脳会談で、文在寅前大統領が「新経済構想」を収めたUSBを金正恩に渡し、その資料の中に発電所に関する内容が含まれていたという趣旨の報道があった。このUSBに関連して、産業通商資源部の公務員らが、月城(ウォルソン)原発1号機の監査直前に、「北朝鮮原発支援を示唆するファイル」を削除する事件が発生し、議論を呼んだ。さらに2022年になってこのUSBが統一部によって作成されたものであることが明らかになった。北朝鮮に渡ったこのUSBにどのような情報が含まれていたのかを確認するために情報公開請求を行ったが、最高裁は請求を認めなかった。これだけを見ても、USBに含まれていた情報が国家機密の中でも最上級の機密に該当することが確認された。この事件に関して、文在寅をスパイ罪などで告訴したが棄却された。その理由は、すでにUSBが北朝鮮の金正恩に渡されており、現時点でその内容を確認する方法がないからというものだった。この決定が出たのは2024年9月30日、わずか5ヶ月前の出来事だ。
左派司法カルテルがスパイ組織の隠蔽に加担
▼国家情報院、外交部、FBIなどと連携し、韓米政府共同で発表したセキュリティ報告書によると北朝鮮のハッキング組織キムスキー (Kimsuky)が現在まで10年間、サイバー攻撃を行ってきた。キムスキーは朝鮮人民軍偵察総局(RGB)の傘下にあるハッカー集団の一つといわれ、主として韓国に対するハッキングを目的に、韓国統一部など政府機関、シンクタンク、産業、原子力事業者などを標的としたスパイ活動やサイバー攻撃を行ってきた。
尹大統領弁護団は、今回の弾劾裁判で、キムスキーと関連したハイブリッド戦で、どのように我が国の安全保障が脅かされているかを明らかにするため、警察庁国家捜査本部安全捜査局と外交部に対して資料文書提出命令の申請を行ったが、これらはいずれも憲法裁判所によって棄却された。
これらのことから分かることは、憲法裁判所や最高裁など韓国司法の最後の砦が、スパイの実態を公にしようという試みを妨害し、スパイ組織の隠蔽に加担し、結果的にスパイ活動を支えているという、まさに「左派司法カルテル」といってもいい、韓国の深い暗闇が見えるのである。
▼中国人留学生3人が2年間に渡って、ドローンカメラなどを使って軍事施設を上空から撮影していたというニュースがあった。しかし、現行のスパイ法では処罰できるのは「敵国」のためのスパイ行為だけで、最高裁判所の判例上、敵国は北朝鮮のみであるため、北朝鮮以外の国のためのスパイ行為は処罰できない。「外国およびこれに準ずる団体」のための行為もスパイ罪で処罰できるスパイ法改正案が審議されているが、野党の反対にあっていまだに成立していない。 (続く)
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